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夕顔を呑み込む  作者: パイナップルマン
2/5

そよ風の吹くある日 


2


生温い夜風が私の体を包み込み溶けていく


家に帰りいつものように夕飯を食べ風呂に入った。

今日あったことをなんとなく思い出しながら…自室に入り床に寝そべっりいつものようにスマホに手をかけたがそんな気分になれずみなの手は宙を掴んだ。

連絡ツールのアプリにメッセージがたくさん来ているのを知りながら返信をする気にはなれなかった。


みなは目を閉じた。


午後の授業が始まる少し前にクラスメイトの絵梨華が嬉しそうに歩み寄ってきた。

絵梨華はとても目立ちたがりな生徒であり、先生に好かれるために尽力尽くすような生徒だ。

スポーツが得意で陸上部に所属している部長もこなしながらクラスの委員長もしている。

そしてどこからそんな情報を知り得てきたのかわからない噂を誇張するのが好きな女だ。

正直なところ私は絵梨華が嫌いだ。

そんな絵梨華が私に近づいてきた。

左の頬の口角をあげ嬉しい感情を隠しきれないようだ

「ねぇ?みなちゃんって美術部だよね?でも賞獲ったのって友達の花梨でしょ?大丈夫かなって?私心配してたの。」

小さな目を細めながら心底心配しているような表情で私を覗き込んでいたが私にはこの女の言いたいことや考えてることが手にとるようにわかる。

「あぁあの賞ね花梨ずっと頑張ってきたから…それに私美術部もうやめてるよ。」


絵梨華の小さな目が驚きで少し大きくなった。

違う言葉が出てくることを期待していたのだろう。


「え?みなちゃん美術部やめてたの?なんで?」

私がやめた理由を聞きたくてうずうずしているのがわかる。

私は表情を一切変えずに一言

「右手が思うように動かないから」

絵梨華はまったく意味がわからないという顔でポカンとしている。

「怪我したから」と適当な嘘をついた。

本当は怪我などしてないし美術部も辞めていない。

賞も最初から応募もしていない。

そもそも私は絵が描けなくなってしまった。

あの日からずっと描けないんだ。



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