第14話 同じ
スカーレットの案内で、俺達は中庭の庭園へと連れて来られた。
ベヒモスの時といい、この世界の貴族は庭園で接客するのがマナーなのだろうか?
「お連れしました」
スカーレットが再びおっぱいアピールのお辞儀をする。
貧乳相手にやったら嫌味になりそうなポーズではあるが、幸いバハムトは巨乳なので問題ない。
「貴方が勇者墓地ね。ようこそ、私がスザーク家のバハムトよ」
勝気さを思わせる顔立ちの、燃える様な緋色の髪を持つ少女がティーカップ片手に不敵に笑う。
彼女は真っ赤なドレスを身に纏っており、その胸元はスカーレットに負けないだけのボリュームを有していた。
正に双璧!
いや、壁じゃなくて山だが。
ま、そんな事はどうでもいい。
バハムトの容姿で最も目を引くのは、実はその豊満な胸ではなく、緋色の髪だった。
緋色というより、髪その物がまるで本当に燃えているかの様に強く輝いている。
「ふふ、私の髪が気になるみたいね」
「ああ。発光塗料なんか塗ってると、そのうち禿げるぞ?ビートみたいに」
チラリとビートの方を見る。
「僕の髪の毛は君が毟ったんじゃないか。それと、バハムトさんの髪は染料や魔法で染めている訳じゃないよ」
「そうなのか?」
「この髪は――」
バハムトが気取った様子で片手で髪をかき上げる。
すると髪から零れたかの様に、緋色の光の粒子が宙に舞う。
こいつの髪どうなってんだ?
「バハムト家の直系だけが持つ、炎の紋章よ」
「ふーん」
炎の紋章ってなんだよ。
全く説明になってないぞ。
と思いつつも、詳しく聞いたからなんだって話なので軽く流しておく。
別にこいつと楽しく談笑する気もないし。
「それで?何で俺をここに呼んだんだ?」
ビートは会わせたいとか言ってたけど、俺の素行を考えたら良い所のお嬢さんに進んで会わせようとするとは考え辛い。
バハムト側から要請したと考えるのが妥当だ。
「スザーク家――つまり私が、貴方の為に骨を折ったという話はもうビートから聞いているかしら?」
「ああ聞いてるぜ。それがどうかしたのか?」
今の俺の能力を考えれば、ゲンブー家が何をしてこようと全く問題なかった。
喧嘩を売って来るなら、正面から叩き潰すだけの事。
そのため、スザーク家の横やりに対しては特に感謝の念は持っていない。
それでも純粋な善意からなら多少は評価しなくもないが……
まあそんな訳ないよな。
一々俺を呼び出してるぐらいだし、何らかの意図はある筈だ。
「別に今回の事に関して、貴方に貸しを作ったとは考えていないわ。他でもないビートに頼まれてやった事ですもの」
そう言いながら、バハムトがビートの方を見る。
ビートの方は苦笑いだ。
怪しいな。
やっぱハーレム要員なんじゃねぇか?
「そりゃ良かった。俺も全く感謝してないから、恩着せがましい事言ってきたらどうしようかと思ってたぜ」
小腹が空いてる時に近所のおばちゃんに飴玉貰ったら、お返しにフルコースを要求された。
言ってみればそんな気分だ。
「貴方の為にやった事ではないとはいえ、感謝ぐらいしてくれても罰は当たらないと思うんだけど?」
感謝、イコール借りだと思うんだが?
結局貸しにしたいんじゃねーか。
厚かましい奴である。
「自分でどうにでもなる些事だ。手間が減った程度で、感謝する程じゃねーよ」
「自分でどうにでもなる……ね」
バハムトが意味深に言葉を溜める。
「覚醒して万能感に浸るのは分かるわ」
「覚醒?」
「ええ。覚醒したんでしょ?でなければ、E級の貴方がビートを倒すなんてありえないもの」
どうやらバハムトは、俺が覚醒したと勘違いしている様だ。
まあだが、状況から考えてそう考えるのも仕方ない事か。
神様から貰った力はこの世界のマジックアイテムじゃ、鑑定できない訳だからな。
「でも、世の中には上には上がいる物よ。例えばSランクの勇者とか。そして4大家には、それぞれお抱えのSランク勇者がいるわ。もちろんSランクだけではなく、AやBランクの勇者達もね」
勇者は20年に1度召喚される。
呼び出された奴らの余命が20年未満でもない限り、前の代の勇者達も当然この世界に残っている事になる。
そもそも呼び出されるのが結婚適齢期だと考えると、この世界に来てから20年で死ぬ確率の方がずっと低い。
そう考えると、先代所か、2代ないし3代前の勇者も健在と考える方が自然だろう。
そして4大家はそういう奴らを抱え込んでいる、と。
まあだからなんだって話ではあるが。
Aランクで2,000万程と考えると、Sランクでも1億はいかないレベルだろう。
仮にそいつらが大軍で押し寄せてきても、10億ある俺の敵ではないとハッキリ断言できる。
「あっそ、関係ないな」
「強気ねぇ。弱気な勇者よりはマシだとは思うけど、過信や傲慢は自分の首を絞める事になるわよ?」
「何が言いたいんだ?回りくどいのは良いから、用件があるならさっさと言え」
回りくどいので、さっさと用件を話せと求める。
どうせ俺に得る物なんてないんだし、遠回しの話に付き合うのは時間をどぶに捨てる様な物でしかない。
「せっかちね……まあいいわ。勇者墓地。貴方、スザーク家に仕えなさい。そうすれば――」
「断る!」
会話終了!
何となく途中から気づいていたが、クッソつまんねぇ事で人の事呼び出しやがって。
「ベヒモス嬢は、今は大人しくしているわ。でもスザーク家の庇護が無いと分かれば、いずれ貴方への報復を企てる筈よ。確実に。そうなればどうしようもなくなるわ。それでもいいのかしら?」
「問題ねぇっつってんだろーが。難聴かよ。それ以外に用がないなら、俺はもう帰るぞ……って、その前にやっとく事があるな」
一旦は背を向けた俺だが、振り返りざまにビートの腹に拳を叩き込んだ。
「なんで……」
ビートが腹を押さえ、片膝を付く。
その顔は、何故殴られたのか分からないと言った感じだ。
「結局勧誘じゃねーか!」
宗教ではなかったが、同じ様なもんだ。
言葉遊びじゃねーんだから、勧誘自体アウトに決まってるだろうに。
こいつはアホか。
「じゃあな」
そう言い残し、俺はさっさとスザーク家の宮殿を後にした。
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