ダンジョンへ
次の日、リク達三人は、村を出た。シイは村人と前もって話していたため、多くは語らなかった。村人はリク達を笑顔で見送った。村を出発してからすぐにダンジョンの入り口は見えた。
「こんな所にダンジョンがあるなんて。」
シイは驚いていた。
「アリサ、シイ準備はいいか?」
リクが二人を見て聞くと、二人は緊張している様子で頷いた。ダンジョンに入り奥に進んでいく三人。そんな三人の行く手を阻むように魔獣たちが次々に襲ってくる。その全てを三人は倒して行った。その日、五三階層まで進んだ。
「今日はここまでにしよう。ここからは俺も行ったことがない未知の場所だ。魔獣の力も上の階層行くごとに強くなってきている。一度睡眠をとってからこの先を進もう。」
リクはこの先にあるものに嫌な予感がしていた。アリサとシイは簡易式の寝床を早々と作って料理の準備を始めていた。
「ダンジョンの中だと時間がわからなくて困るよね。」
アリサは料理をしながらそう呟いていた。
「そうですね、時間がわからないのはちょっと困りますね。」
シイも料理をしながらそれに答えた。
「俺も、料理しようか。」
リクがそういうとアリサはリクを睨み
「リク君、料理は私に任せるって言ったよね。」
アリサはリクに料理を任せることを激しく拒んだ。
「アリサさん、なんでお兄ちゃんは料理をしたらダメなんですか?」
「シイちゃん、リク君に料理をやらしたら絶対ダメ。リク君の料理は食べれたらいいって考える料理だから。」
シイは何となく想像できたようだった。三人は料理を食べた後、三人交代で見張りと休憩を分けて、睡眠をとった。全員が睡眠をとり後片付けをして、五四階層へ向かった。魔獣は強くなり、苦戦しながらも怪我無く進んでいった。
「リク君、いくら何でもこのダンジョン深すぎない?」
七八階層に着いた頃、アリサはいくら何でも深すぎるダンジョンを不思議に思っていた。
「そうだな、魔獣も強くなってきているし、百階層以上あるようなら引き返そう。」
リクもこれ以上進むのは危険だと判断した。だが、九十階層に着くと三人は立ち止った。
「ここが最深部?」
「この扉の向こうにダンジョンの主がいるのでしょうか?」
「アリサ、シイこの先は今まで以上に気を引き締めていこう。」
三人は大きな扉の前に立ち気を引き締めた。ゆっくりと扉を開いた。そこには広い空間が広がっていた。そしてその奥に何かがいた。
「人間風情がここまでたどり着くとはな。だが、貴様らはここまでだ。私が直々に殺してやろう、誇りに思うがいい。」
そこには角を一本はやした魔族いた。魔族は手をこちらに向けた。三人は構えた。
「我の声に応じ召喚されよ火竜!」
魔族がそう叫ぶと、広い空間に魔術紋が現れた。そこから、巨大な竜が現れた。赤い鱗を纏い、鋭い目に圧倒的な力を思わせる威圧感。三人は息をのんだ。
「これはキツイな。アリサ、シイ、ここは一度引くぞ。」
リクの声に従い、入ってきた扉まで行き、出て行こうとするが、扉は固く閉じており出ることができなかった。
「リク君、勝つしかないよ。」
アリサはそう言うと、火竜へ向けて剣を構え竜へと斬りかかった。火竜に剣戟が襲った。だが、火竜には傷一つつかなかった。アリサが持っていた剣が、砕けた。
「アリサさん危ない!」
シイが叫ぶとアリサは火竜の手が自分に迫り来ているのに気付いた。アリサは防御をしようとするが気づくのが遅すぎた。
「間に合わないッ!」
アリサは直撃を覚悟する。
「制限解除!」
リクが叫んだ。リクはアリサの元へ一瞬で飛んだ。そしてアリサを抱え、その場を回避した。
「アリサ、無事か?」
リクは火竜から目を逸らさずアリサの無事を確認する。
「うん、リク君が助けてくれたから。ありがとう。」
アリサは照れながらリクの腕から降りる。シイから剣を受け取ると、再び火竜に剣を向け構えた。
「アリサ、まずは俺が仕掛ける。アリサはサポートを頼む。」
リクはそういうと、自分に身体強化の魔術をかけて、火竜に拳で立ち向かった。火竜の手を避け、火竜の頭を殴った。火竜は一瞬怯むが、すぐにリクを見て口を開いた。
「しまった!」
火竜がこれからすることをすぐさま察した。
「防護壁!」
シイが叫んだ。火竜から火が放たれた。リクは防護壁によって火の直撃を回避できた。
「シイ、ありがとう。」
「サポートは任せてください。」
リクが態勢をを整える中、アリサがその間剣戟を行っていた。アリサの剣が砕けると後退し、リクが攻撃に回った。リクはマナから教えてもらった魔術を行使していた。決して弱くないリクの攻撃すらも火竜の鱗を貫くことができなかった。それでも、三人とも諦めることなく、全力で抗い続けた。
「光槍!」
リクが叫ぶと、火竜に大量の光の槍が降り注いだ。リクはアリサ、シイがいる元へ行った。三人が合流し、自分たちの状態を確認した。火竜との攻防戦はもう四時間以上は続いていた。アリサは体力の限界が近く、使える魔力は残っていなかった。シイも魔力がそろそろ使えなくなるほど消耗していた。まともに動けるのは、リクだけだった。リクが攻撃に回り、アリサとシイは防御と回避に集中に集中するように指示を出した。火竜はいまだに無傷だ。だが、だれ一人この現状に絶望するものはいなかった。勝ち生き残ることだけが、頭の中にあった。
「水撃砲!」
リクは火竜に魔術を放ち、火竜の元へ駆けて行った。リクが何度も魔術と拳で攻撃するが、無意味だった。火竜の手が迫り、リクはそれを防ぐことができず、直撃し壁へと弾き飛ばされた。そんなリクへ火竜が火を放ち、リクはそれすらも直撃した。
「リク君!」
アリサが叫ぶが、それにこたえることはできなかった。リクは、落ちかける意識の中火竜に目を向けると、そこには火竜が火を放ち、アリサとシイがそれを防いでいる光景が見えた。そこに先まで傍観していた魔族がアリサたちへ魔術を放とうとしている光景が見えた。




