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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者だけど旅立つ前に戦争が終わっちゃったのでできることやります

作者: 瀬口恭介

勇者「なあ魔王」


魔王「ねえ、なんでいるの? 魔界と人間界は互いに侵略しないという条件で戦争が終結したんだけど。ねえなんでいるの?」


勇者「転移魔法だよ。って、そんなことはどうでもいいだろう。話を聞いてくれ」


魔王「帰ってください」


勇者「ありがとう。実はさ、俺一回でいいから勇者らしく世界を救ってみたいんだよね」


魔王「会話できてるのこれ? そして何を言ってるんだお前は」


勇者「世界を救いたいんだ。なのに世界はこんなにも平和! 俺はどうすればいいんだ!!!」


魔王「帰れよ! 帰って寝とけよ!!! 少なくともお前のせいで私の平和は乱れてるよ!!!」


勇者「んーじゃあさ、せめて楽しんでみたいんだ。せっかく勇者になったんだし、世界を旅せずに終わるとか味気ないだろ?」


魔王「はあ、そうすれば?」


勇者「ああ。そうする。じゃあ早速行こうか、30秒で支度しな!」


魔王「え、なんで私も行くことになってるの?」


勇者「え、行きたくない? 世界旅行」


魔王「行きたくないよ…………仕事もあるし」


勇者「『行きたい』と言えェ!!!!(ドンッ!!!)」


魔王「行ぎたいっ!!!!」


* * *


―魔界・最後の街―


魔王「なんで行きたいって言っちゃったんだろ私…………」


勇者「行きたかったんだろ多分。仕事くらい休もうぜ。っと、ここが最後の村か」


魔王「魔物が住む村だね。宿屋も武器屋も防具屋も揃ってるよ。しかも最強装備も買える」


勇者「へー、でも人間の俺じゃ買えないか」


魔王「いや、多分売ると思うよ」


勇者「え、馬鹿なの?」


魔王「馬鹿なんだと思う。そもそも人間っぽい魔族もいるし、見分けつかないんだろうね」


勇者「部下の教育不足では?」


魔王「仕方ないじゃん、一見分からない種族もいるんだから」


勇者「そうなんだ。あ、おーいそこのスライム!」


スライム「ぷるるんぷるるん。ボクわるいスライムじゃないよ」


勇者「そ、そうか。何か困ってることはないか? 世界を平和にしたいんだ」


魔王「それまだ言うんだ」


スライム「特に何もないよ。ぷるるん。あ、特産品の魔界石あげるね。ぷるるん」


勇者「(かわいい)ありがとな。よし、別の街に行くか」


魔王「ねえこれ楽しいの?」


* * *


―人間界・極東の街―


魔王「わあ人間界まで来ちゃった」


勇者「こんな街があったのか。人間界も知らないことだらけだ」


魔王「ねえねえ、私買い物したい! お金貸して!」


勇者「魔王がこんなにもかわいい」


魔王「やめて気持ち悪い」


勇者「泣くぞ。ほれ、少ないけどこれ使え」


魔王「ありがと! じゃね!!!」


勇者「本当に行きやがった…………ん?」


薄汚れた少女「お、お願い、します。何か、食べ物を恵んで、いただけませんでしょうか」


勇者「(物乞いか? まだ世界戦争の余波が残ってるのかな)パンと水くらいしかないけど、どうぞ」


薄汚れた少女「! ありがとう、ございます! んっ、んくっ。ふああ、生き返るようです…………」


勇者「(よく見るとかわいい)」


薄汚れた少女「あの、貴方は…………?」


勇者「俺? 俺の名前は勇者。キミは?」


奴隷妹「わ、わたし奴隷妹っていうんです」


勇者「そうか。奴隷妹、なにか困っていることはある? って、聞くのも変だな。何か力になりたいんだけど」


奴隷妹「ど、どうしてですか?」


勇者「誰かの力になりたいんだ。世界が平和になったと思ってたんだけど、まだ俺にできることは多そうだし」


奴隷妹「じゃ、じゃあ姉を助けてくれませんか!」


勇者「えっ」


奴隷妹「あ、い、いえ。急に言われても分からないですよね……」


勇者「あーえっと、その話詳しく聞かせて」


奴隷妹「分かりました。実は――――――――」


* * *


勇者「(まさか奴隷がいるなんて。奴隷制度は世界的に禁止されていたはずなのに)」


奴隷妹「あ、あの」


勇者「(この子とその姉は突然奴隷として拉致されたとか。姉が隙を見て奴隷妹ちゃんだけ逃がした、と。胸糞悪い)」


奴隷妹「ひっ」


勇者「(その他にも奴隷にされた人たちはたくさんいて、この街以外にも奴隷がいるとか。何が平和だ、戦争が終わったってのに、全然平和じゃないじゃないか。勇者として力を得たのだから、その力を人を救うために使わないと)」


勇者「奴隷妹ちゃん!」


奴隷妹「ひええ!? 勇者さん顔怖いです!」


勇者「えっごめん! じゃなくて、キミのお姉ちゃんを助けたいんだけど、どうすればいいかな」


奴隷妹「た、助けてくださるのですか!?」


勇者「うん。見過ごせないしね」


勇者「(それはそれとしてどうしようか。奴隷商人をぶっ殺す? いやいや、それやったら俺が捕まっちゃうよ。殺すまでは行かなくても、気絶させて全員逃がすとか…………いやその後どうすればいいんだ!? 住むところないじゃん!)」


魔王「たっだいまー勇者どしたの? その子誰?」


勇者「(ウサギの尻尾みたいなアクセサリーがお尻についてる。何その恰好)」


奴隷妹「(わあ、すごい美人さんだ)」


勇者「この子は奴隷妹ちゃん。なんでも、姉妹一緒に奴隷にされちゃったんだってさ」


魔王「ふーん。助けるの?」


勇者「もちろん。奴隷制度は禁止されているんだ。奴隷姉だけじゃなく、他の奴隷も助けたい」


魔王「どうやって?」


勇者「それは、どうすればいんだろう」


魔王「はあ、じゃあ私も手伝ってあげる。買い物とか楽しませてくれたし」


勇者「本当か? ありがたいな。俺の金がそのクソだせぇ尻尾になったときは頭を抱えたが、そういうことなら仕方ない」


魔王「は?」


勇者「あ?」


魔王「この可愛さが分かんないとかありえないんだけど、ケツの穴にエクスカリバー突っ込んで奥歯ガタガタ言わすぞクソアホボケカスパーリーピーポー」


勇者「ああん? やんのかぁ? んーーーーえーーっと、ばか!!!」


魔王「まて落ち着こう」


勇者「おばかさん!」


魔王「落ち着いてバカ。勇者のおバカ。語彙力ゴーレム以下」


勇者「ごめんなさい」


魔王「こういう時に喧嘩をするのはよろしくない。まずは私は先程まで如何に優雅な買い物を楽しんでいたのか、そしてウサギの尻尾の可愛さについてなどを語らせてほしい」


勇者「おう。ん? あ、あれ? でもそれ俺の金…………ああ、でもまあそうか。よろしく頼む」


* * *


勇者「高い肉食ってやがったこいつ」


魔王「美味しかったよ」


勇者「そりゃよかった。それより解決方法は思いついたか? 正直俺は戦うことしか考えられなかった」


魔王「脳筋だねぇ。あのね、奴隷商人を倒しても解決にはならないと思うんだ。相手は貴族との繋がりもありそうだし、脅しは効かない。というか勇者が国から、いや人間界から追放されちゃうでしょ」


奴隷妹「…………」


勇者「でも、だからって奴隷なんて…………!!!」


魔王「まあ聞いてよ。要は真正面から奴隷を解放して、住む場所も確保すればいいだけでしょ?」


奴隷妹「そんな方法が…………!?」


勇者「そ、それはどうすればいいんだ!? 教えてくれ!」


魔王「金」


勇者「え」


魔王「だーかーらー、お金。マニー、おーけー?」


勇者「お、おーけー(おーけーってなんだ?)」


奴隷妹「た、確かに奴隷を買ってしまえば全員助けることができます…………でも、そんな資金はありません!」


魔王「無ければ作ればいい。ね、勇者」


勇者「え、俺?」


魔王「うん! むしろあんたしかいないよ」


勇者「でも俺働いたことないし…………」


魔王「いやいや、簡単だよ。向こうに見えるのは何かな?」


勇者「コロシアム…………?」


魔王「そ。勇者が戦って、私が勇者に賭けるの。ついでに優勝して賞金もガッポガッポ」


奴隷妹「はえー…………すっごい」


勇者「はあ、そういうことか。よし、任せとけ」


* * *


―コロシアム前―


受付「はい。勇者、様ですね。エントリー完了しました。夕刻から始まりますので、日が沈む前にコロシアムにいるようにしてください」


勇者「分かりました。ありがとうございます」


魔王「夜まで暇だね。よし、奴隷商人のところ行こうか」


奴隷妹「え、で、でも…………」


魔王「不安なら外で待っててくれて構わないよ。と、一人だと危険か。勇者に守らせようね」


勇者「また移動か…………」


魔王「ほらさっさと歩く!」


* * *


―奴隷市場―


勇者「鍵掛かってるな。今は閉まってるのか?」


魔王「こういうのは一般人は入れないようになってるんだよ。ねえそこのお兄さん」


髭男「あん?」


魔王「奴隷市場に興味があるんだけど、紹介していただけないかしら」


勇者「(かしらっ? だ、ダメだ。まだ笑うな……こらえるんだ)」


髭男「あ、ああ。それならノックを二回、四回、三回、四回と区切ってすればいい」


魔王「ありがとう。おにーさんっ!」


勇者「ぶはっ!」


髭男「何か?」


勇者「い、いやなんでも。そんなに簡単に教えていいんですか」


髭男「一般人はそもそも奴隷に興味なんて湧かないからな。それだけでも選別はできるんだ」


勇者「なるほど」


魔王「さて、怒らないからなんで笑ったのか教えてほしいにゃー?」


勇者「そんなキミも可愛いよ」


 バチンッ


* * *


―奴隷市場前―


勇者「(まさか殴ってくるとは。冗談が通じないヤツ)」


魔王「えーっと、二、四、三、四っと」


奴隷商人「どうぞ」


勇者「おおっ本当に開いた」


奴隷妹「ではわたしと勇者さんは外で待っていますね」


勇者「気を付けろよ、魔王」


魔王「誰に言ってるのさ」


勇者「そういえば魔王だった。負けるわけないか」


奴隷商人「入らないんですかい」


魔王「ああすみません。今入ります」


魔王「(薄暗いなぁ、それに埃っぽい)」


奴隷商人「どのような奴隷をお求めで?」


魔王「下見をしたくてね。特にこれといった要望は無いんだ。一通り見てもいいかな」


奴隷商人「ええ、ええ。もちろんですとも。ささ、この階段を下ればすぐです」


魔王「地下か。灯りは?」


奴隷商人「光魔石による照明がございます。しかし逃亡の防止のために足元が暗くなりますのでお気を付けください」


魔王「ふむ。そうか」


魔王「(まあ、それは暗視魔法でどうとでもなるだろう)」


モブ奴隷A「うう…………」


モブ奴隷B「誰か、誰か来たの?」


モブ奴隷C「…………ぁ」


魔王「数は?」


奴隷商人「十人です。ここの元店主が別の街に行ってしまいましてね。新しくもらい受けた私が急遽奴隷を集めたわけですから、商品が少ないのですよ」


魔王「なるほど」


魔王「(まあ、そっちの方が助かるか。多すぎたら全員買取なんてできないしね)」


奴隷姉「…………ねえ、あんた。あたしを買ってよ」


奴隷商人「貴様! お客様に向かってその口の利き方はなんだ!」


奴隷姉「うっ…………あ、あれ? ぶたれてない?」


魔王「(思わず手を掴んでしまった)」


魔王「やめてくださいよ商人さん。お客様の前ですよ」


奴隷商人「す、すみません。つい。おい、口の利き方には気を付けろ」


奴隷姉「…………はい」


魔王「商人さん。この子、キープしておいてください。お金を用意してきます」


奴隷姉「えっ…………?」


奴隷商人「……は? い、いやこいつはまだ」


魔王「何か問題があるんですか?」


奴隷商人「……いえ全く。金額は――――――Gになります」


奴隷商人「(くそ! 調教してねぇからまだ高く売れねぇってのに。しかしこいつ顔はいいな、女なのに奴隷を欲しがるし。変な奴だ)」


魔王「では早ければ今日の夜にまた伺いますね」


奴隷商人「承知いたしました。ああっ、すみません。お金を落としてしまったようです。拾っていただけませんか」


魔王「気を付けてくださいね。よいしょ」


奴隷商人「ガハハハハ! 隙だらけだぜェ!!」


魔王「(私には暗視があるから見えていた。奴隷商人が『わざと』小銭を落とすところを)」


魔王「ふんっ」


奴隷商人「なぁっ!?」


魔王「忠告だ、人を攫うのなら相手を選べ。私は無駄な殺生は好まないが、必要とみれば構わず殺すことができる女だ。以後気を付けるように」


奴隷商人「は、はいぃぃぃ!」


魔王「(もうこのまま正当防衛でぶっ飛ばしてやろうとも思ったが、それでは意味がない。よく我慢した私。脳筋勇者とは違うんだ私は)」


* * *


勇者「(なんか悪口言われた気がした)」


奴隷妹「あ、あの。魔王さん大丈夫でしょうか」


勇者「大丈夫だろ。あいつ強いし」


奴隷妹「そうですか…………」


奴隷妹「(魔術師さんなのかな?)」


魔王「たっだいまー」


勇者「おう。どうだった?」


魔王「とりあえず目に入った一人をキープして、夜にお金持ってくるって伝えといた。後はお金稼いで買うだけだね」


勇者「順調だな。次はコロシアムか」


* * *


―コロシアム待機室―


勇者「思ったよりも人が多いな」


巨漢「おうガキ、コロシアムは初めてか?」


勇者「ん? ああ、そうなんだ。教えてくれると助かる」


巨漢「じゃあ説明するぜ。まず戦いはバトルロイヤル形式だ」


勇者「バトル……なんて?」


巨漢「あー、あれだ。全員が敵の戦いだな。最後まで倒れなかった奴の勝ちだ」


勇者「なるほど。だいたい分かった」


巨漢「さっきも言ったようにそれだけ守れば勝てる。とにかく全員倒せばいいってわけだ。簡単だろ?」


勇者「ああ、簡単だな」


巨漢「頑張れよ。まあでも、本番で対面したら容赦しねぇから覚悟しとけ」


勇者「そっちこそ」


巨漢「言うなぁおい」


* * *


―コロシアム中央―


勇者「ふう、あとは開始の合図があるまで立ってりゃいいんだったか」


勇者「(観客多いなぁ、こういうコロシアムも貴族の遊びなのだろうか。だけど戦士の力比べにも利用されているようだし、奴隷ほどひどくはないか)」


魔王「おらああああああああ勇者勝てやああああああああああああああああああああ!!!!!」


勇者「(うるせっ)」


運営「えー、今からあなた達にはしばき合いをしてもらいます」


勇者「デスゲームかよ」


運営「では爆発音に合わせて戦闘を始めてください」


勇者「爆発音ねぇ。戦争で余った火薬をこういうことに使ってんのか」


勇者「(なんていう間に、周りの空気が変わった。皆真剣に狙いを定めている。誰から倒そう、とかを思っているのだろう)」


 バァァァァァン!!!


剣士「うらあああああああああああああ!!」


勇者「やっぱあんたからか!」


勇者「(最初に狙ってきたのは常にこちらを睨んでいた剣士だ。だが、一人狙いというものがそもそも間違っている。これは全員が敵、なら一気に倒してしまった方が効率が良い)」


勇者「ライトニング!」


剣士「えっ」


荒くれもの「えっ」


魔導士「えっ」


斧使い「えっ」


運営「えっ」


たまたま参加した隣町の凄腕剣士「えっ」


ネコ「にゃー」


 キュイイイイイイイイイン


運営「な、な、なんということでしょうか! 一人の男が突然光ったと思えば、フィールドにいたほぼ全員が倒れてしまいました!」


勇者「ふう」


巨漢「いやふうじゃねーよ!」


勇者「あれ、倒せてなかった!?」


巨漢「いや! たまたま当たらなかっただけだ! なぜか!」


勇者「そか。えっとじゃあ、やる?」


巨漢「やるわけねーだろ」


運営「け、決着ううううう!!! 優勝は勇者選手だああああああああああ!!!」


魔王「茶番乙」


* * *


―奴隷市場付近―


勇者「出禁くらいました」


魔王「だろうね。あー最初からもっとお金あれば増やせたのに」


勇者「誰が大量に使ったんだろうね」


魔王「不思議だね」


勇者「ほんとだね」


奴隷妹「そ、それよりも早く助けに行きましょう!」


勇者「よしきた。魔王、行くぞ」


魔王「その前に、奴隷妹ちゃんはこれ着て。フード付きのローブ」


奴隷妹「え、私も中に?」


魔王「もちろん。そもそも奴隷商人を買収するようなものだよ? 取引が終わったら顔を出しても安全だよ。それに、お姉ちゃんに早く会いたいでしょ?」


奴隷妹「……はい!」


勇者「今度は三人で乗り込みか」


勇者「(えーっと、二、四、三、四だったか)」


奴隷商人「お待ちしておりました。おや、そちらのお二方は?」


魔王「連れだ。構わないだろう?」


奴隷商人「はあ、では中へどうぞ」


魔王「さて、地下へ行く前に話があるんだ。いいかな」


奴隷商人「話、ですか。値下げはしませんよ。商売なんでね」


魔王「いやいや、そういうことはしないさ。簡潔に言おう。奴隷を全て渡し、店の所有権をこちらに譲渡してくれ」


奴隷商人「はあ!? 何を言っているんだお前は!」


魔王「失礼。値段を聞いていなかったね。これだけあっても足りないかい?」


勇者「(ジャラァと袋からミスリル貨が溢れ出る。わぁ大金だ。遊んで暮らせるぞ)」


奴隷商人「こ、これは!? これだけあれば……いやしかし…………」


魔王「何か不都合でも?」


奴隷商人「いや、別にそのようなことは…………」


魔王「嘘、だね? 何を隠しているのかな。教えてよ」


奴隷商人「適当なことを言うな。本当に何もない」


魔王「忠告したよね、相手を選べって。それは嘘をつく相手も同様だよ?」


奴隷商人「…………わかった。教えよう。これを見てくれ」


勇者「ん? なんだこれ、紫のペンダント?」


魔王「まさかこれは…………! おい、貴様これをどこで手に入れた!」


奴隷商人「ひっ、な、なんか急に男が渡してきたんだよ。それで奴隷商売のやり方とかも教えてきやがって…………」


魔王「奴隷商売のやり方を……? それ、何者?」


奴隷商人「さ、さあ? 顔も隠してやがったから特徴なんて何も……」


魔王「そうか…………」


勇者「あー、なんかよくわかんねーけど。結局奴隷は買えるんだよな?」


奴隷商人「あ、ああ。それは構わねぇ。金があれば危険を冒してまで働く必要はねぇからな」


勇者「よしっ! じゃあ顔見せていいぞ。奴隷妹」


奴隷妹「き、緊張しました」


奴隷商人「あっ! テメェ逃げたガキじゃねぇか!」


魔王「は?」


勇者「あ?」


奴隷商人「ごめんなさい。帰りますね」


* * *


―奴隷市場階段―


勇者「なあ、さっき回収したペンダントって?」


魔王「さっきのは意識を奪い混乱させる光を放つ石さ。これを使って洗脳しちゃえば簡単に奴隷を手に入れることができる。他にも使い方はあるけどね」


勇者「そんな酷い物、禁止されてないのか!?」


魔王「あれは人間界にはない宝石だよ」


勇者「えっ」


魔王「ついた。ここが奴隷を売ってる奴隷市場」


勇者「奴隷はこんな狭い部屋に監禁させられてるのか……」


モブ奴隷A「…………」


奴隷妹「お姉ちゃん!!」


奴隷姉「えっ…………ど、奴隷妹!? どうして!?」


魔王「説明しよう! 実は――――――――ということだ!」


奴隷姉「そうだったんだ。すごいね、あんたら」


勇者「怪我してるじゃないか。大丈夫か?」


奴隷姉「う、うん。あたしは別に平気。でも、ほかのみんなの方が…………」


勇者「そうだな。おい魔王、買っておいた食糧とか運ぶぞ」


魔王「うえーい」


* * *


―極東の街・広場―


勇者「(全員の食糧を用意してとりあえず解決したけど、この後どうしようかな)」


魔王「勇者」


勇者「魔王か。まだ寝ないのか?」


魔王「うん。そのね、話があるの」


勇者「なに? 告白?」


魔王「あの時言った通り、あの宝石…………ペンダントは魔界でしか手に入れることはできないの」


勇者「…………」


魔王「つまりさ。魔界が、魔族が関わっている可能性が高い。というか、確実に関わってると思うんだ」


勇者「……かもな。俺もそう思う」


魔王「だからさ。私も魔王として、責任をもってこの問題を解決したいの」


勇者「これからも協力してくれる、ってことか?」


魔王「うん。だって、このままだと魔界が人間界を狂わせたってことになって、また戦争が始まっちゃう。だから、協力させて」


勇者「……分かった。でも、どうするんだよ、あの子たちの住む場所も考えないといけないし……」


魔王「ああ、それならいい方法があるよ。荘園って知ってる?」


勇者「あの、貴族が村長? の村だっけ?」


魔王「まあ、そんな感じ。でね、それを作っちゃえばいいんだよ。行き場のない子はそこで保護して、そうじゃない子は元の場所に送り届けて。そうやって奴隷を集めるの」


勇者「そうか、そうすればみんなが幸せになれる!」


魔王「相手の…………魔族と仮定するね。魔族はなぜか奴隷を増やそうとしてる。これはきっと、既に禁止されている奴隷制度を使って人間と魔族を敵対させるためだと思う。だから、私たちの目的はその魔族の討伐。すべてのペンダントの回収。さらに、奴隷を集めた荘園の建設。この三つになる」


勇者「…………長い道のりになりそうだな」


魔王「じゃ、よろしく。勇者」


勇者「ああ。これからもよろしく。魔王」


 こうして、奴隷解放の戦いが始まった。

 勇者と魔王という特殊なコンビだけど、きっと世界を平和にしてくれる。


 そんな最初の一歩を描いたお話。


                                ―完―

初めて台本形式の作品をなろうに上げました。楽しかったです。息抜きにピッタリだね。あと良かったら下の☆から評価とかしてください。励みになります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短編で終わらせるにゃあ勿体ねえ! 是非とも続編をば読みたいで候!(´。✪ω✪。`)  各キャラクターが役職や立場の名前で構成されてるのは過去の名作を彷彿とさせますねえ(◜ᴗ◝ )‬  コメ…
[良い点] 勇者口喧嘩弱すぎて冷静になるの好き おばかさん!で笑った
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