5 男同士の話
ノアside
明日の予定も決まって、部屋に戻ることになったときにザイアスとアメリアの様子を影から見ていた。
はじめてお酒を飲んだアメリアに気を使ったのか、ザイアスは声をかけていた。カウンターから降りようとするアメリアの手をとってあげている。
歩いたときに酔いが回っているなんてこともよくある。初めてだとそれに気が付かない。それは俺もわかっていたからザイアスがやってなかったら、俺がやってたと思う。
マリッサはハンナさんと話しているが、さっきアメリアが気に入っていたお酒を見ていたからきっとアメリアのために何かしてあげようとしているのだろう。
みんなアメリアには特に優しい。といいながら俺も例外ではないから何も言えないんだけどね。
部屋に戻ったが、ザイアスと飲み直すことになった。少しからかってみようか。
「ザイアスはアメリアのこと、本当に大切にしてるよねー」
「……まあな、でもお前もだろ。むしろマリッサもだから全員だ」
同じことを思っていた。むしろザイアスとマリッサと俺どころの話ではない。
アメリアが誰かに嫌われているところを見たことがない。
ザイアスは学園にいたときに、女子生徒から絶大な人気を誇っていた。そのザイアスに対等に話していたアメリアはやっかまれてもおかしくない。マリッサは揉め事を避けてか、人の多いところで俺達と話すのは少なかった。
とても素直ないい子で見た目もとても可愛くて、さらに女子からやっかまれそうなのに、学園にいたときもそんな様子は見られなかった。
むしろ、ザイアスを慕っていた女子生徒たちからも可愛がられていた。
「そうだねー、なんか妹みたいで。あの子は誰からも愛されるよね」
この言葉に嘘はないが、少し不思議だった。アメリアをかわいがっても正直なにか得られるわけではない。別に手さえ出さなければ、ザイアスが怒ることもないし何も問題はない。
利益を考えてしまうことは、故郷のどろどろとした権力争いに慣れすぎてしまったのか。そうだったら嫌だなあ。
「そうだな。マリッサもいいやつだけど可愛がられるというタイプではないな」
「そうだねー」
マリッサはしっかりもので、年下なのにお姉さんのような感じだ。でも意外と寂しがりな気がする。気がするだけで根拠とかはないけれど。
軽く雑談をしながらワインを飲んでいたら、日が変わった。そろそろ寝ようかと話になり、ベッドに横になった。