妹「私のお兄ちゃんは魔法少女」
「ねぇ」
「ん?」
「お兄ちゃんさぁ」
「魔法少女になってよ」
「どうした突然」
「気でも触れたか?」
「ちげーよ」
「ただ何となく魔法少女が似合うんじゃなかろうかと思ったたけだよ」
「ふーん」
この妹は突然何を言いだすのかと思えば
また意味の分からないことを言いだしてから。
だからお友達からキチガイ認定されているのではなかろうか。
今現在俺は家のソファーに寝転がってゲームをしている。
我が妹君はテレビの前に座り込んでコチラもゲームをしている。
ちなみに今日は日差しが気持ちいい日曜日だ。
「で」
「一応聞くが魔法少女になるってどうやって?」
「まず服装から決めていかなきゃ駄目でしょ」
まぁ確かに何事もまずは形からではあるな。
「どんな?」
「フリルのひらひら」
「俺が着るのか?」
「お兄ちゃんなら大丈夫」
「たぶん似合うと思うから」
「そうか」
なら大丈夫か。
「次はステッキね」
「これもあたしが用意するわ」
「あとカチューシャとか仮面とか小物を着けるといい感じになりそうじゃない?」
「そうか」
なら問題ないな。
※※
「お兄ちゃんできたよ」
「妹特性のフルコーデ」
「いい感じじゃない?」
「イマイチ分からんがそういうものか」
「うんうん」
「それでさ、魔法少女らしく困っている人を助けにいこうよ」
「そういうものか」
そうものらしいのでそのまま家を出て困っている人を助けようと思う。
家を出てから数分もしないうちに困っているお婆さんを発見した。
重い荷物が大変そうだ。
よし、助けよう。
まず魔法少女らしくすぐさま駆け付ける!
ーーダダダダダ
「ん?」
コチラに気づいたようだ。
ーーダダダダダダダダダダ!!
「ほ、ほがぁ!」
コチラを見て顎を外しているらしい。
しょうがない。
魔法少女だからな。
颯爽と駆けつけて、多くを語らずに助ける。
「ほがががが」
「…代わりに持っていこう」
そういうと俺は荷物を持ったままその場を素早く離れた。
素晴らしい正義の味方。
堂に入った魔法少女っぷりであった。
…荷物はそのままお婆さんの持ち物の中に住所と思われるものが書いてあったのでそこに届けた。
※※
道を歩いていると
「い、いやああ!」
声が聞こえた。
「お、おい」
「別に腕を掴んだわけでもなくて」
「声を掛けただけじゃなねぇか」
「そうやって何かするつもりなんでしょう!」
「これ以上何かしたら警察を呼びますよ!」
ふむ。
少女が男に言い寄られているのか。
ここは魔法少女が助けてあげよう。
ーートントン
「ん、だれだか知らないが今取り込みty」
「おわぁ!なんだコイツは!」
まったく。
失礼な奴だ、折角妹がコーデしてくれた魔法少女姿だというのに。
そんな奴はお仕置きのステッキだ。
そおぃ!
ーーバキィ
「おぶぅ」
ーーボカァ
ーードコォ
「うおぇぇ」
…あのあと二、三分の間お仕置きをした
これでコイツも悪さはしなくなるだろう。
おっと、少女も忘れてはいけない。
「ヒィッ!」
かわいそうに。
こんなに怯えて、ほら魔法少女だよ。
「……きらりん」
「いやあああああああ!」
走ってしまったようだ。
ふむ、追いかけなくてはならない衝動に駆られてしまう。
ーーダダダダダダダダダダダダダ
「ヒィッ!いやあぁ!許してぇ!」
まだ彼女には問題があるようだ。
いけない、魔法少女として解決しなくては。
ーー突然少女が糸が切れたように倒れこんだ
気を失っているようだ。
安静にできるところに非難してあげよう。
※※
なかなか魔法少女が板についてきたのではないかと思う。
さてー
「キャアア、引ったくりよおおお!」
やれやれ、人気者はつらいな。
女性に近づき、
「…私に任せろ」
魔法少女らしく宣言してあげた。
「いやあああ!」
ははは、そんなに興奮しなくても。
だが今の姿は魔法少女だからしょうがないか。
よし、追いかけよう。
「上手くいったぜ」
「このカバンには幾ら入ってんだろうなぁ」
ーーダダダ
「うん?」
ーーダダダダダダダ
「後ろから音が」
ーーーダダダダダダダダダダ
「ギャアアア、変態が追いかけてやがる!」
「逃げろ!あれに捕まったらヤベェ」
なかなか早いな、あの引ったくり。
しかし今の魔法少女である俺に不可能はない。
「コラアア」
「貴様らまたんかああ!」
警官がコチラを追いかけてきたようだ。
まったく、来るのが遅いぞ。
しかし魔法少女としてこの犯人は逃すわけにはいかない。
ーーそのままデットヒートは三十分にもおよんだ
「フヒィ、ひぃ」
「はぁ、はぁ」
「ま、またんか」
あと少しだ、よし。
賭けにでよう。
魔法少女に二言はない!
「とおおりりゃ!」
ーーガバァ
「ヒィ、ひゃあ」
ーーバタァ
よし飛び掛かってダイビングキャッチで見事捕まえたぞ。
「お、お助けぇ」
「おまわりさん助けてぇ」
見苦しい奴だな。
素直に逮捕だ。
「公共に対する不埒な格好」
「それに格様々な通報からあった」
「危険な変態は貴様だな!」
「署に来てもらおうか!」
ーーガチャ
え?
俺が逮捕?
魔法少女なのに。
ーここで俺のスペック
身長185cmでムキムキのマッチョ。
格好はフリルがふんだんにあしらわれたレオタードのような姿。
玩具のステッキには血がついている。
顔には正体がバレナイため目元を隠すマスクをつけている。
年齢30歳の魔法使いだ。
立派な魔法少女の要素がふんだんに刷り込まれているじゃないか。
まったく。
※※
後日
「ニュースです」
「先日窃盗や暴力、わいせつの容疑で捕まったコスプレのような格好の男が~」
「あ~あ、あたし言ったじゃん」
「よく考えて行動してよねって」
「ホントマジ」
「お兄ちゃんは魔法使いから魔法少女になっちゃたね」
おしまい