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 午前の授業が終わり、昼やすみになった。

 いつもなら購買にいき、何かを買ってくるところだが、今日はなんとなく、コンビニで昼の分も買っておいたので必要は無い。

 この場で食べようと思ったが、なぜかいつもと違い、近くで女子のグループが作られ始めていた。このままここで食事は気まずいので早めに離れよう。

 それじゃあ、最近行ってなかったあそこで食べるか。


*****


 着いたのは体育館裏。ここには一人になりたい時、よく来る。

 この時間なら用も無いのに人なんて来ないし、この学校では昼休みに体育館の使用はできないことになっている。

 後、この学校はいたって真面目な生徒ばかりなので、ベタに不良生徒の溜まり場とかにもなっていない。いやまず、今どきこんな場所に溜まり場なんてつくらないだろうが……と、言っているオレは不良な生徒の一人か。


 そんなことを思いながら適当な場所に腰掛ける。パンを頬張り、お茶飲み、食べ終えたら空を見る。


 オレは前、オレのやっていることのほとんどは無意味なものだと言ったことがある。

 でもオレは空を眺めることは無意味だとは思っていない。空というのは壮大で、自分がちっぽけに見える。月並な言葉ではあるがそう思う。


 それでちっぽけに見えて、そうするとなんだが大きな空というものに包まれたように感じて安心する。オレはその感覚が好きだった。教室で窓の外を眺めているときも同じような感想を抱く。


 けどオレは、無意味なことではないと言っているだけで、退屈であることに変わりは無い。変わり映えの無い風景をずっと眺めていてもつまらない。

 雲だって、動くのが遅すぎてあくびが出る。だからオレは壮大なものが好きってことなんだろう。


 オレはでかすぎるものを見ていると逆に、自分っていうものをしっかりと保とうとする。空は地中全体を包む大きなものだけど、だからこそ、オレはここで小さいながらも存在しているとそう考えているからだ。

 大きなものに包まれて、それでなお、流されず自己を保つ。

 こういう自分と向き合っている感じは、やっぱり無駄ではないと、誰でも考えてくれるだろう。


 まぁでも包まれたまま楽になりたいって思うときもあるがな。

 そうしてしばらく空を眺めていると、かすかに足音が聞こえてきた。

 足音的に考えて、一人のようだ。近くに訪れるような場所は無い。

 それに足音はどんどん大きくなりこっちに向かってきている。つまりここに向かっているのは明白だ。


 さてどうするか……。こんな場所に来るくらいだ。オレと同じで一人好きか、もしくは一人になりたいときってやつのどっちかだろう。

 オレとしても早急にこの場を離れ、THE一人をこの足音の主に味わってほしいのだが、あいにくここを離れるには足跡の主とすれ違わないといけない。

 オレのいる場所はそういう一箇所からしかこれないところにあるからだ。すれ違ったらすれ違ったで


「きっとあの人は自分がくるのが分かったから、どっかに行ってしまったんだな」


 って思われるだろう。そうするとオレとしても相手にしても気分がよくない。

 だからといって、近くに隠れられるような場所もない。なら……。

 オレはできるだけ入り口からは遠い場所まで行き、相手が来るのを待った。

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