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第六話 平和はぶち壊すもの(キリッ




「旦那様・・・ハイ、あーん♪」

「あーん・・・じゃない、今授業中だからね!?」


キーンコーンカーンコーン


「たった今休憩時間に入りました、これで問題無いですよね!」

「大有りだよ、むしろ問題しか無いよ!」

「出された物は食べないと勿体無いお化けが出ますよ?」

「今時でるかぁっ!」


結局我らが兄貴に引きずられてやってきた生徒会室。

会長コンビがなにやら言葉を交わす中で、のんびりティータイムとなった僕らがいる。

それもこれも、いきなり引っ張ってこられて借りてきた猫のようになってる僕を見て会長が


「まぁ気楽にいこうぜ?」


と言ったためである、うん。

今は会長自らの手による手作りケーキと副会長が厳選したこだわりの茶葉を振舞われている。

ココ、学校だよね。なんでこんなにいい設備と材料があるのさ?

しかも紅茶はともかくケーキも美味しいのが驚きだ・・・作り手に似合わず凄く上品な味がした。


「見張るようには言われていましたがそうですか・・・護衛も」

「あぁ、らしいぜ?

 おい、槌谷ァ・・・なんか失礼なこと考えてる気がすっけど、ちっとは落ち着いたか?」

「あ、はい」

「だ・か・ら旦那様~、あーんですよ?」

「叶さんはちょっと黙ってて!!」


食べてる時に意外すぎて思わず「美味しい」ってもらした僕が悪かったのか・・・

自分の分まで食べさせようとしてくる叶さん。

シチュエーションとしては好きだよ?あぁ、こんなんでも僕だって男さ。

でも幾ら嬉しくてもニヤニヤしてる会長と冷め切った目でこちらを見つめる副会長を前にして平然と出来るわけ無いよ!!

まあ二人きりでも緊張して絶対出来ないけどね!!


「高天原…少し控えなさい」

「はっはっは、オレはどっちでもいいがな~。

 説明終えるまでクラスには戻れネーから、待ち時間長い方がサボれるし」

「志堂?」

「冗談だ、すぐ始めよう」


飄々とした態度を保っていた会長が副会長に絶対零度の眼差しで見つめられた途端、きりっとした顔をして話に入ろうとした。・・・会長コンビのパワーバランスを垣間見た気がする。

見た目的には会長の方が凶暴そうで危険そうで強そうなのになぁ。


「つー訳でだ。高天原のお嬢、話が済んだらソイツ好きにさせてやっからちっとだけ話聞いとけ」

「好きにシテ良いんですか!」

「あぁ好きにヤッてしまえ。出来れば俺に関係無いところで」

「会長、アンタって人はぁぁ!?」

「他人の!不幸や!不条理など!如何でも良かろうなのだぁ!!」

「勝手に人の自由を決定しないで下さい!!」オラオラオラオラオラ!!

「満更でも無いんだろ?羞恥心で拒んでるようにしか見えんぞ」ムダムダムダムダムダ!!


割合本気で拳を振るってるのに、イイ笑顔で全て捌く会長。

くっ、剣を持って無いとは言えここまで当たらないなんて。


「旦那様は恥ずかしがり屋さんですね~?」

「違うよっ!?」

「志道、槌谷も・・・・・・楽しんでいるのは分かりますが、あまり遊ばない」

「僕は楽しんでませんよ!?」

「遊んでない遊んでない、からかってるだけだ」

「余計たちわるいわッ!!」

「はっはっは、みぢゅくものめが!!」

「ソレを言うなら未熟者ですよね!それ噛んじゃってるよ!」

「違うな、貴様はそのくらい程度が低いということだ!!」

「おのれ会長ォォ!!」


殺人剣の剣技も織り交ぜつつラッシュ・ラッシュ・ラッシュ!!

しかし会長もあわせるようにこちらを迎撃するラッシュを繰り出してくる。

今、僕は遥かに高い壁に挑戦しているというのか・・・あれ・・・何で僕こんなことしてるんだっけ


「・・・高天原、もうあの二人は放っておいて先に伝えておきます」


そんな中、副会長はいつまでも話を始めない僕らに業を煮やしたのか一人で先に進めはじめた。


「はい?」

「まず、ココに居る間は貴方はただの生徒で、基本的に特権は使ってはいけません」

「そんな、旦那様とのラヴラヴスクールライフが!?」

「・・・その発言が出る辺り規制理由も窺い知れますね、絶対遵守するように」

「あぁぁぅぁー」

「次に、貴方のSPの事ですが、流石に校舎には入れないため、一応体面上私達が護衛をする事になっています」

「二人きりの時間も無いんですか!?」

「元々SPだらけでしょう?安心してください。私達もそこまで暇ではありませんから」

「俺はメンドイだけだがな」

「会長、喧嘩・・・慣れすぎ、でしょう・・・っはぁ、はぁ」


全力ラッシュを浴びせ続けても一発も当たらない・・・我が校の会長はバケモノか!

僕は息切れし始めているのに、まったく持って余裕しゃくしゃくで―――


「志道、放課後に体育館裏に来なさい。じっくりお話しましょう」

「まぁ待て、話し合おう!」

「えぇ、ですから放課後に体育館裏で」

「おっと今日は放課後に用事があるんだった。スマンがいけそうに無いな!」

「では夜に、貴方の家まで行きましょう」

「何でソウナル?」

「彼氏の家に遊びに行く事がおかしいですか?」

「説教のために来るのは恋人関係無いよな?」


―――も無かったようだ・・・言葉だけで翻弄するなんて、実は副会長ってすごい。改めてそう思った。


「旦那様~・・・私達の甘い学園生活が、台無しですよ~」

「・・・ハハハ、しょうがないよね(ごめん、僕は心底助かったと思ってる)」

「なんだか嬉しがってるような気がします」

「HAHAHA、そんなこと無いよ?さぁ、そろそろ授業にいかないと」


ジト目で見つめてくる叶さんから逃げるようにその場を離れようと―――


「槌谷。貴方も極力一人にはならないように、との事です」


したら後ろから声をかけられた。


「はい?」

「幾ら年中発情期で頭の中がピンク色でケダモノのようであれ・・・

 彼女はこの街を牛耳る一族の跡継ぎです。

 努々、お忘れなきよう」

 「・・・お前、割と遠慮ないよな」

 「知らなかったんですか?私はヒトに遠慮などしませんが」

 「いや、改めて思っただけだ」

「え、叶さんが跡継ぎなのは知ってますけど・・・ソレと僕に何の関係が」

「私が野心あるものならば、そうですね・・・

 貴方を拉致したうえで高天原グループから強請りますか」

「は?」

「ふむ、1000万・・・いえ、そのなつき具合なら5000万ぐらいまでは何とか絞り取れそうですね」

「いや、あの」

「高天原は、個人的に自由に出来る金額も権力も一般の比では無いんです。

 なにをしたかは知りませんが、貴方はその子に対する弱点となりかねない。

 貴方の身一つで大金が動く可能性がある事を自覚しておいてください」

「ちょっと、待って」


いやいや、僕一人にそんなお金なんて「旦那さま~♪」ダメだ、叶さんなら何も考えず使いそうだ!

そんな未来が見える!


「まぁ攫われた所で俺と生徒会で動くがな!」

「生徒会ってなんだっけ・・・」

「俺の手足」

「学園の運営補助の為、生徒による一部統治機関ですね」

「誘拐事件は担当しないよね!?」

「残念ながら運営補助の為、高天原に害をなすのであれば一部特権を得ています」

「生徒会だよね!本当に一般生徒だよね!?」

「残念だが生徒だ・・・しかし、一般人よりは強いぞ?」

「そんな生徒会が学園を治めてたなんて僕の平穏は何処にいった!?」

「世の中には知らないだけで裏で色々やってる、なんて事も多いよな?」

「今まさに平穏をぶち壊してた本人が言うことかぁ!」

「そう、オレは偽りの平穏を打ち破ったのだ」

「隠してたなら真の平穏が訪れてから打ち破って欲しかったよ!!」

「高天原のお嬢と付き合うならすぐに破られてたさ、主にその性格でな」

「確かに型破りだけど!」「旦那さま、酷いです~・・・」


だんだん混沌と化して来たその場に混ざることなく、

全く動じず紅茶を口にしていた副会長がポツリと言った言葉が響いた。


「そろそろキリが無いので止めますが、次の授業が始まりますよ?」


はて、次の授業・・・?と軽く思い出した途端、一気に顔から血の気が引いた。


「・・・しまった、課題の提出が!!」

「だ、旦那様~待ってください~!」


課題の提出が遅れると休日を平気で潰してくる先生の授業だ。

遅刻しただけならともかく課題回収までに間に合わなかったら僕の週末が勉強漬けになってしまう!!





「・・・行ったか」

「えぇ」

「これから忙しくなんのかね?」

「そうでしょうね。あの子も何を考えて此処に転入してきたのやら」

「そりゃぁ・・・何も考えて無いだろ、近くに居たがっただけで」


二人が走り去った後、静まり返った生徒会室。


「ソレも確かにあるがね」


そこに新たな声音が混ざった。


「誰です?」

「この声は・・・みつきちか、居たなら混ざれば良かったろ?」

「あいにく、今は声を飛ばしているだけさ」

「この声は――?」

「きにすんな、副GMだ」

「・・・あぁ、なるほど。彼女があの子の手綱を握れなかったわけですか」

「手綱を握るほど縛るつもりが無いだけさ」

「俺等にしわ寄せするの止めろよ、マジで」

「その部分は与えた分の特権ゆえの義務と思って欲しい」

「ま、なんかあったらフォローと殲滅だろ?」

「叶の保護を最優先にしておくれ、他は好きにしてもらって構わないけれど」

「はいはい、了解了解。ほれ、帰れ帰れ」

「くれぐれも、よろしく頼むよ」


再び静まり返った生徒会室で、溜息をつく会長と・・・イイ笑顔でその肩を掴む副生徒会長。


「・・・ちょっと話してただけだろ?」

「朝、遅刻してきましたが・・・仕事を頼んできたのは彼女ですか」

「あぁ、事務的に頼まれただけだ。何も心配するような事は・・」

「そうですか。時に、志道は授業もサボりたいようですし、まだ時間はありますよね」

「おっと、オレも課題提出が」

「次は保体ですよ?」

「あぁ、急に身体を動かしたくなったんだ」

「奇遇ですね、私も汗をかきたくなったところですよ」

「・・・急用が出来た、気がするから俺は行かねばならん。少なくとも人の居る場所へ」

「逃げられる、とは思っていませんよね?」

「HAHAHA、逃げようとも思って無いぜ?うん、本当に」

「では、たっぷりお話しましょうか。保体の実技もかねて、運動しながらね」

「お前も割りと職権濫用するよな・・・」


青褪めた表情の会長を掴んだまま、副会長は生徒会室のドアを締めた――暗い笑みと、怒気を放ちつつ。



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