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理論武装
自分の強さを証明するために、理論を形にして武器とした。
時には相手を倒しながら、時には自身を守りながら、……またある時は自身を傷付けながら、共に戦ってきた。
その理論武装は誰にも破られなかった。
時には勝てない戦いもあったが、決して負けることは無かった。
けれど私はいつしか、その武器を扱いきれなくなっていた。
元々自身を傷付けることさえあったのに、今では使う度に身体と心が悲鳴を上げている。
そして気が付いた。
その装備に頼っているうちに、私自身は弱くなっていた。
理論武装は自他に通じる最高の武器だった。
それ故に、私は私の鍛練を怠っていた。
私はもう、理論に勝てない……。