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村人の成り上がり英雄譚  作者: ポテサラ
5/21

動き出す刻

リクとマナが出会ってから4年が過ぎた。リクは9歳になりマナと初めて出会った頃よりも立派に大きく成長していた。リク自身強さに自信を持ち始めていた。そんなある日、マナは一人で少し離れた村に訪れていた。

「アリサ、久しぶり。」

マナの目の前には、赤髪を後ろで結んだ少女がいた。マナよりも少し大人びえて見える少女は、マナの親友の『アリサ=クエルン』。

「ほんと久しぶりだね。マナは変わらず小さいね。かわいい、かわいい。」

アリサはマナの頭をなでる。

「アリサ、喧嘩売ってる?その喧嘩買った。」

「ごめん、ごめん。いやぁーマナが全然変わらなくて癒されたよ。それに元気そうでよかったよ。」

「アリサも元気そうでなにより。アリサと同じ年。私も少しは大きくなった。」

「どこが大きくなったのさ?」

「胸?」

「なんで疑問形なのよ。」

マナとアリサはお互い笑いあい、久しぶりの再会をかみしめた。

「マナは今まで何やってたの?」

マナと5年ぶりに会ったアリサは、マナがその間何をしていたのか知らなかった。マナは、リクとの出会い、そして今までのことを嬉しそうに語った。

「マナに弟子ねー。それも男の子とはね。マナなら嫌がりそうなのに、こんなにも嬉しそうに語るなんて、その子のこと好きだったりするのかな。」

アリサは冗談半分でそんなことを言った。

「リクは特別。リクのことは好きだしこれからもリクの成長を見ていきたい。」

そんな冗談に真剣に答えるマナ。マナの幸せそうな顔をみて嬉しそうに見つめるアリサ。

「そっか、じゃあその子にはまだまだ頑張ってもらわないとね。」

「どうして?」

マナはアリサがなぜリクの成長を思っているのか疑問だった。

「それはもちろん、私の親友のマナが今こうして幸せそうにしてるんだもん。応援ぐらいしたくなるよ。」

アリサは満面の笑みで答えた。

「ありがとう、アリサ。」

マナは笑顔だった。

「もうこんな時間。マナはこれからどうする?」

日が傾き始めた頃、アリサがマナに問う。

「今日はアリサの顔を見に来ただけだから、帰ろうかな。それにリクが待ってる。」アリサは、キャーキャー言っていた。

「アリサまたね。」

マナはリクのもとへと帰るため、森に向かい始めた時。

「「グォォォー」」

村全体に響くような魔獣の声が聞こえた。

「っ!」

マナは上空にドラゴンの姿を見つけた。マナは村へと全力で駆けだした。

「マナ!待って!」

アリサもマナの後を追いかけ、村へといった。村に着いたマナとアリサが見た光景は、言葉では言い表せられないほどの惨劇だった。無抵抗な村人を次々と喰らう魔獣。空からはドラゴンが炎を吹き、村を焼き尽くす。

「グォォォー」

一匹の魔獣が立ち尽くしていたアリサへと襲いかかる。

「きゃー!」

アリサは死を覚悟した。だが、魔獣の牙がアリサに届くことはなかった。アリサに襲いかかった魔獣は、その場に肉片となり転がった。

「アリサ逃げて!」

マナは全力でそう叫んだ。

「私が全部引き付ける!だから、その隙に逃げて!」

マナはアリサだけでも助けたい。そう強く想い、そう叫ぶ。

「でも、マナは!弟子に、リク君に会わないといけないでしょ!リク君がマナの帰りを待っているんだよね!だったら、マナが逃げて!私が囮の役になる!」

アリサはマナの想いを拒む。

「私なら大丈夫。アリサを逃がした後、すぐに逃げるから。だから行って!リクのことお願い。リクは強いけどまだ子供だから、私の代わりに支えてあげて。でも、リクはあげないから。私が帰るまでだけ。」マナは笑顔でアリサに言う。

「こんな時に、何冗談言ってるのよ!私じゃマナの代わりになんてなれないよ!」

「大丈夫、私の代わりに支えてあげるだけでいいの。私になれなんて言ってない。リクは私のだから。もう時間がないの!早く行って!これは親友からの最期のお願い。」

アリサに向けるマナの顔は笑顔だった。

「っ!絶対約束だから!帰ってきてよ絶対に!」

アリサは涙を流しながらマナが作った道をかけていった。マナはアリサの最期の約束にうなずくこともできなかった。マナ自身、この状況から逃げれるとは思っていなかった。だが逃げることをあきらめたわけではなかった。

「絶対生き残ってリクに会う。」

一人残ったマナを魔獣が囲んでいた。数は数十、数百はいた。マナは自分のもつ最大の力を振り絞って、生きるために足搔いた。足搔いて足搔いて、足搔き続けた。マナの前にいた無数の魔獣が肉片となり、散らかっていた。マナは、村にいる魔獣を倒し切った。マナは力の使い過ぎで、その場に膝をつく。

「やった。これで生きてリクに…」

マナが希望を抱き始めたその時、マナの目の前にドラゴンが舞い降りた。

「これはダメかも。」

マナには、これ以上戦う力は残っていなかった。ドラゴンの手がマナへ迫りくる。

「最期にリクのあの笑顔が見たかったな。大好きなあの子の顔が見たかったな。」

マナは涙を流しながら、静かに目をつむった。




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