サラちゃんのお願いを聞いてもらおうのコーナー!
「この私、サラちゃんのお願いを聞いてもらおうのコーナー!」
おい、急にどうした。
今日は妹とゲームをしようの時間のはずなんだけど。
「わたし、サラちゃんさまのこと知りたい!」
めっちゃ乗り気だな妹よ。
まぁ妹が乗り気なら俺も乗っかるしかないんだけどな。
「皆さんご存知、私は大天使です。しかも可愛い」
自分で言うな自分で。
「ですので、まず1日3食はお願いします」
「お兄ちゃん! 1日3食だよ!」
「……はぁ、仕方ねえな」
「あと、わざわざ私がこうして瑛太さんのサポートをしてあげてるので、お小遣いの方も要求します!」
「図々しいな本当!」
「お兄ちゃん! お小遣いだよ!」
「え、えぇ……」
ミカタ……ドコ……。
「ちなみに、お小遣いはお金じゃなくて、瑛太さんの唇で支払ってもらいます」
よし、お小遣いあげちゃう。
「お兄ちゃん! 唇で……ってそれはダメー!」
ダメじゃない! お兄ちゃん許可します!
「えへへ、冗談ですよ。お小遣いもいりませんよ」
なんだ冗談かよ。
あー、ホッとしたわー。よかったよかった。あー、本当によかった。
「でもタダでやるのはモチベーションの問題もあるので、なにか報酬がほしいです」
「報酬? なにが欲しいんだよ」
あんまり高いのはやめてくれよ。
「うーん、そうですねえ、もし瑛太さんに彼女ができたら私のお願いを1つ聞いてもらうって事で良いですか?」
「お願い? まぁ俺ができる範囲でならな」
「お、言いましたね。天使との約束は破ることがない強制力が働きます。今の言葉はもう私の耳に入りましたのでこれで絶対に守ってもらいますからね」
「お、おう」
うわうわ、なんか急に饒舌になってどうしたおい。
てか、なんだ強制力って。天界って約束ごとにはうるさい世界なのか?
まぁ俺の出来る範囲ならって言ったからそう大事になることは無いと思うけど。
つっても、俺に彼女ができたらの話だけどな!
「お兄ちゃん、本当に彼女作るの?」
「……まぁな。これを逃したら一生出来ないって言われてるし、それに俺自身彼女が欲しいって気持ちが強い」
「そう……なんだ……」
ん? 心なしか妹の元気がなくなってるような……。
「……」
急に黙りだすサラ。
見た感じ、何か考え事をしているようにも見える。
「どうしたサラ」
「……いえ、別に……って瑛太さん! 今私の名前呼びましたね!」
「え? あ、あぁ呼んだけどそれがなんだよ」
「いやぁ、やっと名前で呼んでくれたので、すこし嬉しくなっちゃって。えへへ」
「うっ……」
な、なんだよ、普通に名前読んだだけじゃねえか。
照れるだろなんか。
だが俺の照れなど気にもせず、サラはテレビの近くに寄って行ってた。
「えへへ。あ、これなんですか! この黒い箱は天界でも見たことないですよ!」
黒い箱? うちにそんなものあったっけ?
「サラちゃんさま。これはプレイヌテーション4って言って人間界で今流行りのテレビゲーム機なんですよ」
なんだ、プレヌテのことか。
そういえば今日は妹とこれ使って対戦するんだった。
「えぇ!? プレイヌテーションって4まで出てたんですか!」
「ま、まぁ出てるけど、その反応をするってことは、天界にもプレヌテがあったのか?」
「はい! 私も暇なときはいつも家でプレヌテしてましたよ。でも天界のプレヌテは3どころか2も出てませんよ。人間界は進んでるんですね!」
天界のプレヌテは遅れてるんですね。
なんでプレヌテが天界にあるのかはあえて聞かないでおこう。
「じゃあ、遊んでみるか?」
そう言うと、サラの顔が今までにないくらいパッと輝いていた。
比喩とかじゃなく、本当に輝いている。
「え、いいんですか!?」
「あ、あぁ。妹が許可すればな?」
俺だけのプレヌテじゃねえからな。妹が嫌だといえばコイツがいくらぐずろうが俺は許可しない。
「うっ……み、未央さん……ダメ……でしょうか?」
うっわ……。
天使が俺の妹にまた上目遣い使ってらぁ。
その姿はまさに餌を求める子犬だ。
「そ、そんなに見つめなくても、どんどん使っていいですよ。そこの棚にソフトが全部入ってますので」
妹の許可にサラの表情は、これ以上ない眩しさを放っていた。
てか本当に眩しい。
「あ、ありがとうございます! で、では一緒に何かやりましょう!」
「は、はひぃ……」
サラさん。ことあるごとに妹に抱きつくのをどうにかならないのでしょうか。あなたのハグは人をダメにしちゃうんですよ。
「それでは、どれどれ……」
早速サラが棚にあるソフトを物色し始める。
てか、天使って一体何のゲームをするんだ。
俺の予想としてはあれだな、王道なドラゴンクエヌトあたりがやっぱ天使の心をくすぐるんじゃないか?
「こ、これは!?」
お、なにか見つけたみたいだな。
「ヌトリートファイター……Ⅴまで出てたんですね……」
ほう、それを知っているのか。
近くの人と遠くの人、知ってる人と知らない人。最大2人でバチバチの戦いを繰り広げる対戦格闘ゲーム。それがヌトリートファイター。
この俺もこのゲームにはすごくどハマりしている。そしてもちろん、
「サラちゃんさま、ヌトリートファイターをご存知なんですね」
この妹も、それは同じことだ。
「はい! 天界にあるのは2までですけど、この私も天界一武闘会で優勝経験があるほど、これには思い出がありますので」
「……へぇ……」
はは、やっぱり妹もたぎってきたか。
「? どうしたんですか2人とも」
「いえ……」
「いや……」
「……なるほど、瑛太さんそういうことですか」
まぁ、そういうことだ。
悪いがサラよ、俺たち兄妹はこのゲームをかなりやりこんでいる。
そこらの大会なら軽く優勝できるほどにな。
「では、Ⅴにまで進化したこのゲーム、ぜひ2人に教えていただきたいですね」
「あぁ、いいだろう。妹もいいよな?」
「構わないよ。ちなみにわたし――――手加減とかできないから」
いまこの場に3人の格闘家が集まった。
もう、言葉なんて要らなかった。ここから先は拳だけの世界だ。