第15話 噂
「ふむ……0だな」
何が0なのかだって?
クラスメートがだよ。
バハムト令嬢と面会して三日。
翌日から女生徒が減って来たなと思っていたら、今日は何と0だった。
お蔭で講師と俺とで、だだっ広い教室でマンツーマン状態である。
気まずいったらありゃしない。
「俺、何かしたっけな?」
俺と同じクラスに来る女子は、勇者のハーレムに入る気のない勉強を頑張る様な不真面目な生徒ばかりである。
何せ、俺のクラスはスカスカだから好きな席に就けるし、人数が少ないから講師に対する質問だってしやすい。
なので勉強するにはまさに打ってつけの環境となっていた。
そんな俺のクラスに通う、不真面目なガリ勉気質の女生徒が急にハーレム活動――略してハレ活に勤しみだすとは考えづらい。
さりとて、接触すらしていない俺が何かしたって事もないだろう。
謎だ。
ま、別にいっか。
教師と二人っきりで気まずい以外、特に弊害は無いしな。
ボッチ上等!
「墓地君。君に関する悪い噂が流れているよ」
授業が終わると、別に呼んでもいないのにビートがやって来た。
しかも悪い噂どうこうとか、お前はギャルゲーのお助け友人キャラか何かか?
「どういう噂だ?」
「君が直ぐに暴力を振るう、凶暴な奴って噂だよ」
カイーナをハーレム共の見ている前でぶっ飛ばしてるし、噂が立ったのはそのせいだろうな、きっと。
しかし……これでクラスから女子が消えた謎が全て解けたな。
道理で人っ子一人いなくなる訳だ。
ま、だが――
「ふむ……別に間違ってないから問題ないな」
俺は器が大きいので、そういう事はまったく気にしないぜ。
面と向かって何か言ってきたら問答無用でぶっ飛ばすけど。
「只の噂だけなら、君が気にしてないんならそれでいいんだろうけど……」
「まだなんかあんのか?」
「どうも、一部の女子達が署名を集めて学園側に嘆願するって話になってるみたいだ。粗暴な人間は勇者として相応しくないから、追い出すなり拘束するなりしてくれと」
「ふーん」
以前、女子達の苦情で理事長が俺を罰しようとした事がある。
その時はただのでっち上げだった訳だが……
こういうのを嘘から出た誠って言うのだろうか?
いや違うか。
「墓地君!フーンで済む話じゃないよ!下手をすれば、君はこの学園から追い出される事になるんだよ?」
「それなら心配ないぞ」
ビートの心配はただの杞憂でしかない。
何故なら、この学園のトップである理事長はとっくの昔に俺に平伏しているからだ。
あの爺が命を捨ててまで俺に一矢報いる気概があるなら、話は変わって来るが……
まあないだろうな。
そんな気概のある奴が、でっち上げで人の事を終身刑にしようとするとは思えんし。
「君は……全く、どこからその自信が出て来るのか」
「お前が心配性なだけだろ。女子達の署名云々は、完全に無駄になる。グーパン1発かけても良いぞ?乗るか?」
「僕は賭けなんてしないよ」
詰まらん奴だ。
せっかく勝ち確定の勝負だというのに、一発殴り損ねた。
残念。
「それより墓地君。今からでもバハムトさんの話を飲んだ方が良いと、僕は思う。スザーク家の庇護を受けられれば、周囲も迂闊に君に手出しできなくなるはずだ」
「また勧誘かよ」
「今の君の良くない状況を鑑みての事だ。悪意がある訳じゃないよ」
ビートがさりげなく、俺との間合いを離す。
その事でこの前殴ったから警戒してるのだろう。
「だから問題ないっつってるだろ。しつこいと嫌われるぞ?」
主に俺に。
そしてその結果飛んで来るのは拳骨だ。
「はぁ……分かったよ。だけどこれだけは覚えておいてくれ。僕は君の味方だ。だから困った事があれば、遠慮なく僕に相談して欲しい」
「へいへい」
何度も殴られて、髪まで剃り上げられているというのに。
どこまでも底抜けなお人好しである。
しかし署名か……
態々俺に攻撃を仕掛けてますって証拠を自分達で進んで残すとか、間抜けな奴らだな。
「話がそれだけなら、俺はもう行くぜ。用事もあるしな」
俺はそう言い残し、教室を後にする。
向かう先は勿論理事長室だ。
署名を書いた奴らを集める様、言っとかないとな。
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