『僕の女神を求め…』
後日…俺は早速美咲さんを僕らのヒーラーを勤めてもらうべくお誘いを申し入れる事にした。そう、The Continuance Of Dreamというゲームを一緒にしませんか!?と言うお誘いだ。
皆さんはどうかしらんが、俺は今までの人生でゲームを一緒にしませんかと女の子を誘った事が無く、どう声をかければ良いのか迷っていた。
【美咲さん!!子豚の家で一緒にゲームしません!?長編RPGっすよ!!!】…苦笑され可愛らしい声で【遠慮しときます(汗)】と言われるに違いない…
じゃぁこれか!?【美咲さん!!今子豚の家で勉強会してるんですけど、美咲さんも一緒にどうっすか!?】…これなら来てくれそうだが、勉強が終わり次第帰宅も考えられるな…
ココは単刀直入に…【美咲さん、僕達…いえ、僕の傷を癒してくれる女神になってもらえませんか!?】…【ええ、勿論♪私はいつだって高貴君の女神ですわ♪】…ぐふふふ♪でへへへへ♪もしコレがOKなら…『って言えるかぁ!!!!!変体か俺は…』
『十分変体だと思いますよ…』
『こ…子豚…変体とは失敬な!!』
『ですけど、教室の角で…ニヤニヤしたと思ったら険しい表情になったり…ブツブツと呪文でも唱えていたんですか!???』
『うっ…』どうやら俺が美咲さんへのアプローチを考えている姿を見られてしまっていたらしい…よりによって子豚に…
『ほら…皆も引いてますよ…』
『なに!!!?』…教室を見回すと女の子グループがこちらを見てクスクスと笑っているでは無いか…一人一人の顔を繊細にチェックし美咲さんではない事と美咲さんのお友達さんでは無い事を確認し、ほっと一安心した。
『この調子ですとまだ美咲さんを誘えてないんですよね…』…『うるへーほっとけ…』
『高貴君に任せていたらあのゲームが一生できない気がしてきましたよ…』…『グサ…そッそんな事…みなまで言わないでくれ…』
『まぁ安心してください、美咲さんなら僕が先ほど誘っておきました♪』…『そうか…って!!!え!?!?』…こいつは何を言っているのだ!?!
『だから、美咲さんはもう僕が誘ったので高貴君が誘う必要は無いと言ったんですよ。』
なに!!…こやつ!!!できる!!!じゃなくて…美咲さんを誘っただと!!?何でこいつは後先考えず行動してしまうんだ!!…断られたらと言う事を少しは考えてくれよ…
大体こんなヲタクの教科書みたいな、なりの気色の悪い生命体にお誘いを受けてOKをする女性が何処に居るって言うんだ…おまけにゲームを一緒にしませんか!?!…だぞ!?
無い!!無い!!無い!!無い!!ありえない!!
俺はキリッっと子豚を睨めつけた。
『高貴君。聞こえてますよ…ブツブツブツとさっきから…気色の悪い生命体で悪かったですね…』
…『あ…いや…その…いきなりゲームを誘ったりしたら気持ち悪いって思われるかもしれないな…ってさ!!!子豚は俺の大切なダチだしさ子豚が嫌われるのは俺も辛いんだよ…』…俺と子豚…どっちが気色の悪い生命体なのかわかりゃしないな…
『そんな心配結構です!!!それにさっきの言い方はそう言う風に聞こえませんでしたが…まぁ良いでしょう。ちなみに美咲さんはOKしてくれましたので、今日の学校が終わったら3人で僕の家で遊ぶ事にしておきました。』
『へ??』…予想外の展開に思わず変な裏声を出してしまった。
『だからぁ…今日の放課後に…』
『マジか!!!?』
『何がです??…』
『だから、マジで美咲さんはOKしたのか!?』
『マジです。ちゃんと聞こえてるんじゃないですか…』
『ホントにホントか!?!?』
『本当に本当です。』
『ホントにホントにホントか??』
『本当に本当に…ってクドイ!!!!』
『うっしゃ!!!』…あぁ…何故神はこうも僕の味方をしてくれるのですか???…まさか偉大なるゴッド様も僕の恋の応援を???…ありがとうございます。貴方様のご期待に応えるべく日々精進します。
『あ…言い忘れましたが、流石にテストが近いのでずっとゲームして遊ぶとわけにはいかないようです。』
『ン?!…どうゆう事だ!?!?』…子豚は俺の妄想ワールドを打ち砕いて話かけてきた。
『高貴君は僕と美咲さんの勉強を見て、そのあと遊ぶのです!!』
『まぁ良いが…一つ質問して良いか???』…『えぇ、どうぞ。』
『美咲さんは大歓迎だが、何故俺はお前の勉強まで見なきゃならんのだ???』…『あ…そうですよね、高貴君にとって僕を教える必要は全くありませんよね。じゃぁ僕一人で勉強しますので、美咲さんには先ほどのお誘いをキャンセルしてきます。』
『子豚ちゃぁぁん♪そういう意味で言ったんじゃないでしょ♪子豚は賢いから俺が勉強を見る必要があるのかしら!?と思っただけですよ!!』…『そ…そうだったんですか…僕はてっきり邪魔者扱いされているのかと…』…子豚は賢いと言う言葉に敏感に反応し、照れくさそうに謝罪した。
っけ。御名答だったんだがな。こんな事で美咲さんとの勉強会及びゲームデートをおじゃんにされてたまるか…差し詰めこいつには好きな子が居るようだし、俺が美咲さんに好意を持っている事も知っている、流石にYK…おっとコレはソロソロ古いな…空気が読めなさ過ぎるこいつでも俺と美咲さんの邪魔だけはしないだろう…
子豚とThe Continuance Of Dreamってどんな感じのゲームなんだろうな???と想像に身を任せて話していると「キーンッコーンカーンコーン」メンドクサイ授業が開始した。
よりによって数学だ…いや、こりゃ算数だ。
今日の授業の内容は三角形の面積の求め方…こんなくだらない事より、【三角関係の恋愛の解き方】をおしえてほしいね。
しかしまぁ、くだらないとはいえ男女共同授業…一生懸命勉強してらっしゃる美咲さんを誰にもじゃまされず見学できるのは、俺にとって幸せな時間の一つだった。
彼女にとってはそんなに難しい問題なのか、たまに悩んで頭を掻く仕草がたまらなく美しい。
こうやって長時間にわたって見つめていると…ほら。向こうも俺の視線に気付いて俺の方を振り返る。俺はニッコリ笑って手を振った。
高貴!!!高貴よ!!!…俺の中の善良な高貴が俺に話しかけてきた。
手を振ったじゃねぇよ。完全にストーキング行為ではないか…変体を通り越してこれは犯罪だぞ。
お前が…いや俺が…いやお前か??…いや俺だろ。まぁどっちでも良い、高貴と言う人間が美咲さんの事を好きな事は俺自身自分の事の様に分かるが、このままだと嫌われてしまうぞ。ジロジロと見られて気分の良い子なんてそうそう居ないのだからな。
あ…あぶない。俺は善良な俺の意見を聞かなかったら危なく犯罪者になる所だった…
こうして、くだらない授業をくだらない妄想によって終業を向かえるのはいつもの事だった。
授業が終わると子豚がこっちに来た。
『また授業中、美咲さんを見てたでしょ〜…全く…』…っけ、バレバレか…ってお前は授業中にも俺の方を見てたのか!!?…気持ちが悪く体中に寒気が走った。
『あぁ。気をつけるよ…お前も俺の観察してる暇があったら勉強しろよな…。』
『しッ失敬な!!僕にはそんな趣味ありません!!たまたまチラッと見たら高貴君が美咲さんの方を見ながらニヤニヤとしてたので【友・達】として注意したまでです。』…『さよか…』
『ところでお前、良く美咲さんをゲームに誘えたな???…まさかお金を上げたりしてねぇよな!?』
『はぁ!?…あのですね。それは僕だけでなく美咲さんにも失礼ですよ。貴方が一番ご存知でしょうに、美咲さんがお金で動くような子でないと。』
『…忝い…』…俺は子豚の発言に胸打たれ、愚かな自分を呪った。
『まぁ誘うのは意外と簡単でしたよ。単純に僕と高貴君と美咲さんの三人でThe Continuance Of DreamというRPGゲームを一緒にやりません!?…と率直に聞いただけです。』
『でも…それで良く断られなかったな。』
『えぇ。まぁ。実は…前に僕の家で美咲さんを含めて3人でお祝いをした日があったでしょ??』…『うむ。』
『あの次の日に美咲さんから今度は三人でRPGをやってみたいと聞いたもので…それで昨日ゲームの説明を聞いている時に3人1組と聞いて美咲さんを誘ってあげようと思ったんですよ♪』人差し指を立てながら名探偵が犯人を暴く時に様に子豚は自信ありげに言った。
『ふ〜ん。って事は美咲さんもやりたがってのか…』
『まぁ僕が思うに彼女は相当ゲマーニですよ。でもそれを隠してバレナイ用に生活している。まぁ女の子がゲマーニってのは響きがあんまり宜しくないですからね…』…頷きながらとりあえずゲマーニとはなんぞや??と俺は子豚に聞いた。
え!?そんな言葉も知らないんですか!?とまるで原始人でも見るかのような目…と言っても原始人を見ている人の目を見た事が無いからそんな事は言えんな。まぁ子豚はかなり驚いて突っ込んできたわけだ。
ゲマーニとはゲームマニアの事らしい。何となく言われれば分かるがどうしてゲーマニでは無いのだろうか…まぁ要するに彼女はゲーマーと言うわけだ。これで要約、話が繋がった気がした。
俺は、まだかまだかと溜まりに溜まったストレスをを本能的に解消しようしているのか、震度1弱の貧乏揺すりをし、ニ時間目、三時間目、四時間目…昼食…とひたすら放課後の楽しみを待ちわびた。
そして、長い長い待ち時間に終止符を撃つ鐘の音。キーンコーンカーンコーンが鳴った。
『よっしゃ!!』