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亜門大介帰国と同時刻。
現地時間 AM2:41
日本・大阪府南部
―――・・・阪和自動車道、松原インターで多重事故発生の通報。内数台が炎上中との・・・
―――・・・近畿自動車道で、トラック横転事故発生。付近の・・・
―――・・・こちら、交機507。
先程、八尾料金所を、正体不明の何かが通過。
なんだ、あれ・・・車じゃない!
―――本部から各移動。現時点を以って“トクハン”が正式に介入する。
各員は事故処理、人命救助、並びに、吹田JCTから六甲山方面へ走る、全ての高速道を封鎖せよ。
雨粒がフロントガラスを叩きつけ、流れ落ちる。
非常駐車帯に停車している車の中で、1人の女性が、ケータイで話をしていた。
「南阪奈道、阪和道、近畿道。事故現場が、北上しているわね」
―――やはり、相手は“Lash967”か。
「そう見るのが、適確ね。
だから言ったでしょ?私の情報に、狂いは無いって」
―――問題は、奴を吹田へ到達するまでに止められるか。
「この肌寒い雨と湿気こそ、何よりの強みですよ。車のタイヤのスリップを除けば、ですがね」
―――そうだな。
・・・トクハンへの捜査協力が出された。奴さん、もうすぐ東大阪JCTを通過する。
間に合うか?
「目と鼻の先です。ご心配ありがとう。ハヤトパパ」
―――その呼び方は、やめてくれ。できれば、仕事中は。
それに、あの子は知らないんだ。いや、知って欲しくない。嫌でも考えてしまうよ、自分の子の事を。
「・・・何があろうと、仕事は済ませます」
彼女はケータイを切り、ワイヤレスマイクに接続する。
「でも、知るかもしれない。・・・もうすぐ」
彼女は青いシングルランプを取り出すと、愛車の屋根に取り付け、ギアを切り替え、アクセルを踏み、飛び出した。
その車―パールホワイトの日産 フェアレディZ Z33は。