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それが近づいてくるのがわかった。
みゆきは動かなかった。
私も動かなかった。
その音がさらに近づいて来た時、その音の主が姿を現した。
それはシルエットしか見えなかったが、間違いなく人間だ。
その体は小さかった。
体つきといい、どうやら子供のようだ。
張り詰めていた身の硬直が、一気に溶けた。
影は私たちの前に立ち、言った。
「みゆきちゃんとひとみちゃんじゃないか」
まだシルエットのままでその姿はよく見えなかったが、その声は同じクラスのけんや君のものだった。
みゆきが言った。
「けんや君、こんな所でなにしてるの?」
「僕はただぶらぶらしてるだけだよ。ついでにあの男を見つけてやろうとも思っているけどね」
「けんや君は、あの男がいると思ってるの?」
「それはわからないよ。探してみていなかったら、いない。いたら、いる。それだけだと思って、朝からこのあたりをうろうろしてるんだ」
「そう」
「そっちは何してんの?」
「ただ歩いているだけよ。暇つぶしにね」
「そうなんだ……。それじゃあもう行くよ。またね」




