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村人の成り上がり英雄譚  作者: ポテサラ
16/21

敵は誰だ

(俺はまた助けられないのか。)

(力がほしい、今この状況を覆せる、アリサとシイ大切なものたちを守れる力が!)

リクは強く願った。

「主よ、時は満ちた。私を呼べ。私を使え。主の力を開放してやろう。私の名前を知っているはずだ。私の名前を呼ぶんだ。」

リクの耳に久しぶりに聞いた声が聞こえた。そして、頭の中にある人物の名前が浮かんだ。

「刹那!」

リクが叫ぶと、周囲の空気が一瞬で変わった。リクの目には周囲の状況がゆっくり動いているように見えた。リクはいつの間にか銀に輝く剣を手にしていた。リクに今そんなことを気にしている暇はなかった。リクは湧き出る力と自身に力が入ることを確認すると、アリサ達と火竜の間に一瞬で入り、近づく魔族とともに斬ろうと一閃を放った。魔族はその一閃を避けると元の場所へ戻った。火竜が放つ火はその一閃により消滅していた。

「リク君?」

アリサが不安そうにリクを見る。

「大丈夫だ。あとは任せろ。」

リクはアリサとシイに笑いかけると、二人ともその場に座り込んでしまった。

「よくもやってくれたな。ここからは反撃の開始とさせてもらうぞ。覚悟しろよ。」

リクはそういうと火竜に剣を向けて構えた。リクは一瞬で火竜の上空へ飛んだ。上空からリクは一閃を放ち、それに続き直接斬撃を行った。先ほどまで全く聞かなかった攻撃だが、今度は火竜をしっかりと切り刻んでいた。火竜についた剣撃の痕に直接魔術を放った。

「黒く燃えよ、黒炎!」

リクが叫ぶと、火竜の内側から黒い炎が侵食していき火竜は跡形もなく消滅してしまった。

「さぁ、次はお前だ魔族!」

リクは魔族へ鋭い視線を向けた。

「ッ!人間風情が調子にのるな!」

魔族はリクに一瞬怯えると、すぐにリクに魔術を放とうとする。だが、リクはその場にいなかった。リクは魔族の後ろに立っていた。リクは魔族を押し倒し剣を魔族の首筋にあてた。

「動くな、お前には聞きたいことがある。」

魔族は静かにうなずいた。

「このダンジョンはいったいいつからここにある?」

「二週間前からだ。」

「どうやって作った?」

「迷宮は魔族に与えられる特定の力によって作り出せる。魔族の力の強さによって、作れる迷宮は変わってくるが基本的な迷宮なら中級以上の魔族なら作り出すことができる。」

「この近くの村を襲ったのはお前か?」

「確かに私は襲った。だがそれは、人間との約束によるものだ!私は頼まれてやったんだ!」

リクはそれを聞くと、自分の耳を疑った。

(人間が頼んだ?じゃあ、村を魔獣が襲っているのは根本的には人間が原因?人間が俺たちの村を?人間が師匠を…)

リクが一人考え事をしていると、魔族の様子がおかしくなった。突然苦しみ始めたのだ。

「リク君!離れて!」

リクは突然のアリサの声に従い魔族から飛びのいた。すると魔族はその場で爆発した。リクはいったい何が起こったのか理解できなかった。

「リク君、上!」

リクが上を向くとそこにはリク達を見下ろす何かがいた。だが、すぐに姿を消してしまった。リク達にそれを言駆ける力すらも残っていなかった。リクはアリサとシイの元へ歩いて行こうとするが、リクの視界が歪んだ。リクは体から力が一気に抜けるような感覚があった。するとリクの視界は一瞬で暗くなった。アリサとシイは倒れていくリクの姿を眺めるしかできなかった。

「リク君!」

「お兄ちゃん!」

二人は叫んだ。地面に倒れ行くリクを何者かが支えた。銀色の髪を長く伸ばした十歳ほどの少女がリクを支え、優しく頭を撫でていた。リクは落ち着いたように安らかに眠っていた。リクを抱えた少女がアリサとシイの元へ歩いてきた。アリサとシイは警戒した。

「警戒はしなくていい。リクの仲間には危害を加えるつもりはない。」

リクを知るように語る少女にアリサとシイの二人はいったい誰なのか分からなかった。

「あなたは誰ですか?」

シイが尋ねた。

「刹那。動かないで、今傷を癒すから。話はそれから。」

刹那はそういうと、二人の傷を一瞬で癒していった。

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