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中古系異世界へようこそ!  作者: 高砂和正
1章 駆け出せない冒険者
12/57

12 〈対界侵蝕〉

 今後の活動についての話し合いを終えた後、丘崎は自室のちゃぶ台で紙を束ねたファイルに向かっていた。

 筆記具は墨芯を固定して使う鉛筆代わりのホルダーと言う物だ。

 かつて生きた日本にも同名、近似の構造の製図用具が有ったが、これは金属とバネではなく細竹と紐を主材料としている。

 手作り感溢れる造りだが、これはかなり普及している筆記具だった。

 いくら〈源世界〉の工業知識をセトラーたちが持ち込んでも、化石燃料による工業技術が〈リミッター〉で規制されているため、この世界ではシャーペンどころか鉛筆すら製造されていないのだ。

 これらは今日リインに頼んで買ってもらった物で、×××の記憶について書き留めていた。

 何かに書いておかないと、何時か夢の様に頭から薄れ、消えてしまうんじゃないかと丘崎は不安だったのだ。

 今は既に一通りのことを書き終え、思いついたことをちょろちょろと追加するくらいの段階になっている。

 そろそろひと息入れようかと思ったところで、戸をノックされた。


『始、良いかい?』


 リインの声だった。

 丘崎はノートをさっと荷物の下に隠した。

 まだ〈変り種〉に自身の事情を伝える気は無かった。

 言えるような関係になれれば、とは思っているが。


 訪ねてきたリインを招き入れると、ハーフパンツにTシャツという格好だった。

 簡素だが、腿や腰のくびれが出るフェミニンな物を着ていた。

 女性的な膨らみは発展途上リインだが、スレンダーさという面では非常に魅力的だった。足など戦闘や組手で見せた脚力がどこから出るのか分からないほどに細い。


(眼福……、でも膨らみ分目に毒というほどでもないな。『前回』の今の年の頃なら、これくらいでも過度に反応してたもんだが。二十歳過ぎの感性をこんな所で有り難く思うとはなあ)


 遠い目になりそうなのを堪えながら、努めて自然に対応する丘崎。

 リインは抱えていた一冊の厚い本をちゃぶ台の上に置いた。


「じゃあ、やろうか」

「よろしく頼みます。キアルージ先生」


 丘崎が昨夜は嫌がられた敬語で言うが、冗談めかして言ったのが良かったのかリインも笑って応えてくれた。


「約束してたからね。焦って身につく物でも無いけど私なりにきっちり教えるよ。丘崎生徒」


 二日続けて受けた襲撃への警戒、そして冒険者として活動するため、当分の間丘崎は宿から離れず魔法や肉体の鍛錬に専念するということが決まっていた。


 リインはまず三種の魔力源と、それに対応する魔法が有ることを語った。

 信仰する神々から供給される〈神威〉と、それを使って発動し、治癒に肉体強化、遠距離攻撃までこなす神令(コマンド)

 個人が持つ〈霊威〉と、それを使って発動し、肉体及び至近の外界へ作用させる霊法(ブースト)

 そして、自然界に存在する〈界威〉と、それを使って発動し、遠距離攻撃、広域干渉に向く界理(ワーシップ)だ。


「人種によってどの魔力源に対して適正を示すかは違うね。マスターの魔人種みたいな例外を除くと、『17』の数字を割り振るような適正の比率になる。

 基人系だったら神威:霊威:界威=9:5:3が平均。

 獣相系は下位区分の人種で異なるけど、神威:霊威:界威=4:9:4とかの〈霊威〉が極端に高く、〈神威〉と〈界威〉はトントンなケースが多い。

 五精系は人種差が大きいけど、界威適正の高さが共通するかな」

「ってことは、俺も〈神威〉ってのが使いやすいってことか?」

「始が基人系の多数派になるならね。私は獣相系だけど1:7:9くらいでかなり界威適正が尖ってる。お(ゆう)なんかは界威適正が特に高いはずの青精人種(エルフ)なのにそっちはイマイチで霊威適正が極端に高いとか、そういう例外も存在する」

「俺も特殊な適正を示す可能性は有るってことか」

「そういうことだね。ま、例外と言うだけあって大抵は常識の範囲内に収まってしまうんだけどさ」


 自身が特異であることに期待するほど子供でもない。

 丘崎は素直に頷いた。 


「始には私の魔法を試してもらいたいんだ。分類としては無詠唱型の界理になるね」


 魔法のうち、神令と界理には詠唱や手印、魔方陣といった構築補助技術が有り、それらを省略した物は一般的に無詠唱型と呼ばれている。

 最も強力であるのが言霊を乗せた言語詠唱魔法だ。

 古代において詠唱は自転車の補助輪のような役割であり、制御の未熟さを補うような存在だった。

 それを省略するセトラーの考案した無詠唱を至高の技術とされた時代も有るが、現代において言霊による詠唱は補助的な要素は削ぎ落としてあり、ギアチェンジや原動機を搭載するような上方向の強化を行う物になっている。

 故に真に強力な魔法は詠唱で発動することが常識だった。

 しかし、無詠唱型も最強とは扱われなくなったが、その速効性や内容の隠蔽性から使われない訳ではない。


 リインは自分の掌に〈界威〉を集め、野球ボール大の灰色の魔力球を生み出した。

 灰の魔力球を変換して青の魔力球に変化させ、青から赤、赤から黄、黄から白、白から黒の魔力球を創り出して見せた。

 五色の魔力球は創り出された順で正五角形に並び、リインの手の上でくるくると回った。


「これが私の魔法。この世界で師匠と私、そしてマスターしか使えない魔法行使技巧」


〈五行魔力球〉


 知る者の間ではそう呼んでいた。

 ニコラウス曰く、過去には近い形態の魔法が存在した記録が有るそうだが、技術としては失伝しておりオリジナルというよりは復刻版のような物になるそうだ。


「〈鬼の魔窟〉で使ってたやつか」

「そう。戦闘時に魔力球一つ一つから五気の魔力弾を発射するんだ。基本の威力はそこまで強くないけど、最終威力、弾速、連射速が調整出来る。魔力弾を発射していくうちに元の魔力球は消費してしまうんだけど、そうだな、火力として運用するなら最大10秒間持つかな」


 この世界の魔力、魔法の体系には五行思想の影響がしているのだが、名前から分かるように、〈五行魔力球〉はそれを特に強く利用している。

 木は火を生み、火は土を生み、土は金を生み、金は水を生み、水は木を生む。

 構築した魔力球は五行相生を成し、自動的に魔力を環状に高め、補い続ける。

 結果、五つの魔力球そのものが減衰しづらくなっていて、威力、連射性、連射の持続性などが構造的に強化されるため、投資する界威魔力に対してリターンが非常に大きい物になっていた。


「簡単な現象化魔法も出来るから、基本が出来れば生活にも使えるよ」


 現象化とは五気の魔力を木、火、土、金、水の属性を持つ実際の現象に変換することだ。

 攻撃魔法としての〈五行魔力球〉は、現象化による威力増加は切り捨て、連射による制圧力に傾いていた。


「この五色が生み出せれば完成だけど、まずはその基本からだ」


 そう言って、興味深そうに魔力球を観察していた丘崎に〈界威〉の感知と操作を練習させ始めた。











 延々と挑戦すること2時間。


「駄目だ。分からん」

 

 丘崎は音を上げ、ちゃぶ台の上に突っ伏した。

 この世界において、自身も魔力を操る力を備えているということは×××の残滓が教えてくれている。

 だが、それを自分の意思で運用するとなると全く勝手が分からなかった。


「百面相してたから、そうじゃないかと思ったよ」


 ちゃぶ台をはさんで反対側、横座りの姿勢のリインは苦笑して、持ってきていた本をめくる手を止める。


「さて、急がないならいいんだけど、出来れば早めに使いこなせたほうが良いからね」

 

 そう言ってから、先ほどまでめくっていた本のとあるページを確認し、丘崎の顔をじっと見つめる。


「セトラー限定で可能な魔力の認識法が有った。試してみないかい?」


 リインが提案したのは、(パーソナル)(アビリティ)を応用するものだった。

 セトラーの個有能力であるPAは、何らかの神からの〈神威〉供給によって発動していることが分かっている。

 本来魔力操作は三種の魔力源のいずれかをいくらかでも動かすことから始めるのだが、セトラーが保有さえしていれば無条件で発動できるPAを利用して、間接的にでも魔力の動きを感知できないかという考えだった。

 PAを持たないセトラーもいるにはいるが少数派だ。リインは丘崎も一つくらいは持っているだろうと思っていた。


(PAね……。×××はそれらしい能力を持っていたようだけど、正直使える気がしないんだよな。

 いや、×()×()×()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのような……)


 眉をしかめ、丘崎は思う。


「セトラーはPAの扱いは本能的に分かるらしいんだが……」


 PAと聞くなり顔を曇らせた丘崎を見て、リインが心配そうに声をかける。


「本能的に?」

「ああ、そう聞く。ベネットやメグミが言うには、この世界に来たときから『それが使える』という自覚が芽生えるという話だ」

「……ふうん?」

「無いかな? そういう感覚は」

「……」


 丘崎は首を捻る。


(さて、俺自身、自分が通常のセトラーと同じ存在といえる物なのかも怪しいとこが有るからなあ。……とりあえず×××の記憶から、×××がPAを使った時の記憶を引っ張り出せるかどうか)


 不安は有るが、物は試しと思う事にする。


「俺がセトラーとして出来が悪いのか、正直に言うと感覚は無いんだけど、やるだけはやってみる」

「……ああ。もし駄目でもその時は地道にやろう。どうせマスターの方から始の生活は保証するって約束したんだ。多少時間がかかったって文句は言わせないさ」

 

 悪戯っぽい笑顔で言うリイン。彼女にしては珍しく、年相応の少女らしい表情だった。


「……出来れば早いとこ、一方的に世話になる状態からは抜け出したいんだけどなあ」


 丘崎はぼやくように言うが、リインの意図を素直に受けて肩の力を抜けたことを心の中で感謝した。

 

(さて、×××はどうやってたんだったか)


 モザイクのような記憶の海から、PAを使っていた時の感覚を探す。


(×××のPAは、確か身を隠す能力だった……。どうやって隠していた……?)


 目を瞑り思考に集中する丘崎を見てリインは優しげに笑い、音を立てないように持ってきた本を再び開いた。

 迷彩による擬似的な透明化。それが×××がかつて持っていたPAだった。


(カメレオンや一部の虫のように、周囲に溶け込み姿を隠す……)


 沈んでいく思考。意図しての事ではなかったが、先に×××の記憶を記述しまとめていた事も記憶の発掘を容易にしてることが感じられた。

 より深く、より明確になっていく記憶。

 瞑想したまま微動だにしなくなった丘崎を、リインが見つめていることにも気付かなくなっていた。


――しかし本質はそうではなかった


(何だ? 今何か……)


 丘崎の思考を、何かが横切った。

 老人のような、枯れた声。


――本質が遠ければ良かった

 

(これは、何だ? いや、()だ?)


 それが丘崎自身の中に有る物だということは分かる。だが、それは「丘崎始」ではなく、「×××」でもない。


――本質とは異を己に許す力だった

――本質が近いが故に、想定を外れた

――本体は宿主の力に取り込まれた

――力そのものと化し、宿主に寄生体を許させた


(何かを、おれ自身が分かろうと、している。でも、これを()()()()()()()()()()()()……!?)


――既に本体は一つの力に落ちた


 一瞬の雑音。


――なら、力として業を果たせ。


 また違う誰かの声が頭に響いた。

 洋画の男性人物の吹き替えを思わせる、独特な重低音だった。


(来る。……え、何が来んの!?)

 

 確信を得るも、それが何への確信なのかすら分からず丘崎は混乱する。


――〈対界侵蝕(カイモン)


「レベル2 通常形態アクティブ


 脳裏に〈PA〉の名と思われる物が刻まれ、無意識に丘崎の口が動いた。



 








 今より少し低い視線。

 海辺の故郷。

 空の宝箱の隠れ家。

 

 黒に近い茶色の髪と日に焼けた肌の少年が振り向いた。

 濃い青の虹彩には、出会った時から変わらない年齢不相応な疲れの色が浮かんでいた。


――×××!


 リインは叫んだ。 

 慣れ親しんだはずの少年の名は、何故か出てこなかった。










 

(今見たのは、何だ? あの日焼けした子供、どこかで見たような……)


 意識の復旧した丘崎は、急に頭に浮かんだビジョンに困惑していた。

 思い出すというより、何かが自分の中に流れ込んでくるような感覚だった。

 そして、それとはまた違う違和感が進行形で有る事に気付いた。


「これは、一体……」


 丘崎は彼自身が認識していた空間が一気に広くなったことを感じた。

 また、五感が敏感になっている。特に鼻や耳だ。

 平時聞き取れないノイズの様に聞こえる。

 そして、リインのことが良く分かる。姿勢、状態、僅かながら感情の起伏まで。


「リイン、何か変だ。そっちは大丈夫か?」


 自分の物でない困惑の感情を感知して、丘崎が言う。


 リインもまた、丘崎と同じ状態になっていた。

 故に、丘崎からの自身へ向いた心配の感情を感じて我に返った。


「あ、ああ、始、これは」


 双方の困惑が絡み合うことで、お互いが同じ状態であることを強制的に感知させられていた。


「俺のPAだと思う。こんな事になるとは思って無かったんだけど」

「これは、感覚が融合した、とか、そういうことなのかな?」

「何なんだろ。浮かんだ感情までお互いにいくらか読み取れて、るよな。俺だけじゃなく」

「ああ、始が私を心配している、ということを感知して我に返ったんだ」

「さ、さいですか」


 丘崎は心配したことを本人に読み取られ、気恥かしいものを感じて言葉を濁した。

 そんな丘崎の羞恥を感知してほっこりするリイン。

 遮る物の無い感応により、視線だけでなく生温かいものを含んだ情動が届いて来る。丘崎はますます何も言えなくなった。


(獣相系というのは……、耳が二対有るのか)


 感覚を共有して色々と試していた途中で、丘崎はふとリインの身体に違和感を覚えた。


(ああ、これかい?)


 言葉を発さずにリインが横髪をかき上げると、そこには頭の上の獣の耳とは別に毛の生えてない人間の耳が有った。


(こっちが本当の耳だね。頭の上に有るのは偽耳殻(ぎじかく)と言うんだ)

(触って見ても?)

(ああ、構わないよ)


 頭ごと差し出してくるリイン。丘崎が恐る恐る偽耳殻に触れる。


(ふにふにだ。触り心地良いなこれ)


 犬猫などのそれと同じ、毛に覆われた軟骨の感触がした。

 リインも人に触られるのは度が過ぎなければ気持ちが良いらしい。

 嫌がられないラインも、気持ちが良いラインもPAを介して感覚として伝えられて来た。


(意外と厚さ無いんだよ)

(穴が無い。本当に耳じゃなくて耳状の飾りになってるのか)

(マスターが言うには外部の魔力の動きを掴むセンサーのような物らしいね。そこで受けとった情報を聴覚や嗅覚に変換することで本当のキツネ並みの感覚を成立させてるんだ。マスターの角とかもそういう役割を果たすらしい)

(……キツネ並みの感覚を成立、か)

(どうかした?)

(いいや、何でもない)


 思念で会話しながら一通り偽耳殻をふにふにした丘崎は満足気に息を吐きだす。


(とりあえず解除するか……)

(あ、始、それはちょっと待ってくれ)


 解除を意識する寸前、リインが制止する。


(どうかしたか?)

(この効果、使えるかも知れない)

(……! 魔力操作に?)


 精神の交感のおかげか、思念を発さなくともお互いが何を意図しているのかを察することが出来るようになっている。


(ああ。この状態なら私が界威を操る感覚をそちらが感じ取れるかもしれない)

(なるほど、有るかもな)

(試しにやってみよう。解除はそれが終わってからでも良いだろう?)


 そう言って、リインは再び界威から魔力球を構築する。

 丘崎は、リインと同調してそれを感じていた。


(〈界威〉、それは外界にある物。沸き出る物でなく授けられる物でもない。借り、集める力……)


 PAによって得たリインの感覚から、丘崎は魔力というものを垣間見る。


(どうかな?)

 

 リインが魔力球を霧散させて見せる。


(よし、やってみる)


 丘崎はリインを真似て右手を上に向ける。

 すると、リインが丘崎と向き合う形で座り、丘崎の右手を両手で挟むようにする。

 左手は下に添え、右手は向かい合わせで空間を作る。

 彼女が何をしようとしているのか分からず、丘崎は顔を上げる。


(リイン?)

(この状態だったら、始が出した魔力を私が微調整できると思う。私の感覚を使っていきなり大量の界威を引き出したりしたら、おかしなことになるかもしれないからね)


 全くの善意による行為であることがPAで感知出来る。

 そうものなのかと丘崎は了承して頷くと、ふっと笑みを浮かべた。


「ところで手柔らかいなリイン」


 ちらりと頭をよぎった思考を口に出して伝える。


「感情察知出来ちゃうからもう遠慮無いね。……君の手は意外と硬いよ?」


 隠そうとしてまた暴走するよりはと、二人とも素直に言って笑った。

 

(さて、〈界威〉か。外の魔力を感じるには、自己をより強く感じれるようになる方が良いのか。ならば……)

 

 俺は何だ


 丘崎始


 元日本人


 セトラー


 冒険者見習い


 変り種メンバー


 生後二日目?


 ×××であったもの?


 私は、


 俺は、


 ……


 ……


 ……


 リインは丘崎に〈界威〉の高まりを感じていたが、それが高まりすぎているように感じていた。


「始、落ち着くんだ」


 自身の精神の揺れが丘崎に伝われば逆効果になりかねない。

 努めて冷静にリインは言った。

 だが、合わせた左手は熱を持ち、丘崎の右手に僅かに力を込めてしまった。

 リインからすれば、それはミスだったかも知れない。


(……暖かい。これは、俺ではない。そう、リインだ。彼女が、そこにいる)


 しかし、それによって丘崎は明確なリインの体温を感じて立て直す。


(心配してくれている)


 丘崎は、自身の左手を伸ばし、リインの右手に乗せた。


(やわらかくて、小さい。背は同じくらいなのにな)


 リインは驚くが、丘崎の揺れていた精神が安定していることを同時に察し、好きにさせる。


(在り難い、在り難いが、居てくれる)

(リインは居る。俺も、居る。自分が何者なのかもあやふやな俺だけど、居る)

(やれる。そう、自分が何者かでもないのか)

(そこに居れば、中に〈霊威〉は有り、外に〈界威〉は在る。なら、なれば)


「――在らしめろ――」


 再び、口から漏れた無意識の言葉。


 その日、丘崎は魔力操作の初歩を体得した。

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