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「うん」
「うん」
けんや君はそのまま山を降りて行った。
けんや君の背中を見送った後、みゆきは何事もなかったかのように再び歩き始めた。
私は言った。
「待って、ちょっと休まない」
「いいけど。できたらさっさと探したいんだけど」
「いいじゃないの。あの男がいたとしたら、どこかにいなくなったりしないわよ。慌てる必要なんてないんだから。いいでしょ。休みましょうよ」
「まあ、それもそうね」
みゆきはその場に腰を下ろし、バックから紙パックのジュースを取り出して飲み始めた。
私もそれに習う。
私は空を見上げた。
とは言っても、高い木々に覆い尽くされて、空はほとんど見えなかった。
時間の感覚がおかしくなるほどに、周りは薄暗かった。
それに冬までまだまだだと言うのに、寒い。
真冬のような寒さだ。それも急に寒くなった。
それまでも平地に比べて涼しいとは思っていたのだが、そんなものではない。
明らかに急激に温度が下がっているのだ。
「なにこれ。急に寒くなったわ」
私が思っていたことを、みゆきが口にした。




