塔、出現!
「安いよー! これ、今日取れたばかりの肉だ! さあ買った買った!」
「こっちの肉も安いし上手い!」
日中の街中は熱気に包まれ人がひっきりなしに通り賑やかな様相だ。
そこには間違いなくエネルギーがあった。
一つ街の外へと踏み出すと、そこは植物すら存在しない砂と岩と強風吹き荒れる死の大地が広がるばかりだが、ここには生きるための活力が存在した。
街の中には少ないが植物もある。それは塔で見つかった種を植えた物だ。
人間以外の動物もいる。これも塔から連れ出した動物だった。
塔からは不思議と自分からは何も出さないが、人間と一緒になら出てこれるような作りになっていた。
いつもと変わらない日常。いつもと変わらない平穏。いつもと変わらない熱気にいつもと変わらない風景。
突然、轟音が響く。
耳を破壊するほどの音の後、揺らぐ世界。地面が物理的に揺れているのだ。
揺れの中、塔は自身をゆらゆら揺らすこともなくその巨体をしっかりと地面に立たせている。
収まる揺れ。建物がいくつか崩れて風よけで建てた塀は一部が崩れてしまっていた。
「あ!! ああああ!! あ、あれ!!」
高い塀。その向こうの景色は塀の外に出なければわからない。
しかし、男は塀の上を指差して出せうる限りの大声で叫んだ。
「塔だ!!」
塔。
そこには紛れもなく塔が建っていた。
今の一瞬でそこに現れたのだ。
先程の揺れの事など忘れたようにその塔を見上げていた。