この世界は……
鍛冶屋の煙突から黒い煙が上がり、荷馬車の走る通りには肉を焼いた屋台が立ち並ぶ。
雲を突き抜けそびえ立つ塔の周りに街ができたここはユートラシア王国の首都、ベリンゼン。
そびえ立つ塔はいつの頃からあり、誰が建てたのかも定かではなく、そこに存在していた。
雲を突き抜ける塔の中は時空の歪みが発生していて、どこに出現するのかはわからない。
しかし、金銀財宝、武器や防具、貴重な食糧。
この街の全てはこの塔から恵まれた物だった。
――――――――
――――――
――――
世界は荒れ果て、緑は無くなり、動物は少数を残し絶滅した。
星の栄養が……星が生きるためのエネルギーが枯渇したのだ。
残された食い物を奪い、争う人間たち。
大きくなりすぎた人間は、その数を減らしていく。
争いが終息を始め、生き物の数が無くなると同時にそれは現れた。
塔だ。
薄黄色の石肌をした塔が一つ、そこに出現する。
中には食糧があった。水も、生き物もいた。
ただ、中の生き物は凶暴で入るものを拒むように襲いかかってくる。
それは、ひどく強い生き物から、攻撃力をもたない妙な生き物、人間と変わらない生き物まで多種多様に存在していた。
今まで地平で争ってきた人間たちにはそれら凶暴な生物は食糧にしか見えない。
戦いだ。力と力がぶつかり合い、勝ったものが食う。それだけの戦いだ。
不思議な事で、塔の中には二人で入っても一人になる。
これは、入口で何かしらの魔法による空間と時空が歪み、違う時間、違う場所へと飛ばされているからだろう。
いつしか人は争わなくなった。
ここには食糧も水もある。
そして家ができる。人が増え、道ができて、塀ができた。
ここに、ユートラシア王国は誕生した。
――――
世界には三つの塔が現れた。
最初に出現した塔、ユートラシアの塔。
次に出現したメグリの塔。
最後にグワードの塔。
互いの塔は場所が離れており、それぞれ時間とともに国として機能を始めるのだった。