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中古系異世界へようこそ!  作者: 高砂和正
2章 黒の猛禽たち
25/57

25 トゥレス・ヤルナッハ

(じいちゃん! 〈地獄転移〉の新巻出てたよ!)

(おお、もう密林で買ってっから読んでいいぞー)

(まじで!? ありがとう!)


〈地獄転移〉とかくっそ懐かしいわ。

 曾孫と一緒に読んだ作品の中でも、かなり出来が良かった。


 ばあさんと暮らした家を引き払った後に住み込んだ、PC一台と布団、本棚、仏壇しかないワンルーム。

 可愛がってた曾孫が、PC禁止されたとかでこっそり来てはWeb小説を読みに来るのに感化され、いや、話のネタが欲しかったんだな。儂は。

 儂はもっぱら書籍化された物を読んでた。

 Web版が駄目だっつうことじゃねえが、指で紙をめくって読むのが好きでな。

 小説家志望の若いのが書いた作品は粗造りで、儂には良く分からない表現も多かったが、中々楽しめた。

 正直、ハマった、と言っても良い買い方をしてたかも知れねえ。

 

 晩年の趣味というには変な顔をされるかも知れねえが、曾孫と盛り上がりながら交流の出来る良い娯楽だったよ。


 その経験は、活きたしな。


(じいちゃんさー、転生物も読もうよー。面白くてじいちゃん好きそうな話も有るんだよー)

(だから言ってんだろ? 儂は自分の人生に満足してっから、そういうの読まなくて良いんだよ)

(もったいない)

(第一泣きもしねえし、てめえのお袋を色で見たり乳もらうのを拒んだりする赤ん坊なんて気色悪いぜ)

(そんなもんかな?)

(お前も、後10年、20年して子の親になりゃ分かるさ)


 ガキは、足りなくて良いのさ。

 

 生まれてしまえば仕方ねえとは思うが、その考えは今でもやっぱ変わってねえ。

 親の目から見りゃおっかねえもんさ。転生者なんてものは。

 ま、最初に読んだ転生物が、出来た転生者が愚かな父親を打ち倒すってネタだったのもいけなかったかも知れねえ。

 それは同情の余地が無いように父親側を描写しちゃいたが、な。

 



 ああ、ぼやけていきやがる。

 くそ、もうちょい、浸らせてくれても……

 










 青年が煎餅布団からむっくりと起き上がる。  


「……くそ寒い」


 年末のアドナックの気候は身体に応える。

 小さなトイレだけがついた一室は、断熱もろくにされていない粗末な物だった。

 のろのろと洗顔や歯磨きを終えると、備え付けの小さな鏡に写る自分の顔を見た。


「……儂には過度な男前、とは言わねえさ」


 親からもらった大事な身体だ。少々傷んでいるが、普段は気にかけたりはしない。

 先程まで見ていた懐かしい夢が、彼にそんな事を言わせてしまったのだ。

 写るのは90年以上付き合い、ゆっくりと皺を刻んで行った顔ではない。

 白っぽい茶色の頭髪に朱色の虹彩、長い耳、エルフ系の秀麗な顔立ち、〈源世界〉の黒人並みの肌の色。

 身体も背骨の曲がったそれではなく、前世を遥かに上回る180センチ近い長身だった。

 この身体との付き合いは20年。

 今生の彼は黒精人種(ダークエルフ)として生まれていた。

 トゥレス・ヤルナッハ。

 大往生した老人の記憶を持つ転生型セトラーである。

 この世界の若者の例に漏れず、現在は冒険者をしている。

 スロットレベルは下位(アマチュア)中位(プロ)の境である3だった。

 

 朝を軽く済ませたトゥレスは、慣れた手つきで身支度を進める。

 メインは野外用の服に革の軽鎧だが、各部のハードポイントに防寒目的に毛皮を取り付けてある。

 右腰に山刀、左腰に矢筒。

 主武器である弦を張った状態の大弓一つと短弓を二つ、いくつかのその他装備も〈スクエアスロット〉に入れておく。

 二つスロットは空にしておく。獲得した物を持って帰るための枠だ。

 そして、歩行補助の自作T字ステッキを突いて外に出た。


 不自由な右足を引き摺りながら。

 










「おっす」


 準備をして集合場所に向かうと、最近組んでいる相方に声をかけた。


「よう、トゥレス」


 相方が片手を上げて応えた。

 頭は鉢金を巻き、首から下はダークグレーのクロークを羽織っている。

 クロークの左腕辺りに黒地に白抜きで〈変り種〉と書かれたワッペンが取り付けられていた。

 明るい金髪に若草色の目をした、中学生くらいの少年だ。

 

 (おか)(ざき)(はじめ)


 懐かしいその響きから分かる通り、転生者であるトゥレスと同じ元日本人、セトラーだった。

 ウィケロタウロスでも名の知られた冒険者、〈便利屋〉の東山ニコラウスが率いるギルド〈変り種〉の新人であり、現在スロット2。

 数ヶ月に渡って元〈魔絶の刻印〉所属のマーティン・デヴォニッシュに『晒し』を受けていたことで身を隠していたそうだが、一月ほど前の共同探索中に、そのマーティンに謀殺(フレンドリーファイア)されかけて問題となった。

 マーティン本人は拘束されていたのだが、彼の実家が動いたとかで行方不明になっている。

 その後、彼がこれまで行ってきた悪行が続々と明るみに出て、かつて所属していた〈魔絶の刻印〉主導の働きかけでで指名手配になっていた。

 一方の丘崎は『晒し』が逆に作用し、共同探索で大物を仕留めたのが対外的なデビューとなったことで評判となっていた。

 ギルド外の下位冒険者たちとの活動も積極的に行っており、評判のような派手さは見られないが、堅実で真面目な戦い方、攻撃・斥候・壁・支援といった複数のポジションにもそれなりに対応する事が評価されていた。

 何と、早くもあだ名が付けられようとしている噂も有った。

 有力候補として、




〈社畜〉

〈労働厨〉

〈守銭奴〉




 等が挙げられている。


(割とロクでもねぇのばっかなんだよなあ……)


 トゥレスが前世で読んでいた小説と違い、この世界の冒険者の二つ名は強ければ付けられるような物とは限らない。


(変な奴、特徴的な奴に付けられる悪口みたいなもんだったりもするからなあ)


 ちなみに、トゥレス自身にも〈とんび〉というあだ名が付けられていた。











 トゥレスと丘崎は低難度と言われる〈大樹の魔窟〉で活動していた。

〈蟲の魔窟〉同様転移型で、緑の多い所も似ているがこちらは平地の森林になっている。

 主に動物型の魔物が多い場所だった。


(でけえの落とすぞ! 巻きこまれんじゃねえぞ!)

(了解。そっちも有効範囲間違えないでくれよ)

(ぬかせ!)


 丘崎の(パーソナル)(アビリティ)対界侵蝕(カイモン)〉を介して思念で対話し、樹上のトゥレスが大弓を引き絞る。

 矢羽に触れる指から強力に魔力を矢に注ぎ込むそれは、〈魔導射法〉と呼ばれる技術だった。

 眼下で熊型の魔物と戦っている丘崎。

 増えつつある魔物。

 全て考慮して矢を撃ち込む点を決める。

 

「……〈雷網矢(スタンクラスター)〉」


 緩やかに言霊を乗せて指を離した。


 一方の丘崎は共有されたトゥレスの視野と発射の意思を感じ取り、


「……よっと!」


 丘崎は中巻柄の両手剣(ツヴァイハンダー)で熊型を弾き飛ばした。

 丁度、そこはトゥレスの〈魔導射法〉の範囲内。


「「ギョアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」」


 魔物の群れの中央に撃ち込まれた矢の魔力が炸裂する。

 丘崎は至近に発生した電撃の閃光を目を瞑って回避した。

 一時的な物だし、視界はトゥレスの物に頼ればなんとかなる。


(感電させただけだ! 仕留めるぞ!)

(いやー、ありがたやありがたや)


 目を開けば熊型、狼型、猪型、倒れた魔物たちが痙攣していた。


「ひゃっはー! 入れ食いだー!」


 喜色を露わにして止めを刺して回る丘崎を見に少し呆れながら、トゥレスは短弓に切り替えて加勢する。

 作業的に、しかし外すこと無く急所を射抜いていく。

 魔導射法によっては爆撃のような技も有るので、それで殲滅する事も出来るのだが、皮や産物(ドロップ)といった売れる物を残すための戦い方だった。 

 一通り終わると、眼下の丘崎がスロットの『個』判定機能を利用して血抜きと消化器の中身の処理をし始めた。


「皮、剥がねえとな」


 そう言って、トゥレスは自身のPAを起動させた。

 彼の身体から黒い何かが沸き出て来る。

 変幻自在の黒い実体。これを操るのが、トゥレスのPAである〈(かげ)(ほう)〉だ。

 右手に纏わり付かせた影を、丁度丘崎が動いている辺りの真上の枝に伸ばす。

 影を伸縮させ、ターザンのように移動し、衝撃を受けぬように着地する。

 丘崎はアメリカンコミックの蜘蛛男の様だと例えた動きだ。

 脚に障害が有るトゥレスが何とか冒険者としてやっていけるのは、このPAが有ってのことだった。

 こうした高所に引っ掛けられるような物が有る魔窟とは特に相性が良い。

 地上では遅い代わりに高所から高所への移動に長け、猛禽を思わせる遠視に長けた朱色の目。そして狙撃を得意とするスタイル故に、頻繁に油揚げ(おいしいところ)をかっさらう。

 それが〈とんび〉の由来だった。


「よろしくお願いしゃっす!」

「しゃあねえなあ」


 溜息をつきながら、丘崎がホクホク顔で運んでくる魔物たちを慣れた手つきで捌き始める。

 早くて正確。

 範囲の広い部分の皮を剥がし、高く売れる部位の肉だけを的確に切って保存用の袋に放り込んで行く。

 トゥレスは今生において猟師の家に生まれていた。

 幼くして弓を取り、森に入り、獣を狩り、捌いて売って生きて来たのだ。

 その経験が今のトゥレスを支えている。

 彼の毛皮付き革鎧も自身の手製だった。

 トゥレスは普段なら全ての獲物の処理等という面倒なことはしない。

 重量物の運搬はPAを使ってもトゥレスには厳しいし、どこかのパーティに入って時間のかかる行動を取るのも憚られるため、高く売れる大物相手でも無ければ披露することは無かった技術である。

 それを今発揮しているのは、金になる物が少しでも欲しいという丘崎の希望が有ってのことだった。

 丘崎はトゥレスが作業しやすいように魔物を置き、屑を燃やす火を焚く等の用意を終えると、きょろきょろしながら周囲をうろつき始める。


「おっ、ゲンノショウコ見っけ! シメジも!」


 楽しげに薬用、食用の草本や茸を採集する丘崎に、トゥレスは苦笑する。


「皮や肉と比べても二束三文だろうに。よくやるわ」

「こういうのは積み重ねだろ?」

「ま、そりゃそうけどよ」


 丘崎はこうしたまめまめしい稼ぎ方を臨時参加のパーティでも行っており、売れる物を無駄にするのを嫌っている。

 他者を一方的に利用するような稼ぎ方をしているわけではないが、〈守銭奴〉があだ名候補となる原因になっていた。


「もう済むぞ。行こうぜ」

「おう」

 

 トゥレスは解体道具を仕舞い、肉と皮の入った二つの袋をスロットに入れる。

 袋には収納した物が有る程度近い分類の物であれば、スクエアスロットの『個』判定を有効にする特殊な魔法がかけられていた。

 これらは換金して山分けとなる。

 2人は目的地へ向かって探索を再開するが、宙を行くトゥレスと地を駆ける丘崎で移動方法が違うため並んで歩きはしない。 

 だが、丘崎のPAを介して他愛も無い話をしながらだ。

 他のパーティだとこういうところでも合わせられないトゥレスには有り難かった。

 人生経験においては遥かに隔たりは有るが、同じ下位冒険者のセトラーということでそれなりに話も合い、活動全般でギブアンドテイクが成立している。

 冒険者役場の西郷に紹介され、一時的にコンビを組んでからの期間は短いが、既に友人同士と言って良い関係を築きつつあった。











 仕事を終え、安い居酒屋でトゥレスと丘崎が向かい合っていた。


「おっし! 今週もお疲れさん!」

「おー! かんぱーい!」


 仲居の運んできたビールで乾杯し、良い塩梅に疲労した体を潤す2人。

 といっても、丘崎の方はノンアルコールビールだった。

 まずは一口飲んで卓に置いたトゥレスに対し、


「んぐっ、んぐっ、んぐっ! っかーっ! 染みるわぁ……」


 丘崎は実に美味そうにジョッキを干した。

 周囲の他の客たちも、それを見てごくりと喉を鳴らす。

 アルコールが入っていないが、この爽快感。

 前世の大学生時代に飲んでいた物は一体なんだったのかと丘崎は思う。


(嗚呼、仕事上がりの体にビールのハーモニー……。マジで犯罪的だな。心底、社会人になれて良かったと思うわ)


 最早手段が目的と化している丘崎だった。

〈労働厨〉や〈守銭奴〉の通り、丘崎は金稼ぎには熱心だがケチではない。

 金を使った息抜き、仕事仲間と飲むということの重要性は知っていた。

 とはいえ、行くのは週末くらい、若者向けの安く飲み食い出来る店ばかりで、高級店には寄り付きもしないが。


「……今日も出なかったな」

「ま、ボロボロ出るもんでもねえだろ」


 ふとぼやく丘崎に、トゥレスが苦笑する。

 枝豆やフライドポテトといった、安くて量の多いメニューを摘みながら話し合う。

 2人が言っているのはトゥレスが〈大樹の魔窟〉で狙っている、とある報酬のことだ。


「早いとこ数揃えて終わらせられたら良いんだけどな」

「はは、若ぇなあ」


 トゥレスは自分以上に一喜一憂する丘崎を見て笑う。

 何故、若さを笑われたのか分からない丘崎は、口をひん曲げて見せる。


「4年間、機会が無かったんだ。今更焦りはしねえよ」

「聞くと長く思えるけどな」

「人生の内たったの4年よ。儂が身体と同じ歳なら人生の5分の1はでけえだろうが、あいにく前世と足せば3桁を超えるんだぜ?」

「……そんなもんか?」

「ま、そう気にすんな。当たりが出なくても地味に金も稼げてるしな」


 トゥレスの欲している報酬は〈祈念札・護型〉と呼ばれる特殊なアイテムだ。

〈大樹の魔窟〉の最深部で稀に入手出来る品で、任意対象に簡易な守りの加護を付与する効果が有る。

 一度でも有効打を受ければ解除されてしまう加護だが、保険としては有効であるためそれなりに需要が有る。


「アブドラさんは、無料でやってくれるかと思ってたんだけどな」


 丘崎がぼやくように言った。

 トゥレスが丘崎を介して出会った〈変り種〉の白精人種(ドワーフ)の冒険者、〈奇僧〉アブドラ・グラゾフスキーの依頼。


『〈祈念札・護型〉12枚を以って、トゥレス・ヤルナッハの神経性障害の治療を行う』


 丘崎としては、アブドラがそういった条件を出してくるとは思っていなかった。

 根からのお人好しで、普段から慈善事業のような活動も行っているアブドラなら、障害に悩まされながらも冒険者として活動しているトゥレスを救ってくれるだろうと思い込んでいたのだ。


「そう言うんじゃねえよ」

「でもなあ」

「お互い納得してのことだ。むしろ儂は気に入ったね。あのドワーフ、若ぇのにしては中々筋が通った奴だと思うぜ」


 不満を見せる丘崎に、トゥレスは言う。

 若くとも老人同然の容姿を持つドワーフ男性であるアブドラだが、人生経験の豊富な前世からの視点から見れば、「感心な心がけの若者」といった風に映っていた。


「本当のとこは、グラゾフスキーだって自儘に治癒をばらまきたいんだろうよ。だがそれをやれば神殿郡やらから目を付けられる」

「まあ、それは分かる」

「奴はルールを決めてんだよ。

 無償で行うラインは仲間まで。

 非常時に怪我人が運び込まれるようなシチュエーションなら可。

 向こうから治療を願ってくるような件なら、相応の益を求める。

 ってとこか。

 誰も彼も無償で癒して、とやってりゃあ馬鹿なのが周りに沸くこともあるだろうしな」

「……」


 トゥレスの推測を聞いて、丘崎は確かにそうかも知れない、と思う。


「俺は、イメージを押し付けてたのか」

「だが、今回はちと別の意図も有るかも知れねえな」

「別の意図?」


 首を傾げる丘崎。

 トゥレスは秀麗な顔立ちに魅力的な微笑を乗せるが、すぐには言わない。

 異性であれば一瞬で恋に落ちるような表情。しかし男の丘崎でも嫌味さは感じず、彼の文字通り老成した精神性とさっぱりとした気性が伺える透明感の有る笑顔だった。

 

「この機会にお前のPAの特性を利用して、完全な後衛型の視点を教えようとしてるんじゃねえかと儂は思う。

 ま、それに関しては、儂も前衛が苛つかねえ射ち方の勉強になってるからお相子だがな」


 そう言って、トゥレスはビールを煽る。

 丘崎と組むに当たってニコラウスとも接触して、そういう結論を出した。

 元日本人(セトラー)その関係者(リアクター)はこの世界の普通の人間より利に敏い。

 闇雲に信用してはいけない存在だった。

 それを熟知しているであろうニコラウスがトゥレスを選んだ。

 恐らくはアブドラの治癒を餌にして、利に敏いが故に確実に裏切らないようにした後衛火力と組ませたかったのだろう。

 長期間拘束されざるを得ないアブドラの依頼内容も、ニコラウスの策ではないかと思っている。


「大事にされてんなあ、お前」


 作意は感じているが、しかし不快ではない。

 トゥレスは丘崎と友誼を結べたことを感謝していた。











 トゥレスはほろ酔い気分で帰り道を歩いていた。

 脚を引き摺りながらも、以前に比べれば現状への諦観は無かった。

 もしかしたら、己の真の目的に近づく事が出来るかも知れない。

 諦めていた物に差した希望の光が、今は重り以上の意味の無い脚をも少し軽くしてくれていた。


 それが止まった。


「この脚じゃ痛むだろなぁ……」


 偶然視界に入った路地裏で、傷付き倒れ伏す小柄な人影。

 どういった事情でこんなことになっているのかは見当も付かないが、明らかに子供の体格だ。

 かつて人の親であった前世の経験から、見捨てて行くのは忍びなかった。

 やれやれと息を吐いて、〈影法師〉を使ってなんとか肩に担ぎあげた。

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