南海島の密約
朝の日差しが照り付ける展望台食堂で四人はテーブルを囲んで腰をおろしていた。
まわりには 何人かのメイドが直立不動の姿勢で立っている。
コーヒーの香りがテーブルを包みこみリラックスした雰囲気が漂う。
朝食を終えたミレイユとサラは、
今までのあらましを エレオノーラから聞くのであった。
「セル―カ王国は、大陸の東岸に位置していた農業の豊な国、そして、平和な国でした。
しかし そんな我が国を 絶えずねらっていた国があったのです。
それが、東の海を越えた大国、ヴィジャナル王国
このヴィジャナル王国から 我が国を守るため
西方の大国、アウステーヌ連合帝国と軍事同盟を結び、
ヴィジャナル王国からの軍事的圧力を
長年にわたり防ぎつづけてきたのです
しかし・・・・ アウステーヌ連合帝国が突如として、内部崩壊をしてしまった。
理由は連合帝国帝都ユシアの大爆発! 皇帝と政府首脳部は、一夜にして消息不明」
「ん!? 都市ごと爆発!?」
サラは前世の知識から、なにかいやな予感がした。
情報によれば、アウステーヌ連合帝国は、
帝都ユシアのスタジアムにて禁断の儀式である勇者召喚を行おうとしていたそうです。
異世界の力ある者を無理やり この世界に呼びつける。
不道徳の上に 何が召喚されるか分からない危険な魔術なのです。
一般的には封印されているはずの魔術だったのだが・・・・
連合帝国は、この禁断の魔術を行使したのである。
その結果として、予想外の者が現れてしまった。
勇者ではなく ひとりの悪魔! それも、大変危険な大悪魔であった。
だが!! 連合帝国側も もしもの事態に備え二万の近衛兵を待機させていたのである。
そして、帝都スタジアムを中心に激戦が行われた。
数時間の戦いのすえ、近衛兵が大悪魔を撃ち取ろうとしたその瞬間!
帝都ユシアを巻き込むほどの自爆をしたのであった
「こわい・・・・」
ミレイユは自らの腰に携えている小刀をチラリと見たのである。
都市ごと自爆って・・・・ もしかして核なのか!?
僕たちのアドバンスゴーレムみたいに自爆機能が付いていたのかも・・・
それも核なみの自爆。
もしかして、悪魔というのはゴーレム的なものではないか!?
そんなことを エレオノーラの話を聞きながら考えるサラであった。
こうして 政府首脳部を失ったアウステーヌ連合帝国は、生き残った王族と各地の有力諸侯が覇をとなえ、
群雄割拠状態に陥った。
セル―カ王国は連合帝国の後ろ盾を失い、
もはや ヴィジャナル王国と単独で渡り合わなければならない状態におちいってしまったのです。
「なんて不運な!!」
そして ついにその日が来たのです。
突如として、セルーカ王国王都ブルジュ近くの浜辺に3万のヴィジャナル王国軍が上陸、
そのまま王都へと進撃を開始したのです。
完全な不意打ちのため、兵力の招集もままならず わずか3000名ほどの王都防衛隊で
対処しなくてはならず、その上、水道城門の閉め忘れという致命的ミスにより、
王都内へやすやすと侵入され わずか一日で王都ブルジュは陥落・・・・
国王、皇太子は戦死。その他、王族は行方不明・・・・・
「・・・・・ヴィジャナル王国! そんな侵略を・・・ サラちゃんは知ってた?」
ミレイユの質問に首を振るサラ。
「知らなかった」
ちなみに ヴィジャナル王国とはユスティネス公爵の属している国であり、ミレイユの祖国でもある。
「ヴィジャナル王国にとっては 国境紛争程度の介入だったのだろうけど、
我が国にとっては存亡を左右する戦いだったのです! 」
パウネリアは悔しそうに唇を噛んだ。
少し間をおいてから、あらためてエレオノーラは続きの話をした。
たまたま王都を留守にして難を逃れていた第二王子アウムスティとエレオノーラ王女は、
復讐すべく1万の兵力を招集、ブルジュ近郊でヴィジャナル王国軍3万と激突するが、
兵力に勝る敵には勝てず、第二王子アウムスティは矢に撃たれ、命を落とす。
「 セル―カ王国の最後の希望はおまえだけだ! 必ず復讐してくれ 」
「 お兄様! か・かならず復讐します かならず!! 」
エレオノーラ王女は残存兵力を集め戦域から離脱しようとするが、
ヴィジャナル王国軍の執拗な追撃を受け、味方が次々と倒れていき、
もはや、まともな軍としての組織体制も崩壊してしまった。
エレオノーラと護衛兵たちは、なんとか小型帆船を手に入れ海上に逃れた時には、
味方が10名あまりしか残っていなかったのである。
「 なんてことなの! しかし 兄の遺言は必ず守ります。必ず復讐します!」
再起を図るためにも、安全な地となる根拠地が必要であり、最適な地を探し求めたのであった。
しかし・・・ エレオノーラ王女たちの試練は、まだ続くのである。
海賊との遭遇である!
味方はわずか10名。 海賊とはいえ、もはや対抗できるはずもなかった。
ついに 味方は侍女のパウネリアを残し、みな戦死してしまい、
エレオノーラ王女も海賊に囚われ奴隷として売られるはずであったが・・・
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「 なんて大変な目に! ヴィジャナル王国も海賊も酷すぎる・・ 」
ミレイユは 怒りの入った発言をした。
話を終えたエレオノーラは 感情的には味方をして貰えそうだが、
現実的な援助を得られるのかどうかは定かではない。
唯一出来ることは、すがるような目でミレイユたちを見つめるぐらいであった。
サラはミレイユに耳打ちして相談を始めた。
「 この話が本当なら、大義名分は・・ありそうね。 僕たちに正義の旗がありそう 」
「 でも、私たちのキシたちが ヴィジャナル王国の正規兵と戦えるの!?」
「 海では勝てそうだが、 陸戦は数だからね。 おねーさまのあの武器をつかえば・・ 」
「 ・・・・・・あまり使いたくないわぁ。 あのようなものを使用すると いよいよ、魔王になってしまう」
「 そうね。 おねーさまは聖女だもんね! あの兵器は聖女むきじゃない」
「 威嚇には使えそう。 威嚇だけにしましょう」
「 おねーさま やる気がでてるわね 」
「 よく分からないけど・・・ 気にくわないからよ 」
勝算のありそうな会話の声が聞こえてきたためか期待を膨らませる侍女のパウネリア。
ミレイユはエレオノーラに問いただした。
「 エレオノーラさん! 私たちの援助を欲しますか? 」
ごくりと唾をのむエレオノーラ。
「 は、はい ぜひ、陛下のお力をお貸しください。 お兄様の仇を・・ 最後の遺言のためにも・・・」
目に涙があふれるエレオノーラ王女。
「 ところで、セル―カ王国を奪回したあかつきには、ミレイユ聖女帝国に何を提供してくれるのかを聞きたいですね 」
サラがエレオノーラ王女に目線が行く。
「 そ・・それは、 妾の権限では・・・ 」
「 だろうね、 ここで何かを約束しても、空手形の可能性が高そうだ 」
エレオノーラは、すこし考え決心したように サラを睨み発言した。
「 いいえ! 妾は王位継承第一位のお兄様から後を託された。 妾がセル―カ王国の国王です」
サラはエレオノーラの決心を受託する。
「 よろしい。 その言葉を信じ・・・ とりあえず、セル―カ王国の制空権を貰おうかな」
「 空!? 」
「 セル―カ王国上空を管轄する権利です 」
制空権が どれほど重要なのかを理解できていないエレオノーラ王女だが、答えは決まっている。
何があろうと、兄の仇、王の仇を撃つ!!
「 分かりました。 セル―カ王国を奪回した際には制空権を譲ります 」
「よろしいのですか?」
パウネリアの心配そうな声。
「空を飛べないセルーカに空は必要ありません。 そのかわりに空の防衛はしてくれるんでしょうから・・」
「そういう事になりますね! 聖女帝国が全力を挙げて空の安全を守ります!」
ミレイユに断りなく話を進めるサラ!!
しかし ミレイユも同意していた。
セルーカ王国が復興した場合、制空権をもっている聖女帝国とセルーカ王国は一心同体。
国際的に認められているセルーカ王国に寄生することによって
聖女帝国としての地位の確保を国際的に得ることができる。
「 正式にミレイユ聖女帝国はセル―カ王国と軍事同盟を結び、王都奪還の援助を決定します。
というかミレイユ聖女帝国って名前がはずかしいよ 」
ミレイユの本音の混じる宣言である。
「 ミレイユ聖女帝国 ばんざーい 」
サラは イヤミっぽく連呼する。
「うぬぬぬっぬぬ」
「エレオノーラさんの 弟子話が吹っ飛んでよかったのじゃないの!?」
「そういう話もあったね。 私が弟子をとっても、うまく教えられないよ!」
「妾は ミレイユ様の弟子にしてもらい、いずれは魔道の神髄をお教えしてほしいと思ってるのですよ」
「神髄って・・・・ そんなもんはないよね」
ミレイユは、手首を振って ないないのジェスチャーをする。
つられて、サラも一緒になって ないないのジェスチャーをした。
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こうして 南海島の密約 と呼ばれる伝説的有名な軍事同盟が結ばれたのであった。
ちなみに、南海島の密約の呼称は後世の歴史家によって付けられた名前であって、
現時点では この島の名前すら付けられてもいないし、まともな条約調印すらせず、
ただの口約束でしかなかった。
しかし、その後、時代がすすむにつれて、色々な伝説と逸話が混ざり
原型がないほど脚色され劇や映画の題材とされるようになるのである。
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かつてのセルーカ王国の王都であったブルジュに メアたちを潜入させて、
エレオノーラ王女の発言の真偽と町の様子を探らせることにした。
潜入班としてメアたち5人には、町娘風の姿になってもらう。
もちろんハルバートは持たせない。 目立ちすぎるからね!
そのかわりに メアの体内にいろいろとした秘密兵器を仕込んでいる。
危機に陥ると・・・仮面を被ったカラフル衣装なメイド衣装に早変わり
そして正義の戦士!! 奪回戦隊メイド☆スター となるのだ!!
・・・・とサラは力説してるのを、ミレイユは白い目で眺めるのであった。
そんな白い目を向けられると、ちょっと 恥ずかしくなるサラ。
「と、とにかくです・・・・ あっ それに、ブルジュで色々と買い物もしてもらいましょう
生鮮食料品も少なくなってきたことだし・・」
「あっ メアちゃんたち! おいしそうな食べ物も仕入れてきてね~」
食べ物の話になると、目が輝くミレイユだった。
『お嬢様。 了解いたしました。 あらゆる食料品を手に入れてきます!』
飛空船内にある駐機場で、水陸両用戦車の整備と点検が終了したことを 整備係のキシのひとりが知らせてきた。
この水陸両用戦車の操縦をするのが、大戦中のドイツ戦車兵風の服装を着たキシである。
もちろん 黒い服でベレー帽にヘッドフォンらしきものをつけている!
言わずと知れたサラの趣味によるものである。
そして、水陸両用戦車の名前はレオティーガー。 なにかの名前が混じってる名称である。
四輪駆動・ウォータージェット推進、適度の装甲と主砲を一門備えた戦車風・・・
・・・・いや、完全に見た目が戦車である。
キシにエスコートされながら レオティガー戦車に乗り込むメアの五人衆!
この戦車の内部には、ゆったりとした席が装備されており、
5人ぐらいのお客様を おもてなしするぐらいの余裕がある。
そして 赤色灯が回転しながら、ゆっくりと飛空船下部ハッチが下がっていく。
そこには地平線までつづく広大な海があった。
アルコール式エンジンの駆動音が鳴り響くレオティーガー水陸両用戦車。
ゆっくりとハッチから降り、果てしない海へと旅立っていくのであった。
今、彼女たちは過酷な・・・!?!? お買い物と、ついでに偵察のために旅発つのである。
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そのころ・・・ヴィジャナル王国・ユスティネス公爵領の港町。
そこに停泊している三本柱の大型帆船に姫君と多数の騎士団が乗り込んでいく。
その姫君とはミレイユの姉に当たるライオネン=ユスティネス=ユリティーナ
すなわちユリティーナ姫である。
彼女は 妹sたちの動向を調べるため、民間貿易船に偽装した軍艦に乗り込み、
報告書にあった海域へと向かう予定となっている。
もちろん、 ユスティネス公爵騎士団もお供についていくのであるが、
大人数を帆船に乗せることができないため、30名ほど連れていくことにした。
「公爵騎士団は、姫とともに どこまでも参ります」
大男の副団長ラウリは敬礼する。
「うむ よろしくたのむ」
今! ユリティーナ姫の乗る大型帆船が海へと漕ぎ出そうとしていた。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ) 次回は奪回戦隊メイド☆スターの大活躍を乞うご期待




