『2507年11月29日…』
警官のオッサンの話を聞けば聞くほどコレは夢なんだ…と思えてならなかった。何を言っているのかさっぱり分からなかったからだ。
ひんやりと冷たいコンクリートの様な鉄板の様な…はたまたガラスの様な…簡単に言うとメタルで作られたコンクリートの様な地面だ。そこで俺は胡坐をかいて必死に考えた。
しかし、頭の中を整理する時間すらなかった。目覚めた時に一緒に居たおっさんの二人がとりあえず一緒に来てくれないかと、座っていた俺の腕をつかんだ。
『ちょ…ちょっと待ってください!!!どうゆうことなんですか??』俺は自分でも何を聞いているのか分からなかった。
『はぁ??君がココで倒れていると言う通報を受け、我々は来たのだよ??署まで一旦来てもらい色々詳しい事を聞かせてもらうのだよ。』と答えたのは俺に身分証明書を見せてくれた隆二・岡野とか言うふざけた名前のだった。
二人の警官に引きずられるように俺は彼らの車へと連れて行かれた。
『こ…これ…なんですか!?』と目の前の車を見て俺は訊いた…いや、車と言うより超小型飛行機!?というのかな??車体は20センチほど宙に浮き、形はパソコンのマウスのような形をしていた。
『は??お前記憶喪失なのか??…』隆二・岡野は2割心配そうな目で8割変な物でも見るかのような目で俺を見つめて言った。
一応、記憶喪失ではないと答え、仕方なく俺はそのマウスのような物体に乗り、テルミナ警察所と言う所に行く事になった。
車体は俺の想像通り、2〜30メートルくらい宙に浮かびあがって走行した。速度は80キロくらいだろうか…ほんの10分くらいでテルミナ警察所と言う所に到着した。
走行中、俺はずっと景色を見ていたが、ココが何処なのかは全然分からなかった。建物は空まで届きそうな高層ビルがいくつも並んでおり、見た感じでは結構な都会だった。
シューっと言う音を出しながら車は着陸した。同時に車の屋根にあたる部分がウィーンっと全開に開きおっさん達が降りた。
『何をしているんだ。君も早く降りてこっちにきてくれ。』とオッサンに言われるまで俺は動く事ができなかった。
二人の後ろに着いて歩き、取調室と言う部屋に案内された。署内の人たちもこのおっさん達と一緒のような変な格好をしていた。…が向こうは俺の服装の方がよっぽどおかしな格好に思えたのだろう。すれ違う人たちに凝視され、変な目で見られた。
取調室の椅子に座るように言われ、俺は言われるがまま椅子に座った。
『飲み物をもってくるから少し待ってってくれ。』と隆二・岡野に言われ、俺は頷いた。
俺はその待ち時間にそんなに俺の服装は変だろうか????…などと、どうでも良い事を考えていた。
俺が今、こんな状況でなかったら奴らの格好を腹を抱えて笑っただろう…男女共に共通して言える事は露出度が恐ろしく高かったと言う事だ。
簡単に説明すると、皆水着のような格好と言うわけだ。水着にひらひらとなにやら飾りのようなものはついていた。まぁ着飾った水着だ。もう直ぐ12月だというのに寒くないのかと相手の心配までしてしまった。
部屋の周りを見ていると驚かされる物があった。カレンダーのような物だ。
【2507年11月】とでっかく書かれていたからだ。どうでも良い事だが、日にちが1日からではなく30日から始まっていた。曜日については何も変わらず日曜から始まって土曜で終わりらしい。
【ここって…本当に500年後…???いやいやいや、そんなはずは無い、100歩譲って500年後だったとしてもそれは俺の夢の中の話だ。さっさと起きねば…今日も遅刻したら親子面談だ…やばいやばい】
ウィーンっと言う音がなり、ハッと驚き振り返ると奴が居た。隆二・岡野だ。
『ほれ。』と渡された物は四角いパックのような物だった。でも紙パックでは無くなにやら変な素材で出来ていた。少々ひんやりとしている。
どうやって飲むのか分からず隆二・岡野の行動を見ているとパックの角を食い、そのまま穴の開いた所からガブガブと飲みだした。
『冷めないうちに飲んだ方が良いぞ』と言われ、少し首をかしげた。
どう考えても冷たい飲み物だと思ったからだ。俺もおっさんの真似をして、角を食い穴を開けてそこから飲んだ。
驚いた…こんなに薄い素材なのに入れ物は冷たく、中身は暖かかったからだ。
おっさんは不思議そうに、俺をみて『お前もそぉやって飲むのか…私だけだと思っていた…』と呟いた。一般的な飲み方は違うのかよ…と言いたいのを我慢した。
『で???お前さんの名前は???』といきなり質問が始まった。
俺は嘘偽り無く答えた。『えっと、山岡高貴です。』
オッサンは少し眉間に皺を寄せ、『高貴・山岡君ね。』とうっとうしそうに言い直し、立て続けに何処に住んでるの??と言う質問をして来た。
『住所は栄に住んでいます。愛知県名古屋市栄です。』と俺は丁寧に答えた。
『はぁ…ちょっと頼むよ…真剣に答えてくれないかな…』と隆二・岡野は頭をボリボリ掻きながら呆れたように言った。
と、その時さっきまでダルそうにしていた隆二・岡野が何かに気づいたかのように、目をパッチリと開けて俺の方を見直した。
『お…お前…もしかして過去か未来から来たのか…???』と少々自信なさそうに訊いてきた。
俺は少し躊躇したが『このカレンダーが正だとすると僕は500年近く前から来た事になります。』と自分の夢に何真剣に答えているんだ俺は…と心の中で恥ずかしく思い反省した。
『ご…ごひゃくねん!!?』隆二・岡野の声は裏返っていた。
内心かなり笑えた。椅子から落ちそうなくらい驚きアワワアワワと回りをキョロキョロと見て動転しているのだ。
そりゃそうだろう。500年前の人物と言ったら俺達の年数西暦2007年から考えて1500年くらいの人物に出くわした事になる。
安土桃山時代…いや戦国時代か…最近の日本史の授業でならったとこだ。
今日の夢は面白い。とニヤニヤと一人笑っていると、隆二・岡野が『本物の異次元人…初めてみた…夢でも見ているみたいだ…』と途切れ途切れに言った。
顔をブルブルと横に振り、こんなに露出しているにも関わらず汗だくの表情で俺に話しかけてきた。
『お前さん…思ったより落ち着いているな…混乱してないのか???』と隆二・岡野は椅子の上で正座し、腕を何度も組みなおして落ち着かない様子だった。
『これは僕の夢なんで…その内起きるはずです』と俺は爽やかに言った。
隆二・岡野は考え込むように下を向き、何度も組みなおしていた腕をほどいて、眉間を人差し指と親指でつまんで少しの間黙り込んだ。
『コレは夢ではないぞ…』と人間の顔と思えないほどの形相で真剣に言い放った。
『いやいや、夢ですよ。』と俺はめんどくさそうに答えると、隆二・岡野は真剣な表情のまま話始めた。
『実は異次元から来た人はお前さんが初めてではないんだ。10年に一度くらいの周期で突然沸いたように現れるそうなんだ。この時代2507年を基準としての過去人、未来人の異次元人がな。初めて現れたのは今から100年くらい前の話らしい。』
『2400年くらいだ。初めてやってきたのは50年後くらいの未来人だったらしい。その人は研究のため体をばらばらに分解され再生されを繰り返されたのち、何年にもわたって監禁されたと言う話をおれは聞いたことがある。』
『その後、10年周期くらいに世界のどこかで異次元人が発見されたと言う事を聞かされたんだ…今までにお前さんを覗いて計9人が見つかっているんだ。10年くらい前かな、俺が丁度二十歳くらいの時だ。』
『インペリルと言う国で恐らく100年前の人間と思われる人が発見されたのだ。過去最高の異次元記録だったっと世界中で騒いでいた。ここ50年くらいは異次元人の研究などは最初の身体検査だけになっていたんだ。』
『何らかの病原菌をもっているかをチェックする程度のね。それで、持って居なかったらそのままこっちの世界で生活してもらう。もっていたらワクチンを打ってもらってからこっちの世界で生活してもらう。まだその人たちの世界に戻す方法が見つかっていなくてね…』
『しかし…』と話を続けようとして隆二・岡野は頭をポリポリ掻きだし言い辛そうな上目遣いで俺を見てきので俺は『しかし??』と訊きなおした。
『研究材料にされたんだよ…』と隆二・岡野はもごもごと小さい声で言った。『ふーん。そうですか。』と俺は腕を組み天井を見上げながら応答した。
『きっとお前さんも…』と隆二・岡野が目をギュっと閉じながら言うのがかなりスローモーションに俺には見えた。俺の頭はクエッションマークが飛び交っていた。
『今は夢と思っているかも知れんが2〜3日したらコレが現実なんだと思い知らされる。一先ず私の家に来ないか??詳しい事は家でゆっくり話そう。』隆二・岡野は何故か分からないが俺を家に招待すると言い出した。
『へ!!?』俺はなんとも情けない声を上げた。
有無言わさず、俺の手を引き隆二・岡野の家へと連れて行かれた。