第13話 隠しルート
スザーク家の学園寮も、ゲンブー家と遜色ないレベルの宮殿の様な建物となっていた。
形も酷似しているので、恐らく学園に建てるにあたって何らかの基準があったのだろうと思われる。
――まあ色は全然違うが。
「すっげー色してるな」
ゲンブー家は白と緑の大人しい感じだったのに対し、スザーク家の宮殿は赤が基調なためか無駄にド派手だ。
「赤はスザーク家のシンボルカラーらしいからね」
「ふーん」
いくらシンボルカラーでも、建物を真っ赤にする奴の気がしれん。
きっと派手好きな一族なのだろう。
「ようこそいらっしゃいました。勇者ビート様。勇者墓地様」
宮殿の門まで行くと、メイドさんとスーツを着た巨乳の女性が俺達を出迎えてくれる。
どうやらビートが事前に連絡していた様だ。
ビートの奴、俺に断られるとは考えなかったのだろうか?
今この場で「俺に会いたければ自分から来い!」と吐き捨てて帰ったら。
そんな楽し気な誘惑に駆られそうになるが、ぐっと堪えた。
俺もビートの面目を態と潰す程、意地悪な性格はしていないからな。
ここは我慢だ。
「わたくしめは、バハムトお嬢様に仕えるスカーレットと申します。お二人をご案内する様、お嬢様より仰せつかっております」
巨乳のスカーレットが、胸下に手をやって頭を下げる。
どう考えてもアピールしているよな?
これは尋ねないと、逆に失礼にあたるという物。
「サイズいくつ?」
「は?」
俺の言葉に、まるで意味が理解できないと言わんばかりの反応がスカーレットから返って来た。
寧ろ意味が分からないのは此方の方である。
「ぼ、墓地君!?女性に対して失礼じゃないか!」
ビートもビートで、何故か責める様に俺を咎めて来る。
折角面子を潰すのは止めてやったと言うのに、恩を仇で返された気分だ。
「胸を持ち上げる様なポーズで前かがみ。あれだけあからさまにアピールしてるんだぞ?サイズを聞かない方が失礼だろうが」
「あれはそういう挨拶であって、胸を強調しているわけじゃない。まったく、君って奴は……」
むう、どうやら性的アピールではなかった様だ。
こういう場合は素直に――
「なんだと!紛らわしい行動すんな!」
相手に責任を押し付けるに限る。
俺は怒った風に、指先をスカーレットにつき付けた。
責任転嫁は酷くないかって?
誤解を生む様な紛らわしい行動する奴が悪い。
いや、そもそもそれ以前に本当に誤解か?
スカーレットは自身の持ち味を知った上で、わざとやっているのではないか?
そう考えた方が絶対自然だ。
「失礼いたしました。次からは気を付けますので」
スカーレットは、興味なさげに淡々といった感じで謝罪して来た。
物事に動じない胆力の強い女である。
まあ何にせよ、これで一件落着だ。
「しょうがない。今回だけは見逃してやるよ」
「君、本当に凄い性格をしてるね。バハムトさんに会わせるのが不安になって来たよ」
「お前には二つの選択肢がある」
俺はビートに向かって、人差し指と中指を立てる。
所謂、ピースサインだ。
「俺に無駄足を踏ませた罰でぶん殴られるか。諦めて案内するかだ」
ここまで連れてきておいて、やっぱ会わせないとか時間の無駄にも程がある。
無駄足を踏ませてくれた代償は当然支払ってもらう。
「殴られた方がマシに思えて仕方がない2択だね。けどまあ、流石に恩人に土を被せる様な真似はしないと信じるよ。バハムトさんにも、連れて行くと言ってしまってるしね」
ビートは大きな思い違いをしている様だ。
ゲンブー家の事については、面倒事を減らしてくれた程度にしか俺は考えていない。
そのため、バハムトの事など恩人とは全く思っていなかった。
更に付け加えるなら、俺は相手が仮に恩人だったとしても、ふざけた真似されたら土をかける所か血の雨を躊躇なく降らすタイプだ。
ビートの見通しの甘さに、俺は苦笑いする。
「では、ご案内いたします」
スカーレットさんに案内され、俺達は宮殿内にいる彼女の主の元へと向かう。
ああ、因みに。
バハムトがムカつく奴だったら、ビートごと纏めてぶっ飛ばす追加ルートもあるのだが……
それは言わぬが花って奴だろう。
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