ただ一人の友達、内海誠
「…………」
「…………」
気まずい。非常に気まずい。
オレは今昨日の誤解を解こうとあいつ……唯一の友である内海誠のところへと来ていた。
しかし、何から切り出せばいいのか分からず、誠の前でずっと黙ったままでいた。そうしていると、意外なことに先に誠から話してきた。
「昨日のはなんだ?」
「とりあえず誤解だ」
「どこからが誤解だ?」
「誠はどう考えているんだ」
「一週間であそこまでいってるんだ。昔関わりがあった人だったとか、もしくはあれ的な関係としか考えられんな」
「それはすべてお前の勘違いだ。あいつはただの世話焼きババアだ」
「ババアとはなんだ! あの人は見るからにきれいで人のよさそうだったぞ! ……はっ! まさか、やっぱりお前あの人となにか……」
「だからねーよ!」
「だって、そんな悪態とかつくって……それだけの仲だってことだろ!?」
「オレは普段からこんなだろ!」
「……言われてみればそうだな」
「分かってくれたか?」
「ああ、納得できない部分も大いにあるが、今考えると幸希にそういうのは無いな」
それはそれで腹立たしいが、まぁ誤解が解けたのなら別にいい。
「で、何のようだった?」
「うん?」
「昨日オレのところに来ただろ? 何の用があったんだ? ……大体お前、最近まで学校にも来ないでなにやってたんだ」
そういうと誠は一瞬顔を伏せた。
そのときにオレが見たあの『暗いもの』はなんだろう。誠はすぐに顔を上げて言った。
「最近学校に来てなかったのは、調子悪かったんだよ。風邪引いててさ。それに、もとからオレらって真面目ではないじゃん? 学校なんてさぼりまくりだっただろ」
「お前と一緒にするな。少なくともオレは、今年は真面目に通っていた……しかし、そうか。分かった、じゃあ昨日はどうした?」
「実はちょっと頼みごとがあってな」
「なんだ?」
「喧嘩だ」
*****
「ちぃ……! てめぇら覚えてろよ!」
いつの時代の捨て台詞だと思わせる言葉を吐いて、そいつらは逃げていった。
「ったく、言ってるだろ? あんま、こういうのはよくないってよ」
「まぁ、そう言うなよ。今回は仕方なかったんだって」
お互いに全身に負った傷をさすったりしながら、言葉を交わす。
喧嘩なんて久しぶりだったから、どうにも動けなかったな。おかげで予想以上に怪我を負ってしまった。基本的にはかすり傷程度のもので、大怪我といえるものはないが、こうもたくさんあると、痛いな。
人数は相手が五人で、この程度なら無傷でいけるかと思って高を括っていたのだがな。
「あいつら、オレのバイクを倒しやがってよ……」
「引き金はその程度か」
「その程度となんだ! とても重大なことだろう!」
それとオレの痛みと時間を考えればどう考えても、喧嘩なんてしにこなかったよ。たとえお前の頼みでもな。
「まぁ、すんだことだからいいとして、これからはすんなよ?」
「おう。悪かったな、付き合わせて」
「まったくだ。五人なら一人でぼこってくれ」
「無茶言うなよ……」
*****
オレと誠は今から一年前に出会った。あのころのオレは学校という場所への興味がなくなってきていて、授業はさぼりまくっていた。
そんなときのある夏の日、オレが町を歩いていたら人にぶつかった。そして……。
幸希「あ、すいません」
相手A「ぐぅあ――!! いって~~~!」
幸希「はぁ?」
相手A「やっべー、超いてー……これ折れてるかも」
相手B「おいお前! どうしてくれるんだ! オレ達の兄貴の骨折るとかよぉ?」
相手C「これはマジ、慰謝料とらないといけないんじゃないっすかねー?」
相手B「そうだそうだ! 慰謝料寄こせや!」
幸希「そんな簡単に折れるわけねーだろ、カス」
相手A「あんだと、こらぁ?」
相手B「てめぇ……兄貴を怒らすとどうなるのか分かってんのか? あん?」
相手C「くくく……てめぇの人生もこれまでってことだな」
幸希「なんだよ。やるならこいよ」
その後、オレとこいつらは喧嘩になった。何年前の人間だと内心笑っていたが、相手はAからFまでいた。そう、6人だ。さすがに一人では、人数が多すぎてオレはぼこられていた。そのとき――
「おいおい、お前らは弱いものいじめが趣味なのかい?」
「あん? 誰だ、てめぇは」
「話すことなんてないさ。今はただ、胸糞悪い光景見せられたお礼に、てめぇらぶん殴ってやろうって思ってたところだからな」
「は! できるものならやってみろ!」
*****
そしてオレと誠の二人で、そいつらはぶっ倒してやった。最後、逃げていくときには「くっ……くそ!覚えてろよ!」だった。
「おい、お前大丈夫か?」
「ちっ……お前なんで助けた」
「別にそんな義理はないし、最初は無視しようとしたんだが……同じ学校の生徒だったからな、なんとなくだ。しかし……」
「なんだ」
「お前、弱いな」
「あん? 喧嘩売ってのかお前!」
*****
こんな出会い方をしたオレ達だったけど、オレと誠は妙に馬が合った。
それからは、誠とはちょくちょくと話すようになって、今に至る。
一緒になって喧嘩もいっぱいした。でもオレは、そんなんでも、誠と過ごす時間はとても楽しかった。それは今でも変わらない。
でも、本当はそこに意味が無いことをオレは知っている。
それでも、一緒にいるのは、オレがただ一人友達として一緒にいようと思ったのは、弱さでしかないんだろう。




