〖~Encounters~〗
これが初作品となりますが、日常と非日常の世界観を表現しつつ人間臭さや素直な感情を表現出来たらなと思います。自分だったらとか、そこはこうだろとか、いろいろ自分に置き換えて感情を楽しんでもらえたら嬉しいです。
【胎動】
何気無い日常・・・そう、なんの変哲もないありふれたモノクロの日常が、小さな友との出会いから鮮やかな色味を帯びた日常に変わったんだ!!
僕は成神 奏(ナルカミ カナデ)24歳独身の彼女も居ない普通のサラリーマン。って自分でそういうとなんだか虚しい(泣)。
会社では上司のパワハラに耐え、先輩からのイジメにも耐えながら、かなり病んでるが心を無にして働いてる社畜だ。
仕事を押し付けられ日々残業。そんな僕でも楽しみはあるんだ。憧れの一つ上の先輩の七海 晴(ナナミ ハル)さんがよく差し入れを持ってきてくれるんだ。
「お疲れ様。いつも頑張ってるね。けど無理しちゃダメだよ。」優しく微笑みながら心配そうに語りかけてくれる。
「あ、ありがとうございます。仕事が多くて(笑)。七海先輩もこんな時間まで仕事だったんですか?」
僕は少し緊張しながら話を途切れさせないよう尋ねた。
「今日は打ち合わせが長引いちゃってね。新卒や中途採用の新人さんが入社してくるから対応に忙しくて。あ、これ飲んであと少し頑張れ!!」カコッと金色に輝くいつもの微糖のコーヒーを置いた。
「いいんですか?ありがとうございます。頑張ります!!そっか~、もうそんな時期なんですね。僕にも後輩ができるんだな。」
すごく優しくて気遣いも周りへの配慮も仕事も完璧ですごくいい香りがしてて(笑)
社内でも人気の七海先輩。俺も憧れ、というより好きなんだろうな。近くにいるだけでこの重低音、バクバクって聞こえるんじゃないかと心配だ。
「ふふふっそうだね(笑)負けるな、成神くん。じゃあね。」
手を振りながら優しく微笑んで帰ろうとする先輩に改めてお礼を言おうと立ち上がった時、急に視界が遠くなって世界がグルグルと回り出した。
『あれ?なんだこれ・・・うっ』〝ドサッ〟身体がいうことを聞かず、そのまま床に倒れてしまった。
「えっ、成神くん!!しっかりして成神くん!!」
『あ〜先輩近っ。って僕どうしたんだろう・・・』
意識も朦朧としてきてあっという間に真っ暗になった。先輩の悲痛な叫び声と微かな残り香だけが漂っていた。
『あぁ~真っ暗だな。何も聞こえないし何も感じない。僕、死んじゃったのかな?なんか呆気なかったな・・・。七海先輩に心配かけて最後は迷惑までかけちゃってほんと自分が情けない。先輩に謝りたい。もう一度会いたい。こんな自分が嫌いだ!!自分を変えたい。クソーーーーッ!!』
自責の念に駆られ自分を責めていた。どうしようもなく自分が許せなくて、もう会えないかもという寂しさから後悔の波が押し寄せていた。
今自分はどういう状況なのかもわからず、ただ言えることは意識はハッキリしているのかいろいろ考えることは出来る。体というか肉体の感覚がないので精神だけがそこに存在するって言った方がいいのかな?そうこういろいろ考えていると、遠くの方なのか近くなのか距離感すら分からない暗闇の中にポツンと微かだが光があることに気がついた。
自分がそれに向かって進んでいるのかすらも分からない感覚の中何故か無我夢中でその光を掴もうとして足掻いていた。ただただ必死に ・・・
気がつくと目が覚めていた。疲れや寝不足とかで倒れちゃったんだろうけど、大事に至らなくて良かったと、内心ホッとした。
『早く先輩に謝らないと。心配かけちゃっただろうな~。』
とか考えつつ周りを見渡した。周りを見渡したがその光景に頭が真っ白になりポカーンと座っていた。
情報処理能力が追いつかない。俗にいうキャパオーバーというやつだ。決して泰然自若という状態ではなく混乱を極めて動けないでいただけなのだった。
『ちょっと待って!!どういうこと?気を失ったんじゃなく死んじゃったの?いやいや感覚もあるし生きてるよな?ここどこ~~~~~!!』
混乱しても無理はないと思う。だって草原というか原っぱというか、だだっ広い所にポツンと一人座っていたのだから。周りに何もなく地平線の広がる草原に。
「僕、会社にいたよね?仕事してて先輩と話して気を失って・・・。どういうこと?はっ!!落ち着こう、一旦落ち着こう。ふぅ~。よし!!って落ち着くかー!!まずは情報を整理しよう・・・って言ったものの今の情報が少なすぎだな(汗)情報収集しないと。」
って不安な自分の心を鼓舞するように独り言を言っていた。
まずは立ち上がって自分に怪我などがないか確認してみたが大丈夫みたいだ。いや大丈夫ではなかった。
確かに怪我などはない。けど立って視線を身体から地面に、地面から地平線に、地平線から地面、いや足元にやった時に違和感を感じた。やけに地面が近いのだ。周りに比べるような対象物がないのでわかりにくいのだが、明らかに地面が近く視線がいつもより低いのだ。
自分は身長175cmはあるのでそれなりには高い視線だとは思う。それなのに低く感じ、身長がグンって伸びた中学3年の時より前の感覚なんだ。
そして身体を確認した時に理解できず困惑してスルーしていたが、着ていたはずのスーツじゃなくて汚い布切れというか服なのかすらも分からない物を羽織っていた。
それに手も成人男性の手とは違った小さな少年の手だった。
「えっ、子供?身体が子供みたいに小さくなってる?あっ!!自分の声も幼くて別人!!待って、縮んだんじゃなくて子供になった?」
困惑して手で身体をまさぐって確認してみたがやっぱり子供だ。
「これって最近漫画とかで人気の転生とかいうやつなんじゃ?あああああぁぁぁわかんない!!とりあえずここに居てもダメだな。暗くなったら身動き取れなくてやばい。人を探して情報を得て何とかしないと。」
意を決して周りに注意を払いながら探索を開始した。けど正直にいうと怖いという感情より、不安はあるけれど興奮している自分がいた。超人気のRPGゲームが発売され並んで買って今まさに電源をカチッと入れた時のような高揚感と同じ感じだった。
現状の再確認をしておこう。装備は着ている布切れ。手には何もなく周りにも持ち物のような物は落ちてはなく、いきなりサバイバルを強いられることは確定した。
食料も何もなく水もないし周りに飲水となるような水源も見当たらない。
『う〜ん困ったなぁ。とりあえず水と食料を確保して人を探さないと本当に死んでしまう。』
・・・・・・どれくらい歩いたのだろう。
歩きながら太陽の動きを見ていたので方角はだいたいわかった。今進んでる方向は南に進んでいる。太陽が左にあったのが今は左斜め上といったところ。ということはだいたい2時間ほど歩いたという感じだろう。体力にはそこそこ自信があるので大丈夫。
小・中・高と野球をしていて今も休日の日曜日には草野球をしているのでそれなりにはある方だと思う。ただ少し不安なことがあった。現在裸足なので、この先靴を何とかしないと厳しくなってくる。
テクテクテクテク・・・足元と周りに注意しながら進んでいると遠くで動いている何かが居たのが見えた。
『動物かな?人ではないな、あの大きさからすると。慎重に進んで気付かれないように観察しないと。』
だだっ広い草原、見渡しがいい代わりに遮蔽物が何もないため隠れることもできず危険な状態なのだ。不用意に近付きすぎると何かあった時に逃げるのも難しくなるし戦闘でも起きた場合、盾になるものがないのでかなり危険度が増す。
草はあるのでとりあえずそれを束にして両手に持って体勢を低くして心許ないカモフラージュで近づいて行った。
何とか目視できる距離まで近づけたので確認してみたが、なんとそこに居たのは水の球・・・が転がっていた。数は3つ。それらをじーっと観察してみた。
最初は全く動いてるようには見えずに本当に水の球、朝露とかそういった類なのかと思ったが、水の球の一つがポヨーンっと跳ねたのだった。そしてその瞬間僕の心も踊り跳ねたのだった。
『スライムだ!!』
ゲームとかで最初に出会って戦闘になるパターンのやつだ。だが自分のネガティブな所が邪魔をしてすぐに行動に移さなかった。強かったらどうしようとか、他になにか居たらどうしようとか頭を過ぎったのだ。なので気づかれてもない事だしまだもう少し観察をすることにした。
観察していると動いていないのではなくてジワジワ進んではいたのだ。進んだ後には草などがなくなっていたので、多分捕食しているんだろう。さっき跳ねたのもすぐに理解出来た。スライムの体表に草が触れビックリして跳ねたみたいだ。お互いに意思疎通している様には見えないが、3つもそこに一緒に居てるのだから何かしらの意思疎通方法があるのかもしれない。じーっと見ているとなんだか可愛らしく思えてきた(笑)
動きも遅いし危険性も少ない感じがしたので、音を出してみて気付くのかどうか少し距離をとってガサガサしてみた。が、気付いたのか反応しているのか表情がないし動きも遅いのでわかり難いのだが跳ねなかったのでビックリはしていないのだろう。
次は接触、コンタクトを取ってみよう。
急に襲われたりしないか?とか強かったらどうしようとかすごく過ぎってくけど、いっちゃえwwwと好奇心が勝ってしまった。
ゆっくり近づいて目と鼻の先にまで来た。そして声を掛けてみた。
「えーっとスライム?だよね。合ってるかな?って言葉わかるはずないか(笑)。敵意はないので大丈夫だよ。少し触ってもいいかな?」と、スライムに話しかけている自分が恥ずかしい(笑)。
するとスライムの体表面が波打ち、反応したのだ。僕もビクッっと震えてしまった。
スライムに驚かされるなんて情けない、けどビビってちゃダメだなって思い今も波打ってるスライムに触れてみた。
すると!!
『コンニチハ。ヒトノコ。』
「うわぁー!!喋った!!ん?喋ってないけど何か聞こえた。」
触れた瞬間に聞こえたりというより伝わってきたといった方がいいだろう。骨伝導というのか、波打つ振動で直接脳に伝わった感じがわかりやすいかな?突然過ぎてビックリしてしまい、それにスライムを驚かせてしまったのか3匹とも跳ねていた。
「ごめんなさい!!話せるとは思ってなかったので驚いてしまって、スライムさんたちも驚かせてしまって。僕は奏っていいます。」慌てて謝罪し名乗って敵意がないことをしっかり伝えたらまたスライムが波打ち出したので触れてみた。
『カナデ。リカイシタ。ワタシモハナセテオドロイタ。オドロカセテスマナイ。ホカノニンゲン、コトバワカラナイ。ツタワラナイ。カナデフシギ。トクベツ。』片言というのか拙い言語で伝わってくるがスライムも驚いたらしい。
「えっ他の人間が話す言葉はわからないの?僕だけ?それに他の人間もこの近くに居てるの?」スライムからすごい情報を得た。僕だけが会話出来ること、人間の存在があったこと、これだけでも大きく1歩前進したと思える内容だ。安心と驚きと入り交じった複雑な心境だけどね(笑)。
『カナデダケ。ホカノニンゲンコトバワカラナイ、ワレラコロス。ホカノニンゲンチカクニイルガチカクニイカナイ。』
「そうなんだ。僕は君達を襲ったり殺したりしない。襲われたら守るために戦うけどこうやって話して意思疎通できるならなにもしない。逆にいえば助けて欲しいんだ。自分が何者でどこから来たのかもわからないんだ。気が付いたら草原にいて。何もないし行くあてもないし困ってるんだ。いろいろ教えてくれないかな?」素直に全てを話した。信用を得るためにはちゃんとこっちから信用してることを示さないと心を許してくれないので現状の自分の弱みまで話した。
『ニンゲンノコトヨクワカラナイ。ケドシッテルコトオシエル。タスケル。ナニガシリタイ?』
敵意など感じられずすごく受け入れてくれてる感じがする。多分興味と好奇心があるんだろう。僕と同じだな(笑)。
「まず知りたいのは、そうだなぁ~食糧と水が必要なんだけどなにかないかな?水は川とかあれば助かるし川があれば魚も居てるので食料も確保しやすいし。毒のない木の実や果実やキノコ、山菜などがあると嬉しいな。あと岩や石、木などがある所も知っておきたい。」ってめちゃくちゃお願いしすぎたかな?って不安に思いながらチラッとスライムたちを見た。そしてまた波打ち出して、
『オオイナ・・・』あ、やっぱり(苦笑)
「そこは必要最低限知っておかないと生きていけないから!!わがまま言ってごめんなさい。でもお願いします、教えてください!!」僕は切羽詰まった感じでスライムたちにお願いしていた。自分が思っているより不安だったのだなって改めて感じた。
『ワカッタ。バショオシエル。ワレラカカエロ、アンナイスル。』なぜか、抱っこして行くことになったが他の2匹はなぜか楽しそうに感じた。
3匹を抱えた時、『フフフ』『オオオォォォ』って2匹の声も伝わってきた。そして言われるがままに進み森が見えてきた。森を進んでるとやはり草原と違って足の裏に痛みが出てくる。石や木の根や枯れ木の破片などを踏むので仕方がないけど、何とかしないと。
進んでいるとサーーーって音が聞こえてきた。川がある。川に着いたらまずは周囲を確認し、少し拓けた場所を見つけ高台もあったのでそこを拠点として行動することにした。時折3匹のスライムが波打っていたが言葉はなく感情的になったんだろう。嬉しそうなのが伝わってきた。
拠点といっても僕は土地勘もなく森などに入ると方向などもわからなくなってしまいやすいので、徐々に活動範囲を広げる感じで木に目印などをつけてマーキングして行くことにした。けどそれは必要なかった。3匹のうち少しピンクというか薄い桜色掛かった綺麗なスライムが全てを覚えているのだ。マッピングしてるので一緒にいればこの拠点に迷うことなく帰って来れる。絶対に迷子になることはなく、迷子のお知らせをされることはないのだ(笑)。
3匹ともそれぞれいろいろな能力があるらしくて、僕の想像してる感覚とは違っていた。スライムという枠の中で個があってそれぞれに違った性格や性質、能力があるみたいだ。人間も全く同じってわけではないのと一緒で個人差があったり性格もいろいろなのでそういった感覚なのだろう。ゲームでは〇〇スライムが現れたといっても能力などもその種類の枠内で同じだったりするがそういう概念がないのでこのスライムは雑魚だって思っていると痛い目に合う可能性も出てくる。これはすごく重要なことで知らなければ僕は間違いなく死んでいただろう。そしてスライムが言うには稀にイレギュラーなのが生まれたりするらしいので、見た目での判断はやはりやめた方がいい。これはかなりシビアな問題だ。相手の力量が分からないのは常に未知の敵と戦う事になり死というプレッシャーを背負って精神的にすり減っていくことになる。かなり憂鬱になったが改めて聞くと事にした。
桜色のスライムは記憶力や知識が豊富で見聞きしたことは全て覚えているのだ。性格的には恥ずかしがり屋で僕もまだ話したことはない。
そしていつも話しているスライムは透き通っていて透明感がハンパないクリアなボディーのスライムで、聡明で勇気があり3匹のリーダー的な立ち位置の頼り甲斐のあるスライムだ。能力はまだ詳しくは知らないけどね。
最後の1匹は、少し銀色っぽい透明なスライムで、よく見るとラメというかキラキラしていて小さい子なら間違いなく「綺麗~。」って言って持って帰っちゃうだろう(笑)。
いつもチョロチョロしていて、しばしば離れていって怒られてるっぽいんだよね。末っ子感が拭えない(笑)。
という感じで個性的で楽しい3匹なのです(笑)。
まだまだ分からないことが多いんだけど、そのうちわかるといいなって思いつつ、ふと気になったことがあった。名前だ。〇〇色のスライムって言ってると不便すぎるし、失礼な気がする(苦笑)。
「ねぇねぇ、そういえば気になったんだけど、名前ってなんていうの?聞いてなかったよね。」そういうと、スライムは不思議そうな感じで答えた。
『ナマエハナイ。ジブンハジブン、ホカハホカ。タダソレダケ。』僕はビックリして聞き返した。
「ないの!?じゃあ3匹ともなんて呼び合ってるの?」
『ナァトカ、ネェトカ、オイトカ。』
あ〜ね(笑)。そうなるよね(笑)。だけどしばらくいろいろ教えてもらったりすると思うと名前がないのは不便だし、僕がなんか差別してるような感じで嫌だ。人間でいうと人種差別、最近ではBLM運動(Black Lives Matter)というのがあったりしたが肌の色や人種で差別するようなことはしたくない。例えスライムであっても種類や色ではなく名前で呼んで付き合っていきたいって思う。
「なんか色とか種類で呼ぶってのも僕は嫌だし、対等じゃないと思う。それになにかと不便だし。う~ん・・・じゃあさぁ、僕が名前付けるってのはダメかな?あ、やっぱり嫌だよね。」ビックリしたのか、嫌だったのか、3匹とも波打ってる。そして3匹ともグイグイ寄ってきた。
『イイノカ?』すごく戸惑ってるようにも見える。
「いいよ、君たちが嫌じゃないならね。だって呼びにくいし、これから先いろいろお世話になるかと思うと名前があった方が良くない?お互い打ち解けやすいでしょ。」って微笑みながらスライム達を見たらなんだか嬉しそうだった。
『ソウカ、デハオネガイシヨウ。アリガトウ、カナデ。』
少しその言い方に違和感を覚えたが、気にせず名前をつけることにした。あ、やっぱりやめとこうかと一瞬思ったがもう引き返せない空気が漂ってたので言わずに考え始めた。ネームセンスがないってのをすっかり忘れていたのだ(笑)。
桜色の可愛いスライムはサクラ、ほんとネームセンスなくてごめんなさい(泣)。
銀色のヤンチャなスライムはメタルボディーっぽいのでそのままメタル。メタとか呼んでそうだけど(笑)。
唯一色味のないスライムは、正直迷った。他の2匹は見た目から名付けたけど特徴がないんだもん(泣)。聡明な所とか頼り甲斐のあるとことか僕よりあって僕にないものを持ってる。僕とは相対的な存在。この世界で初めて出会って初めて会話したスライム。決めた!!
「君は僕の名をあげる。僕の名は僕の世界では奏ってこう書いてカナデと読むけど、違った読み方もあるんだ。ソウって読むんだ。君は聡明なスライムで聡明のソウと奏のソウを掛けて君はソウだ。喜んでくれるといいな。」
3匹ともプルプル震えているが表情とか全く分からないので喜んでいるのかどうなのか全くわからず、この時間がすごく不安で仕方ない(笑)。すると・・・
『わかった。有難く頂くとしよう。以後よろしく。』
『ありがとうございます、奏様。』
『やった~ぁ!!ありがとな、カナデ。』
ソウとサクラとメタの順にお礼を述べたが、いやいや待て待て!!
「え〜っ!?3匹とも会話が流暢になってない?どういうこと?メタとサクラは初めて会話したけど・・・なんで~?」
急にカタコトで聴き取り難かった会話が流暢になってるし、メタとサクラもしっかり話すし、驚くでしょ普通(笑)。
『それは名付けによって奏と繋がったからです。名付けは本来主従関係結ぶ行為で打ち負かした者と合意の上で行うのです。打ち負かし体力の減った相手と結ぶならまだしも、体力のある我らと結ぶとなると命の危険もあり、ましてや我ら3匹同時ともなると・・・』と言い出したソウの会話を遮って僕は驚いた。
「いや!!それ先に言ってよ~(泣)。」ほんとそれな(泣)。
『す、すまない(汗)。名付けられる前は話すのにもかなり力を使う故に言葉足らずで申し訳ない。』ソウもかなり動揺しているしその点は簡単に考えていた自分にも非があるのでこっちこそごめんと言っておこう。
「奏様、それよりもお身体はご無事ですか?何も起きてはいませんか?」と気配りのできるスライムのサクラが気遣ってくれた。
「そう言われれば少しさっきより身体がダルい。歩き疲れたのかなと思ったけどこれかな?確かに急にズーンと疲れがやってきたような。」そこまで心配するようなことじゃないのかなってぐらいの疲労感があったがここは体力バカのおかげだなってことにしておこう(笑)。
『そうかもしれませんね。この辺りは強い魔物とかも居ないので少し休んではいかがですか?メタルに警戒させておきますので。我とサクラは木の実や果実を取ってきますので。』
「じゃあ、お言葉に甘えて少し休むよ。」
ソウの言葉に緊張の糸が切れたのか安心したのか、名付けの疲労とともに急激に睡魔が襲ってきた。抗うことのできない睡魔で深い眠りについた・・・。
困惑する主人公と不思議な出会いを描いてみました。心の中の心境や思わず口にしてしまった言葉や人間味を出した感じになりました。展開的には今後いろいろ目まぐるしく変わっていきますがワクワクするような内容や、わかる~って思うようなことを表現していきますのでそういったとこも楽しんで頂けたらなって思います。今後ともよろしくお願いします。