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 挿絵(By みてみん)

 PM3:26

 大阪市北区 淀屋橋

 

 久しぶりの快晴。

 御堂筋の一部で船場と中之島を結ぶ淀屋橋周辺は、大阪市庁舎を中心にオフィス街が広がる。

 そこを流れる土佐堀川は、大雨の影響で水位が上昇し、茶色く濁った水が流木などを巻き込みながら、ごうごうと流れる。

 淀屋橋駅近くにあるビルに入る「カフェ ダ・カーポ」が、待ち合わせ場所。

 大介とマコ、そしてあやめは、川を見下ろすカウンターで横一列、カフェオレを傾けながら話を始めた。

 女性の方が、いいアドバイスができるのではと、大介があやめを呼んだのだ。

 「あれは、京都旅行の翌日でした。

  ちょっと疲れてて、10時半に起きたんです。

  日課で、いつもケータイを確認するんです。

  高校時代からなんですが、彼、メールを入れるんです。

  いつもなら、彼からモーニングメールが来るんですが、この日はいくら待っても来ませんでした。

  珍しいことがあるのね、と、その時は気にしていなかったんですが。

  翌日も、いくら待ってもメールは来ませんでした」

 「疲れていて、億劫になったとか」

 あやめの意見に、マコは反論する。

 「いえ、どれだけ疲れていても、彼は必ず“おはよう”ってメールを入れるんです。

  何もなくても、毎朝必ず」

 「それが、突然途切れた」

 「はい」

 「別れた時、何かトラブルとかは?」

 「全く。

  皆さんと別れた後、八坂、平安神宮と廻って、京都駅まで見送りましたが、トラブルといったことは、全然。

  彼の様子も、いつもどおりでした」

 「ちなみに、今朝は?」

 首を振る。

 「あの日以来。

  電話もしたんです!

  それでも、向こうが電話に出なくて・・・」

 声の様子からも、彼女の深刻さが伝わる。

 「一方的に別れた・・・にしては無礼よね?」

 「あいつ、パソコンに入れ込むと、熱中して外部と孤立することがあるからな。

  高2の時、自分でパソコンを組み立てた時もそうだった。

  でも、その時でさえ、マコとはあいさつ程度のメールはしてた。

  こりゃ、何かありそうだな?

  とりあえず、あいつと同じ大学に通ってる友人に、電話を掛けるよ。

  確か童森は、北大阪工業大学だったな」

 そう言って、大介は席を離れた。

 「他に、気になった事とかある?」

 あやめがさらに聞く。

 「・・・そう言えば、彼のブログ!」

 「ブログ?」

 「はい。

  彼、その日の出来事を、そこに書くんです。

  もし京都の事を書いていたら、生存していることがわかるかもしれません」

 マコはスマートフォンを取り出す。

 「更新されていることを祈るだけね」

 と同時に、大介が戻ってきた。

 「あいつ、大学にも顔を出してないらしい。

  メールにも出てないそうだ」

 「風邪で休んでるとか。

  それに大雨で、自主休校したのが尾を引いてる可能性もある」

 「いや、それはない」 

 「そう断言できる根拠は?」

 「昨日の夕方に、大雨は止んだだろ?

  その時に、サークルの先輩が、童森のいる寮を訪ねたそうだ。

  貸していたCDを返してもらうために。

  だが、行ってみると、インターフォン越しにこう言ったそうだ

  “今、大事な用事があって、手が離せない、明日のサークルで必ず返す”

  あいつは高校生の時から、約束を破ったことのない、有言実行の男だ。

  休むにしても、誰かにメールを入れる。

  たとえ、私用でもな。

  約束を破るなんて、ありえない」

 「どのみち、彼は生きてるのね?」

 「そういうことになる」

 「どうして、そんなことを?」

 「彼が、ここまで徹底した沈黙を続けるには、何かわけがあるとしか」

 マコが、ブログを開いた。

 見ると、やはり更新されていた。

 だが、その件数は2件。

 1件は、京都での出来事。

 「もう1つは?」

 最終更新は、今日の午前零時。

 内容は、ただ1つ。

 “KOKO”

 「ココ?

  それって・・・彼が、私たちに見せたコミュニケーションアプリのキャラクターの名前じゃない」

 「まさか、スマホ廃人になったか?」

 「そんな・・・」

 その時、あやめのケータイが鳴った。

 相手は、隼警部。

 「もしもし、どうしたんです?

  ・・・北大阪工大のメインサーバーが攻撃された!?

  それで・・・」

 通話を終え、大介に近づく。

 「今から16分前に、北大阪工大のメインサーバーが謎の攻撃を受けたわ。

  校内全てのパソコンが使用不可能。

  代わりに、そのモニターにはなんて表示されたと思う?」

 「?」

 「KOKO」

 「おいおい、それじゃあ」

 「童森タダシ。

  重要参考人として、引っ張った方がいいかもね。

  それと、気になる情報も」

 「これ以上、何があるんだ」

 「そのモニターには、こうも表示されたらしいわ。

  “I’ll freedom”

  “My name is PHANTOM”」

 大介の肩が震えた。

 「どうやら、いつかのリオさんの恐れていたことが本当になったみたいね」

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