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両手に全裸、向かいに幼馴染

 あれから1日経過して月曜日。

 窓から差し込む朝の日差しが、憂鬱な俺にとっては10倍まぶしく感じる。

 そう、月曜日の朝はとても憂鬱なんだ。みんなも分かるだろ?

 だからといって、起きない理由にはならない、俺には朝食の準備という使命が課せられてるんだ。

 最近1人増えたし、手間も1人分増えて大変なんですよもう。


「さて……ん?」


 起き上がろうにも、どうにも体が重い。

 ……またか。またこのパターンか。

 朝なにかないと起きられないのか俺は。

 はぁ、仕方ねえ。

 ……チラッ……。


「スー……スー……」

「ヌー……ヌー……」

「……」


 はい、いましたよ。

 タオルケット取ると、スースー寝息をたてるサラと、ヌーヌーと謎の寝息をたてる妹に全裸で抱きしめられてますよ。

 ……いや待て妹よ、君までなぜそこにいるんだ。あと、なんで全裸なんだ。

 もうやめてくれよ。青少年に優しい朝で頼むよ本当。

 こんなとこ他の誰かに見つかってみろよ。両手に全裸だぜ?

 誤解もくそもないんだからマジで。


 コンコンコン――。

 ……誰かが俺の扉をノックしている……。


「……えいちゃん……起きてる……?」


 ふうちゃんだ……。

 なんてことだ。今一番見られてはいけない幼馴染ナンバーワンがそこにいるぞ。

 どうする、どうするよ!


「うーん……あ、瑛太さんおはようございます」


 はい、おはようございます。


「うーん……お兄ちゃんおはよう……」


 はい、おはようございます。

 ガチャリ――。


「……えいちゃん……随分いい目覚めだね……」


 はい、もうここまでいくと1周回って清清しい朝に感じますよ。

 こんちきしょー。



「ふうかちゃん、えーっとね、その、なんていうか、なんでお兄ちゃんのベッドの中にいたのかはね――」

「……べつに気にしてない……兄妹だから、普通のこと……」


 と言いつつも、俺に朝食を作らせた後こうしてロープでグルグル巻きに縛り上げちゃってるのどうしてなんでしょうかね。絶対気にしてますよね?


「気にしてない……」

「んっー!」


 ちゃっかりエスパーも発動しちゃって。天使かアンタは。

 また口がガムテープで塞がれて、言い訳も弁明も出来ないのもどうにかして欲しいんですけど。これも2回目だぞ。

 これのテンプレ化だけはやめろよマジで。


「瑛太さんの朝食は相変わらずおいしいですね。えへへ」

「……」


 うわ、ふうちゃん、めっちゃ睨んでるじゃん。

 喧嘩だけはやめてくれよ。


「……あなた……だれ……?」

「私ですか? 私はサラちゃんですよ」

「……そう……」

「……」

「……」


 ……こういう空気にもなるわ。

 もっと会話しろ。話すこといろいろあるだろ。

 例えば「……あなたは……えいちゃんのなに……?」みたいな核心に迫る質問とかあるでしょ。


「……えいちゃん……そろそろ出ないと学校に遅れちゃう……」


 え、もうそんな時間?

 なら早く着替えて準備しないと。


「んっー! んっー!」


 あのー、すみません。この体を縛るロープとガムテープのほうを外してはもらえませんでしょうか。

 学校に遅刻してしまいます。


「……外で待ってる……」


 ま、待って! 置いてかないで!

 ……行っちまった。

 マジか。俺をグルグル巻きに放置して行っちゃったよ……。

 くっそー、こうなったら――、


「んっー! んっー! んっー! んっー!」

 (訳:おーい、妹よー、ついでにサラー、このロープとガムテープを外してくれー)

「ふむふむ」

「サラちゃん、お兄ちゃんなんて言ってるの?」


 サラには俺がなに言ってるのかは通じてるはずだ。

 頼むぞ、おふざけだけはやめてくれよ。付き合ってやれる暇はないんだから。


「……ここは俺に任せて先に行けって言ってます」


 言ってねえよ! 

 この状況をどう見たらそんなかっこいいセリフ言えるんだよ。

 その目、腐ってんだろ。一度洗浄してもらったほうがいいぞ。


「お、お兄ちゃん……」


 違うんだ妹よ。コイツの言ったことは全てでたらめだ。

 だからそんなお兄ちゃんを哀れむような目で見ないでくれ。


「行きましょ未央さん。瑛太さんの覚悟を無駄にしてはいけません」

「う、うん!」

「んんっー!」


 ちょ、ちょっとー!

 地面で、グルグル巻きで見捨てられる俺になんの覚悟があるというんですか。

 てか妹さん、あなたはそっち側に立っちゃダメだと思うんですけど。

 ……行っちまった


「……」


 そして誰もいなくなった。



「はぁ、もう疲れた」


 あれから戻ってきてくれた妹にロープを解いてもらい、今はもう制服を着衣完了したとこだ。

 外にふうちゃんを待たせているので、急いで荷物を持って玄関まで足を進める。

 だが玄関に着くと、目玉が飛び出すほどビックリな光景がそこにあった。


「「あ、瑛太さん!」」


 ……どういうことだ。

 サラが……2人いるんだが……。

 しかもこの2人、瓜二つのようでそうでもない。

 片方は、なぜか俺の通う文橋高校の制服を着ており、もう片方はジャージを着たいつものサラだが、身長が妹ぐらいにまで縮んでいた。

 俺の知らないとこで何が起きたんだ……。


「……えいちゃん……これ、どうなってるの……」

「お、お兄ちゃん……サ、サラちゃんが……」


 このビックリ光景に、妹とふうちゃんが俺に対してヘルプを求めていた。

 特にふうちゃんは、尋常じゃないほど目がギョッとなっていた。もうメガネから飛び出してきそうな勢いがある。

 妹のほうは驚いてるというより、かなり好奇な目でちっちゃいほうのサラを観察していた。そして観察するだけじゃ飽き足らず、顔や体などぺたぺた触っていき、次第にはギュッと抱きついていた。


「えへへ、どうです瑛太さん。これぞまさにジャパニーズ分身の術です」

「……なぜ分身の術を使ったのでござるか?」

「なぜって、瑛太さんと未央さん、両方の傍にいたいからですよ」

「それで、分身か……」

「いえ、正確には分裂ですね。どちらも本物の私ですので」


 ……本当天使って何でもありなんだな。改めて実感させられたよ。

 コイツの天使要素とか羽だけだと思ってたからさ。じゃあ、分裂は天使の要素があるのかと言われれば、うーんって感じだけど。

 もっとこう、ファンタジーな感じのやつが欲しいよな。


「……ってやべっ! もう8時じゃん。妹よ、お兄ちゃん学校に行ってくるわ」

「うん、行ってらっしゃい、お兄ちゃん、ふうちゃん、サラちゃん」


 未だ呆然と立ち尽くすふうちゃんの手を引っ張り、強制的にいつもの日常の道に戻す。

 ……うん? いまの行ってらっしゃいにサラの名前があったのは気のせいかな?


「それでは行きましょー。瑛太さん!」


 気のせいじゃなかったようです。

 やっぱり来るのか……。まぁ、どこかでコイツ学校にも来るんだろうなぁとは思ってはいたよ。

 でも、その制服はただのコスプレであって欲しかったよ。


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