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CROSS…  作者: ィィポン
6/18

『筆記試験』

部屋の中に入ると先ほど面接で使われていた机が消えており、代わりに5人用と思われる横長の机が置かれていた。


『それでは受験者の方は一人分空けて座ってください。』…ほうほう。500年経ったこの時代でも原始的なカンニング予防をしていると言う事に少々驚かされた。


【俺。空。美咲さん。空。子豚】と指示され、その通りに俺は一番左端に着席した。


『それでは筆記試験の科目、及びルールを説明いたします。質問時間は話の最後に設けますので説明中は話を割かないでください。』担当の先生が言い、俺達は小さく頷いた。


『まず。試験科目です。国語(クニゴ)数学(カズガク)化学(バケガク)社会(サイエティ)英語(エイゴ)魔学(マガク)です。』…はぁ!?!?!英語意外、何を言っているのか俺には分からなかった。


説明中の質問厳禁と言われた傍から早速質問したくなったが、試験用紙が配られたら嫌でも分かるだろう…との事でとりあえず質問は避けた。


『なお、6教科で時間は1時間とします。』と担当の先生が制限時間を言うと、なにやらボタンのような物を俺達に配りだした。『開始の合図を出したらそのボタンを押して、テストを開始してください。』


…とりあえず6教科で1時間は短いと思います。と言いたいが我慢。我慢。…何となく子豚が言っていた9割の受験者は落ちるという影が見えてきた気がした。


『次にルールの説明をいたします。そのボタンを押すと試験問題が机に浮かび上がります。1教科1ページで合計6ページあります。右端に出る【次】という項目を選択すると別の科目に変わります。』

『先ほども言いましたが、試験時間は1時間と大変短く、とても全てをじっくりと考えてやる時間はありません。時間分配には十分注意してください。』

『採点基準としましては各科目100点の合計600点分あります。どれをどう解いても構いません。一科目捨てて0点でも他がよければ全然問題ありません。解けそうな問題から解いていってください。』

『最後に。カンニング行為、私語、退席、は禁止です。そのような違反行為を行った場合は即退場で今後5年間はこの学校への受験は認められなくなります。』


以上です。と長々しい説明が終了した。先生は俺達の机の前に置かれた椅子に座り。『質問はありませんね??』と何故か最後は【か】じゃなく【ね】で終わらせ、質問はしてくるなと言われてる様にもとれた。


『あ…あります!!』と質問をしたのは子豚だった。


耳をピクリと動かし、眼鏡を少し持ち上げて『子豚君。手短にどうぞ。』と嫌そうに聞いた。


『ご…合格の最低ラインは何点くらいなんでしょうか…!?』…俺ですら何を聞いているのだこいつは。と少し呆れた。


案の定この先生も『それはこちらが判断する事で貴方達が知る必要はありません。』と御もっともな回答を述べた。


『すぃません…』と子豚は小さい声で謝罪し、俯いた。


『それでは他に質問はなさそうなので、ソロソロ筆記試験の方を始めます…では始めてください。』と言うと座っていた椅子から立ち上がり、『一時間後に戻ります、皆合格する事を祈っています。』と言いそそくさと退室した。


流石にコレには3人とも驚いた。個室にぽつりと3人だけ取り残されたのだ。


コレではカンニングし放題ではないか…いや、コレだけの技術が進んでいる時代…恐らく外からでも監視できるのだろうと思い、俺はテスト開始のボタンを押した。



机から電子ペーパーのような物が浮かび上がり、目次には国語、数学、化学、社会、英語、魔学と書かれており、やっと受験科目を理解した。…魔学…ってなんぞや。


横目でチラッと美咲さんを見てみたらなにやら熱中し、机をツンツンっと突っついていた。


…凄いな…浮かび上がった電子ペーパーは他人からは存在すら見えない仕組みになっていたのだ。これだと立ち上がって彼女の真上から見ないとカンニングは出来ないな。と技術の発展にまたもや関心した。


おっと、イカンイカン。俺もさっさと取り掛からねば。と俺は自分の一番得意な数学からやる事にした。テストは全て選択式で適当と思うものを指で触れば黒く塗りつぶされる仕組みになっていた。


『なッ!!!!!!!!!!』問題を見て俺は声を出してしまった。美咲さんと子豚がチラっとこちらを伺った。やべぇ…


それにしてもなんじゃこりゃ…何かのヒッカケ問題か!?!?


…数学の問題は簡単だったのだ。いや、簡単なんてレベルじゃない。試験官が間違えたのではないかと思った次第だ。


【問1】≪ 3 + 1 = ? ≫ ?に当てはなる適当な数字を次から選べ。A.1 B.2 C.3 D.4


…はぃ!?!?考えても分かるはずも無かった。考える以前にこの問題を見たらハテナは4しか浮かばないのだ。

…っへ。まんまと引っかかったなと、採点中にでも笑ってくれや。隆二さん…すまねぇ。金はバイトして必ず返却する…

俺は馬鹿正直に全問自分が思うがままにポチポチポチとボタンを連打し、数学はものの1分で終了した。


次に得意なのは化学だが、最初から順番にやれば良いかと、国語をやることにした。…完全にコレは問題を間違えたのだと思ったね。


またしても小学生レベルの問題だった。


【問1】≪桜≫ この漢字の部首と思われるものを次のうちから選べ。A.木 B.ツ C.女 D.サクラ


開始から20分が経過した。



俺は魔学を残し、それ以外の問題は全て終わった。


美咲さんや子豚の様子を見ると、なにやら相当難しい問題にでも取り掛かっているようだった。


美咲さんは可愛らしく左手の人差し指で自分の頬をツンツンと突付きながら問題とにらめっこしていた。…一方、子豚は…何故か汗だくでウーウーと唸りながら両手で頭を掻き毟っていた…


どうやら問題を間違えられたのは俺だけらしいな…この場合はどうなるのかな…考えても無駄か…


俺は最後の科目、魔学に取り掛かった。


【ん!?…】


問題は一問だけだった。


≪貴方にとって魔法とはどのようなものかとお考えですか??簡潔に述べよ。≫と書かれていた。


俺は大きな四角い空欄の中に【夢】と一文字書いて、全ての科目のテストを終了したのだが、内心は隆二さんには本当に申し訳ない…と言う気持ちでいっぱいだった。


【終了】と書かれたボタンを押すと≪御疲れ様でした。次のアンケートに答え、退室したければ退室ボタンを押下してください。≫と書かれた電子ペーパーが浮かび上がった。


アンケート!?…あぁ。コレの事か。


エルピネス学院では魔学と言う分野の授業を設けております。勿論、必須科目ではありません。選択科目です。


魔法と言うものは西洋で生まれた技術だと言われています。

魔法と聞いてあまり良い印象を持たない方も居るかもしれません。

仏の法である「仏法」に対し、仏ならぬ魔の法である「魔法」…それを学業として学ぶと言うのが≪魔学≫です。

仏法学と言い、回復術、精神術、などと仏法を学業とし取り入れている学校も少なからずあります。近年、エルピネス学院でも仏法を取り入れていこうと考えています。


仏法と魔法の主な違いは

癒す能力≪(心や身体の)傷・病気を治す事。肉体的・精神的苦痛を解消する事≫というのが仏法

傷む能力≪(心や身体を)傷・病気状態にする事。肉体的・精神的苦痛を与える事≫というのが魔法


と言うように元々魔法というものは戦争、抗争、などの戦のための術として使われていたため、人々を不快な思いにさせるものとし、恐れられていました。

しかし我がエルピネス学院では魔法と言う素晴らしい技術を世の為、人の為に使用できればと考えています。

勿論、その術を悪用するか否かは貴方次第です。


興味がある方は後ほど改めて詳細を説明いたします。次のうち興味がありそうなものを選択してください。


魔術(マジュツ)奇術(キジュツ)仙術(センジュツ)方術(ホウジュツ)妖術(ヨウジュツ)幻術(ゲンジュツ)呪術(ジュジュツ)、興味無し。


ご協力ありがとうございました。


【や…やべぇ…マジでうかりてぇ…】アンケートを読んだ第一感想がコレだった。この受験に合格しなければ、夢のまた夢の話だった。


魔術。幻術。妖術。…とっくの昔に諦め、心の奥底に潜めた【魔法への憧れ】が幼年期の時の様に体中に広がった。



≪ビィィィィィ!!!!≫っといきなり大きな音が鳴り、心臓を鷲づかみにされたような気分だった。


ウィーンという音が鳴り、振り返ると、さっき出て行った先生が立っていた。『皆さん。御疲れ様でした。時間ですので終了してください。』と少し微笑んで言った。


あぁ…もぉ一時間たったのか…俺はてっきり子豚が耐えかねずカンニング行為を行ったのかと思ったよ。


『それでは、採点をしますので皆さんは一階のロビーの左にあります。リフレッシュルームにてお待ちください。』と先生は言い、採点は30分ほどで終わります。と付け加えた。

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