日常
ぼくは決めた。
ここに誓おう。
もうこれ以上、ぼくは自分の大切なものを傷つけたくない。
そのために、必要なことなら、なんでもする。だから……。
*****
「…………」
とくに何も考えず、窓の外の景色を眺めていた。
そこにあったのは、何も変わり映えもしない景色。強いて言うなら、晴れていることくらいだ。
こんなことをしているオレだが、今の状況で普通の人なら、そうそう窓の外を見るやつなんていない。今は学校で、授業を受けている最中だからだ。
それでもオレが窓の外の景色を見ているのは、別段珍しくもなく、退屈なものであっても、授業というそれ以上に退屈なものを受けるよりは、いいと思ったからだ。
オレは教師の授業を聞き流しながら、終わりまでずっと外を眺めていた。
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授業は終了した。これで休み時間になった。周りの連中は授業から解放され、軽くざわつき始めていた。
だが、オレに言わせれば、この後のほうがやっていられない。
なんせ、今はまだ2時間目が終了したところだぞ? この後、何時間もあんなつまらないものを受けなければいけないのかと思うと、やっていられないと感じるのも普通だろう。
そうしているとチャイムが鳴った。それを合図に、皆は自分の席に着く。
オレは教科書などを机の上に置き、再び外を眺めた。
*****
やっと昼休みになる。これでひとまず、授業からの開放感をオレも味わえた。
周りの連中は適当にグループを作り、談笑しながら各々食事を始めていた。
オレも人間の三大欲求の一つである食欲を満たすため弁当を取り出す。
「……って、オレはそんなもの持ってきていない」
こんなオレの独り言に耳を貸すものもなく、気にも留める人もない。
オレはいつものように購買へと向かい、適当にパンを買ってそれを食べた。残った時間は、空を眺めていた。
*****
午後の授業も同じように過ごし、やっと今日の授業は終わった。
でも、油断してはいけない。この繰り返しがまだまだあるのだ。明日も明後日も、何日も何日も。
しかし、前向きに考えてみればこれも後少しで終わる。
オレはもう三年生。季節は夏が終わり秋が始まろうとしている。
この学校……とも、あと数ヶ月でおさらばだ。特に思い入れも無いが、少しだけ寂しく感じるときもある。
まぁそれ以上に、こんな退屈な場所で2年間も過ごしたオレを褒めてやりたい。
そして、無駄な時間を過ごしていたと蔑んでやりたい。
こんな馬鹿のコミュニティーに在籍していたことは、きっとこれから先の人生の汚点になるだろう。
「…………」
いや、もう考えるのはやめよう。
オレはすばやく準備を済ませ、教室を離れた。
*****
廊下、階段、昇降口を通じ、外に出る。通学は徒歩。よって帰りも徒歩。……当たり前だな。
家に帰った。その後は特に何もせず、だらだらと過ごした。
*****
これがオレの一日。何のかわりも無い普通の日。
誰かに言わせれば駄目人間だろう。
もっとなにかすることがあるだろう。
放課後なら部活なりと、友達と遊ぶなりと。真面目なやつなら勉強しろとか。
大体、そんな生活つまらないだろう。幸せじゃないだろう。
だが、オレに言わせればこれでいい。これがオレにとって一番楽だ。楽しいのだ。これが一番、オレにとって幸せだ。
オレのしていることは意味のないものがほとんどだ。自覚している。
だがそれ以上に意味のないもののほうが、オレには多いと思う。
だからオレはその中でも、特にマシなものを選んで生きているつもりだ。
授業なんてオレには意味のないものだと思うし、友達と遊ぶにしたって他人の顔色を伺いながら一緒にいるなんて無駄だ。
それを考えるとやっぱり、一人で何もしないで過ごすのが一番楽だ。
何かやりたいことがないのかとか言いそうなやつもいそうだ。ない。それで終わりか。
夢は無いのか。
無い。
進路は。
決めていない。
3年生でそれはまずいんじゃないか。
どうでもいいこれから先なんて。
途中から二者面談のときを思い出してしまった。オレはそう答えていたな。
担任からはいろいろと怒られたが、もう諦められたのだろう。今ではなにも言われなくなった。
よく考えれば、最初から全部、今までの担任が言っていたことだった。
授業中はいつも外ばっかり見ているがどうしたんだとか、部活しないのかとか、友達づきあいはどうかとか。
全部無視したり、適当に流していたが案外覚えているものだ。いや、もしかしたらオレが言われたことを心の底では望んでいるからかも知れにない。
(……いやないな。面倒くさいとしか思わない)
どうせ残った学校生活も同じ事を繰り返していれば終わるんだ。
早く……終わればいいのにな。