担任登場
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!!
……うるさい。
「ふぁ……」
目覚まし時計の音で目を覚ます。設定時間は六時半。とても健康的だ。
毎日この時間に起き、顔洗ったり歯磨いたり、着替えたり。そういう当たり前のことをする。朝飯は学校に向かう途中で買って、それを食べる。
オレは一人暮らしで、自炊はできない。だからすべて外食か、買った物だ。
ついでに言っておくが金銭面に関しては、一切心配は無い。このことをちゃんと説明したいが、何分難しい問題なのでやめておく。ついでに面倒くさいしな。
オレは最後に時々やっているテレビでの運勢チェック(星座占いでうお座)をして学校に向かった。その日の運勢は……七位だった。
学校へと向かう途中、コンビニでサンドイッチを買って食べながら、登校した。
*****
いつもは遅刻ギリギリに着くはずだが、今日は少し早く五分ほど前についた。だからといって何か変わるわけでもないが、少しだけ妙な気分だ。
それはまるで、いきつけの店で自分の指定席と化している場所に、誰かが座っているような、そんな感覚。いやまぁ、オレそんな店とか無いけど。
とにかく、居心地か悪い。席について外でも眺めるか。……いつも通りだがな。
席に着こうと思ったが、そこには他の誰かが座っていた。見るに、周りの友達と談笑をしているのだろう。
これこそさっきの指定席に他の誰かが座っている状態だ。
困る……が、別に気にする必要も無い。
「おい」
「うん?」
オレは座っているやつに声をかけた。そうすると4人ほどで話していたグループは一斉に話をやめ、オレのほうを見る。
「そこ。オレの席だ」
「ああ。……で?」
「荷物を置かせてくれ」
「ああ」
「それじゃあな」
そう言って、オレはその場を離れた。
*****
「なんだったんだ、あいつ」
「知らねー。ってか、あんなやつこのクラスにいたのかよ」
「お前wwそれはさすがにねーんじゃねーかww同じクラスだろ」
「いやだから知らねーんだよ。あいつ、影薄いんじゃねーか」
「オレは知ってるぞ?」
「そりゃ、お前が席隣りだからだろ。つーか、あいつって名前なんだ?」
「それは――」
*****
「おい世良幸希は来ているか!」
突然オレの名前が呼ばれた。
「なんだ?」と、オレだけではなく他の人の視線も向く。
「げ……深内」
深内とはオレのクラスの担任の女教師だ。
深内はオレを確認すると、手招きをしてきた。
気づかない振りして無視しようかと思ったが、すでに目が合ってしまったので無理だ。仕方なく近く寄っていく。
「なんのようですか」
不機嫌そうに聞く。大体、他のやつらに見られていて気分が悪い。
そんなオレとは裏腹にこいつは明るい様子で聞いてくる。
「お前に話がある。放課後時間はあるか?」
「いえ、ないです」
真正面から否定してやった。それでも臆する様子もなく、「なら」と続けてくる。
「次の時間、公認欠席にしてやる。話を聞け」
「いやです」
またしても真正面から否定する。今度は「むぅ……」と唸っていた。
おいおい。いい年してなんて声だしてんだ。きもいぞ。そういうのはもっと、若さ溢れる年代の女が言うもんだ。
「いいか? これはお前にとっても重要なことなんだぞ」
「なんですか。重要なことって」
どうでもいいから、早く話を終わらせてくれ。
未だに他の人からの視線があるため、嫌になってきた。
オレは話を適当に流すモードに切り替えた。
「お前の進路のことだ」
「そうですか」
「どうだ重要だろう」
「はい、そうですね」
「ああそうだとも。とても重要だ。
私は今まで一人たりともお前のような駄目人間をそのままにしたことはない。しっかりと進路を決めて、これからの将来というものをだな……」
「へー」
「それにな、これはお前のためであってな。このままではお前は路頭に迷い、自宅警備員か人として踏み入れてはいけない道へ入ってしまうかもしれない」
「そうですね」
長いなー。
「だからせめて、進学か就職かのどっちなのかを決めてもらおうと思っているのだ」
「いやです」
「なに?」
おっと、これだけは普通に返してしまった。ちょっと深内のやつ怒ってる。
深内が何か言おうとしたときチャイムがなった。
しめた。これでHRが始まる。
深内は「っち」と舌打ちをして(態度悪いな)「また後で話す」と言って、教壇へと戻る。そうしてHRは始まった。
*****
HRの後。深内はオレのところに来て、「それでな」とさっきの続きを話そうとした。
オレはお腹が痛いのでトイレに行ってきますと言い、向かった。
1時間目の開始直前まで、トイレの中いることにしよう。
*****
もう少しでチャイムが鳴るという時間を見計らい、教室に入る。そうして何事も無かったかのように準備をして、授業を受けようとする。
すると教師が入ってきて、言った。
「おい世良。さっき深内先生が呼んでいたぞ。この授業は公認欠席にしといてやる。指導室にいるそうだからいって来い」
「……はい」
深内のやつ……まさかここまでやるとは。
オレは授業を出て誰にも見つからないような場所にいき、空を眺めながら過ごした。
*****
チャイムが鳴り教室に戻る。すると、
「おい、世良。どういうつもりだ?」
そこにはすでに深内のやつがいた。
「私の用事をさぼって、どこで何をしていた?」
「先生こそなんなんですか? オレに気があるんですか?」
ギャルゲーでたとえたとして、メインを張れるようなキャラじゃないな。ヴィジュアル的にも性格的にも、キャラの位置的にも。
サブがお似合い。ファンディスクが出たらいいね程度のやつだろう。オレのタイプでもないし。
深内は怪訝そうな目をし、答える。
「お前は何を言っている。ナルシストなのか? それともお前が私に興味あるのか? ツンデレというやつなのか?」
「変なこと言わないでくださいよ。オレはおばさんには興味ありませんよ」
「な……! 私はまだおばさんではないぞ! まだ二十代だ!」
なにむきになってんだ。
こいつ、既に最初の目的を忘れているな。馬鹿だ。教師のくせに。
「……っく! いいか次の授業も同じようにしてやるから今度は絶対来い! さもなくば、卒業さえも危ういからな!」
そうして去って行った。
教師が生徒を権力を盾に脅すとはこれいかにと、思ったが、まぁいい。また授業を公認でさぼれるんだからな。
しかし……。
「卒業か……」