強くなるために（後編）
「主よ、最近よくここに来るな。また成長したか？でもまだ早い。吾輩が起きるにはまだ時が満ちていない。」
リクはその声には聞き覚えがあった。思い出そうとすると記憶に靄がかかりはっきりと思い出すことができない。
「キミは誰？」
リクは暗闇へと話しかける。
「主は知っているはずだ。きっと思い出す。嫌でも思い出すだろう。それまではまだ休ませてもらうよ。」
リクのまわりを光が包む。
「主は魔術に熱心みたいだから、吾輩から一つアドバイスをあげよう。魔術は現在あるものが全てとは限らない。なぜ、すでに完成しているものをその通りに覚えようとする？主よ、魔術の根端を知れば、もっと深く自分の魔術ができるようになるぞ。がんばれ主…」
光に包まれるリクへそんな声が聞こえてきた。リクはゆっくりと目を開ける。
「リク！」
目に涙を溜めたマナがリクを抱きしめる。
「ごめんなさい。リクならって甘えてた。」
リクもマナに甘えるように身を預けて答えた。
「師匠が謝ることなんてない。魔術を覚えてきて、ボクが調子にのってしまったんだよ。心配かけてごめんなさい。」
リクは自らの過ちをかみしめるように、そして強さの意味を深く理解した。今日の特訓はここまでとなった。
「リク、明日の特訓は休みにしよう。」
マナは食事をしながらそう言った。
「どうしてですか師匠！ボクが今日失敗したからですか？」
涙目でマナへ駆け寄った。
「違うよ。今日は魔力を使いすぎた。だから休息も必要。それと今日リクは失敗なんかしてない。今日のことでリクは学んだはず。それは立派な成果。休息って言ったけど、私はリクとゆっくり一日を過ごす日があってもいいと思う。だから明日、二人で近くの街へ行こう。」
マナは照れ臭そうにリクを誘った。リクも嬉しそうにそれに答えた。次の日リクとマナは、近くにある街『イクル』の中心街を歩いていた。
「師匠これは何ですか？」
「師匠あれすごいですよ！」
リクは初めて見る街に興奮していた。
「リク、はしゃぐのもいいけど、迷子にはならいで。私からは離れないで。」
リクはリクのはしゃぐ姿を愛おしく思い、優しく見守っていた。
「師匠、少しいいですか？」
リクは、街が一望できる高台に行き、マナを真剣に見る。
「師匠と出会ってから、いろいろありましたね。師匠との出会いはボクに希望を与えてくれました。師匠ってぼくにとって心の支えでもあったんですよ。師匠はボクにたくさんのことを教えてくれました。師匠の強さに救われました。師匠の優しさに救われました。そんな師匠なことがボクは大好きです。師匠、ボクにたくさんのことを教えてくれてありがとうございます！ボクと出会ってくれてありがとうございます！」
リクはこれまでの気持ちを全力でマナにぶつけた。
「私もリクと出会えてよかった。私こそありがとうだよ。」
涙を流しながらリクを強く強く抱きしめた。そんな二人を夕日が照らしていた。リクとマナはその日お互いのことを語った。リクとマナの絆はよりいっそ深まった。それからもリクとマナは特訓をし、休息の日は二人で過ごした。
