表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

第1話


「緊張してるのかい?」


そう言って話しかけてきたのは、青い鎧に身を包んだ騎士だった。


「え、ええ・・・はい・・・」


僕はしどろもどろになりながら答えた。

初対面の人と話すのは苦手だ。


青髪の騎士が続けて口を開こうとすると、

後ろから別の声がかかった。


「そんなのに話しかけるの、止めておきなさい」


声の主は白い鎧を纏った、美しい女騎士だった。


「え、あの・・・その・・・」


僕が何も言えないでいると、

彼女は苛立たしそうに舌打ちをした。


「・・・ラタン・アーガイル。私はあんたなんか、絶対に認めないわ」


彼女はそういって僕を睨みつけると、

扉から外に出て行った。


彼女の言葉に僕はがっくりと肩を落とす。


「気にするなよ、それよりお互い頑張ろうな」


そう言って青い鎧の騎士は僕の肩を叩く。

なんていい人なのだろう。

きっとこの人は皆に愛される星のもとに生まれてきたのだろう。

僕とはえらい違いだ。

女神様はいつだって不公平だ。


僕がそんな事を思っていると、

係員が僕たちを呼びに来る。


部屋の中にいた、他の参加者たちも腰をあげ、

部屋の外に出ていく。

僕もそのあとに続いた。


暗い通路を歩きながら考える。


一体、どうしてこんなことになってしまったんだろう。


周りにいるのは歴戦の戦士や、

魔道の深淵を目指す大魔導士、

栄光の道を歩む、選ばれた人間ばかりだ。


対して僕は、

落ちこぼれで、

意気地なしで、

いいところなんて何にもない、

ダメ人間だ。


完全な場違い。

誰かが言った言葉を思い出す。


うるさいな。

分かってる、

そんなの僕が一番わかってるんだよ。


僕は、

もう何度目かになる深いため息を吐いた。


また胃が痛くなってきた。

さっき胃薬を飲んだばかりなのに。

くそ。



だがもう後戻りは出来ない。


僕はムカムカする胃をさすりながら、

長い長い通路を歩き続けた。




やがて通路の先、

外の光が見えた。


周囲を歩く騎士や魔導士たちに緊張が走る。



通路の出口をくぐると、

暗い通路との明度の違いに、

思わず目を開けていられなくなる。


「う・・・」


思わず目を閉じる、僕。


だが次の瞬間、

地鳴りのような轟音が僕たちを包んだ。


それは大歓声だった。

僕たちがたどり着いた先は、

この国が誇る大闘技場(コロシアム)


円形の会場を包むように、

客席が配置されている。

見渡す限りの観客。


そしてその誰もがでこちらを見て、

喉が裂けんばかりに歓声を上げていた。


その熱狂に、

僕は思わず息を飲んだ。

なんだここ、僕が来ていいところじゃないだろ。



「ご来場の、そして魔導映写機(ラクリマ)により繋がるすべての皆様!お待たせいたしました!」


僕の後悔を上書きするように、

場内にアナウンスが響く。


「ただいまより、世黄金龍王杯を開催いたしますッ!」


そのアナウンスに、

場内の歓声が今までで最も大きくなる。

地面が轟くように揺れ、僕は耳鳴りで眩暈がした。


『黄金龍王杯』


それはこの世界では知らぬもののいない、

最大のイベント。


女神に選ばれし十人の戦士たちが、

知恵と、勇気と、その研鑽を披露する場所。


そして僕はその会場に、

十一人目の参加者として立っていた。



「・・・ああ、どうしてこんなことに・・・」


僕は呟き、深いため息を吐く。

大歓声の中、事の発端である一か月前のことを思い出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ