出会い――昇降口
午後の授業も終わり、やっと今日も終わる……といいなぁと今のオレは感じている。
理由はなんとなくであるが、今日がこのまま終わるとは考えにくい。なぜなら今日のオレは、意味不明なことに二回も出くわしているのだ。
一つは深内とのよく分からん友達作戦。
二つ目はオレのベストプレイスに現れた変な女子。
こうも立て続けに事件が起っているとなると、もう一つくらい何か起こると、オレの直感がそう訴えかけてくる。二度あることは三度あると言うしな。
分かっていると思うが、オレは退屈なこと以上に面倒なことが嫌いだ。だからオレにとっては、いつもの退屈な日々のほうが、何かが起こるよりもよっぽどいい。ハプニングだらけのスリリングな人生なんて味わいたくもない。そんなものは漫画やラノベだけで十分だ。
けど、今日のオレは絶対何か起こる。そう、絶対にだ。これは予測可能回避不可能という状況。オレにできるのは腹をくくることだけだ。
とりあえず、学校を出よう。学校内で起こることよりも、学校外で起こることのほうが幾分かマシな気がする。
*****
そうして、昇降口で靴を履き替えようとしていたときのことだ。
「うわー!! どいて、どいてー!!」
「あん?」
後ろから声が聞こえ、どうしたんだと振り返えろうとしたとき、体に違和感を覚えた。
「うがっ!」
誰かがオレにぶつかってきた。そしてそのまま、オレはいろんなやつが靴を履き替える場、つまりいろんなやつが見えている前で、すごい転び方をしてしまった。避けることもできなかった。恥ずかしい。そして頭が痛い……。
「いててて……」
ぶつかってきたやつは、オレの上に乗っかっていた。オレは転ぶとき振り返り際だったこともあり、顔が上を向いている。オレは少し目線を下に逸らす。
「お前……とりあえず早くどけろ」
このままだと、他のやつに迷惑になる。
「え? ああ、ごめん!」
乗っかっていたやつはあわてて立ち上がる。すると、体が軽くなる感じがした。オレも立ち上がる。
「てめぇ……なんのつもりだ」
「ははは……これには事情があってね。それより……」
「なんだよ」
「君って案外、どんくさいんだね」
イラ。
笑顔でそう答えるこいつの頭を、握った手でグリグリとしてやった。
「それが人にぶつかって来たときに言う言葉かよ、あん!?」
「いたいいたい!! す~み~ま~せ~ん~!!」
そのとき思い出す。ここは昇降口。
学校にいろんなやつがいる場所。そんな場所でこんなことしてたら……。
『ひそひそ……』
「…………」
やばいな……。このままだと、オレが悪いやつみたいに思われる。
「っち」
「あ……」
オレはさっきの生徒を解放してやる。
「じゃあな。それと他の人にぶつかったりするなよ。それだけで近くにいるやつも迷惑するんだからな」
「あ、うん」
これ以上変な噂にならないように、足早に学校を後にした。
*****
家に着く。中に入ってソファにダイブ。そのまま今日あったことを思い出す。
「っつかれたー……」
いや、もうそれでいいと思った。こんな日はもう二度とごめんだな。
オレはとりあえず、晩飯になるまで一眠りすることにした。