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村人の成り上がり英雄譚  作者: ポテサラ
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絶望と悲しみの中で

リクは、マナと暮らしてきた家にいた。マナが親友に会いに行くと言って出て行ってからすでに1日が過ぎていた。

「師匠遅いなー」

日が暮れあたりが真っ暗になっていた。すると、コンコンと扉がノックされた音がした。人の気配を感じ取っていたリクは、警戒し慎重に扉を開けた。扉の前にはボロボロになったアリサがいた。

「あのあなたは…」

リクがアリサに誰なのか聞こうとした時。

「あなたがリク君?」

アリサがそれを遮り興奮気味に聞く。

「確かにボクはリクですが、あなたは誰ですか?」

リクは戸惑っていた。

「ごめんなさい。我を忘れてたわ。私はアリサ、アリサ=クエルン。マナの親友よ。」

「師匠の親友?ボクはリク=クレリアです。ごめんなさい、師匠はまだ帰ってきてなくて。」

リクは寂しそうにそう答えた。

「リク君、落ち着いてよく聞いて…」

アリサはマナが自分に会いに村に来てからのことを真剣に言いました。リクは全てを聞き終わると、家を飛び出して村へと向かった。

「リク君!」

アリサもリクの後を追いかけ村へと向かった。外は雨が降り始めていた。アリサはリクの姿が見えないほど離れていた。アリサが村に着くいた。

「嘘でしょ…」

アリサが見たのは村があった場所だった。そこにはドラゴンが燃やした村も、村人の亡骸も何もかもが消えていた。雨に打たれながらリクは何かの前に両膝をつき天を見上げていた。アリサはリクの前に転がっているのが何なのかわからなかった。リクにはそれが何なのか、誰のものなのか見間違えるはずがなかった。リクの前にあるものは“マナの杖”だった。マナは常に同じ杖を使っていた。かつてマナはリクにこの杖はオリジナルだと言っていた。だから、唯一無二のこの杖をリクが間違えるはずがない。リクは自問自答をしていた。

(大切なものをまた失った。どうして?)

(自分が弱いから。自分が愚かだから。)

(誰がやった?)

(魔獣。)

(だれのせいだ?)

(自分のせい。)

(嘘だ。やったのは魔獣、なら魔獣のせいだ。)

(魔獣は何だ?)

(敵だ。)

(敵は何だ?)

(ボクの、俺の邪魔をするものだ。)

((敵は殺す!))

リクは一度大切なものを失った時にすでに闇を抱えていた。そして、また大切なものを失った。リクが抱えていた闇は深まり、リクの中には復讐心と殺意、憎悪が渦巻いていた。今のリクを動かす全てだった。「リク君?」

アリサはリクに近づき、リクの顔を覗き込み恐怖した。リクはただ天を見上げていただけだった。涙を流さずただ天を見上げているだけに見えた。そんな姿を見ただけで、アリサはそんなリクになぜ恐怖しているのか自分でもわからなかった。その時、近くの森から魔獣が飛び出してアリサとリクへ襲いかかった。(近すぎる。対処できない。)

アリサは、魔獣に対処できないことを悟り、リクを庇うように被さろうとした。だがそこにリクの姿はなかった。

「邪魔だ。」

襲い掛かってきていた魔獣が一瞬にして弾け飛んだ。先まで魔獣がいたであろう位置にはリクが立っていた。アリサは何が起きたのか理解できなかった。リクは森に目をやった。リクは森の影にローブを羽織った何者かの姿が見えていた。ローブを着たものは、逃げようとするが振り向いたときすでにリクが後ろに立っていた。

「お前は何者だ?魔獣はなぜお前を無視していった。」

ローブを羽織った者は、リクに魔術を放った。だが、リクにそれが届くことはなかった。リクが、ローブを取る。

「お前、人間じゃないな。何者だ?」

ローブを取るとそこには、人間とそう変わりはないが人間にはないものがあった。角が二本生えていたのだ。

「人間と同じにするな。我は魔族だ。人間の分際で、弁えろ。」

魔族はリクを睨みつけた。

「黙れ。今お前を生かしているのは、情報を持っているかもしれないからだ。今すぐ殺してもいいんだぞ。」

リクは魔族の存在に興味がなかった。

「何が聞きたい?」

魔族はリクの殺気に怯えていた。

「ここにあった村を襲ったのはお前か?」

「違う!確かに魔族が襲ったのは事実だが、私ではない。」

「なら襲ったやつは今どこにいる?」

「わからない!ほんとだ、だから助けてくれ。」

「ならいい。」

リクは魔族に手を向ける。リクの手がひかり、魔術を放たれようとした。

「ダメ!」

アリサがリクの手を取っていた。放たれたようとしていた魔術は消えていた。魔族はその隙に走って逃げた。

「なぜ邪魔をした?魔族は村を襲った敵なんだぞ。」

リクはアリサを睨んだ。

「マナと約束したから。リク君あなたを支えるって。それにあのまま感情に流されてあの魔族を殺してたら、本当にマナの笑って話していたリク君が消えてしまうかもしれないって思ったから。」

アリサはマナとの約束を守ろうと懸命だった。

「師匠はもういない…」

バチーンと音が響いた。アリサがリクの頬を叩いたのだ。

「マナは約束したわ。絶対あなたのもとに帰るって。あなたのために帰るって。だから、マナは絶対帰ってくる。あなたがマナを信じないでどうするの!マナが帰ってくる場所はあなたなんだから、マナの好きなあなたのままでいて。親友との約束守らせてよ。」

アリサは泣いていた。

「なんであんたが泣いてんだよ。」リクの中に渦巻いていた、殺気や憎悪はすでに消えていた。リクはアリサの頭をポンポンと叩き、マナの杖のところまで行き、杖を拾った。雨はいつの間にか上がっていた。

「師匠…」

一言つぶやき、泣き止まぬアリサのもとまで戻った。

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