表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/38

最高の目覚め

 なんとも気分の悪い朝だ。

 目が覚めた俺は、どうにも体が重く動けないでいる。


「はぁ、なんとも不思議な夢だったな」


 さっきまで見てた夢を、俺ははっきりと覚えている。

 その、なんというか、かなり胡散臭い夢だった。新手の詐欺なのかと思ってしまうほどにな。

 まぁなんでもいい。夢は夢だ。顔でも洗ってリフレッシュしてこよう。


「んっ♡……あっ♡……」

「……」


 俺じゃないどこかいやらしい声が、胸の辺りから聞こえてくる。

 掛けてるタオルケットが不自然に膨らんでいる。これはいったい……。

 それにどうにも体が重い。これは疲れから来てるものだと思っていたんだが、どうやらそうじゃない。

 起き上がろうにも、お腹に何かやわらかい2つの何かが押し付けられ、俺に動くことを許可しなかった。


「んっ♡」


 無理に動こうとすると、謎のハートマークつきの声の主が、俺に抱きついてきたのか、動くことが難しくなる。

 これはあれだな。久しぶりに妹が甘えにベッドに進入してきちゃったんだなこれ。

 本当に甘えん坊さんなんだから。

 …………俺、思ったんだけど妹って俺に押し付けるほどのやわらかいものってありましたっけ?


「……捲るか」


 そろそろ正体を見せてもらおうか。

 ……チラッと見ようか。いきなりばっと捲るんじゃなくて、こうチラッとね。

 よし、そうと決まれば行くぞ!

 ……チラッ……。


「スー……スー……」

「……」


 ……白髪の美少女だった。最近どっかで見たアイツが俺の胸の上で寝息をたてていた。


「まじかぁ……」


 自分でも驚くほどの冷静さだ。やっぱ心のどこかで察してたってことなんだろうか。

 あれは確かに夢であったが、現実を感じられる部分もあった。今こうしてあの夢を夢として感じてない俺がその証拠だ。

 まだ受け入れられない部分もあるが、それはまた後でいいだろう。


 問題はもう1個ある。いやもう、俺に抱きついてること自体が問題なんだがさらに上の問題があるんだ。

 コイツ、全裸だ。

 さっきチラッと見たときに何も着ていないのが確認できた。

 思春期真っ最中の俺にはかなりきつい。特に股間が。

 この全裸、一体どうしようか。


 トコトコトコ――。

 ……やべえ、妹だ。このトコトコ音、もうすぐ俺を起こしに来るぞ!

 どどどどどうしよう!


「お兄ちゃーん、おはよー!」


 扉をバーンっと開けて妹が入ってくる。


「あ、あぁ、おはよう」

「うん? うん、おはようだよ」


 くっそ、ノープランだ。今から考えろ俺。

この状況をうまくごまかす方法は必ずどこかに――、

 モゾモゾ。


「あれ? お兄ちゃんの、何か動いてるね」

「……気のせいじゃねえかな」


 オイイイイイイイイイイイイ! なにモゾモゾ動いてんだてめえ。あと、ちょっとくすぐったいんだよ。

 いや、ま、まだ大丈夫だ。俺が不自然に動かしてる風に誤魔化せば問題ない。


「そうかな。でもお兄ちゃんのそれ、いつもより膨らんでるよ」

「……いつもこんな感じじゃなかったっけかな」


 膨らみも問題ない。お兄ちゃん力が高ければこれくらい誤魔化すのは簡単だ。

 てかいつもよりってなんだよ。いつもはちょっと膨らんでんのか?

 まぁいいさ。今は妹に先にリビングに行ってもらって――、


「…………ねぇお兄ちゃん」

「……はい、なんでしょうか」

「…………お兄ちゃんって、足4本だったっけ?」

「……」


 いやいや、流石にお兄ちゃんでも人間をやめない限り足は4本もないよ。

 だからね、このタオルケットからはみ出てる他の2つの足は、お兄ちゃんのじゃない別の誰かの足だね。うん。

 はい、言い逃れできませんねこれ。

 あ、やばい。今度は可愛らしい鬼の形相で俺を見下ろして立っているではないか。


「お前は……誰だっ!」


 バサッと俺のタオルケットが捲られる。

 まぁ、いますよ。例の白髪の美少女が俺に抱きついた形で寝てますよこれ。

 あー、女の子の体ってこんなにやわらかいんだな。

 なんか安心できちゃうといいますか、ずっとこのまま俺を抱きしめてもらいたいよね。


「お兄ちゃん……どういうこと……」


 うん、ぜんぜん安心できねえや。

 や、やばい。


「そ、それが俺にもよく分からないというか、朝気付いたらコイツが俺に抱きついてたといいますか。いや、マジで」

「じゃあ、この女は誰なの?」

「その、誰なのかと言いますと……天使?」


 う、嘘は言ってないぞ!

 元はといえば全裸で俺に抱きついて眠ってるコイツが悪いんだからな?


「天使って……お兄ちゃん、もっとマシな嘘を――」

「んっ、うーん……ふわああああ…………あ、瑛太さんおはようございます」


 あ、おはようございます。今日はよく眠れましたか?

 その、起きて早々申し訳ないんですけど、あなたが起き上がったせいで、もう全部見えちゃって――、


「お兄ちゃん見ちゃダメー!」

「え? ぎゃああああああああああああああああああああ」


 いっでええええええええええええええええ。め、目ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ。

 ちょっと裸見ただけじゃねえか! そこまでしなくたっていいじゃんか。

目潰しはやりすぎだよぅ……ふぇぇ……。


「ねぇ、あなたはお兄ちゃんの何なの!」

「ん? 瑛太さんのですか?」

「うん」


 おい、俺は無視かよ。

 ここにベッドから転げ落ち、目を押さえて悶えてるおもしろ被害者がいるんだぞ。


「んー、そうですね。瑛太さんとは――」


 ぐぎゅるるるるるる。


「……あ、えへへ。すみません、お腹すいちゃいました。えへへ」


 今の音コイツのかよ。

 お腹の空く音とかはじめて聞いたわ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ