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第五話 平穏クラッシュ!!


結局二時間ほどしか眠れてない・・・眠い、だるい、死にそうだ。


「みっちゃーん!私の制服どこー?」

「下だ、私の鞄の下にある」

「この箱ー?」

「そう、高天原Sって記入がある箱さ」

「あ、あったあったー♪」


今日は更に疲れを加速させる二人がいるし・・・もう家で寝てて良いかな。

学校?そんなものはサボればいいし。


「婿殿、学校までの案内を頼む」

「ふわぁぁ・・・そのくらい美月さんも知ってるだろ。書類も出しにいってるみたいだし」

「いや、私じゃなくてだな」

「・・・え」

「私は少し本邸に戻る用事が出来てしまった」

「マテマテマテ、ソレはちょっと不味いんじゃないか」

「だから・・叶のお守りを頼みたい」

「いや、それボクの貞操が危ないから・・・他のSPとかは?」

「影の如くついてはいるが校内では万全とはいえないだろう?彼らは部外者だ」

「用事を後回しにしておくとかは?」

「緊急の要件でね、ソレも不可能だ」

「叶さんも一緒にそっちに連れて行くとか」

「敵襲があったら危ないだろう。私一人なら幾らでも手はあるが」

「幾ら危なくても絶対に死なないんだろ?」

「君、『学校に連れて行くの面倒だから危険地帯に飛び込んできて~?』なんていえないだろう」

「・・・」


確かにいえない。って言うか外道だな。


「そもそも死なないから死んでもいいという発言はかなり酷くは無いかな、婿殿」

「酷いのは認めよう・・・でも昨日頭ぶっ飛ばした君が言うことか」

「証拠を見せろと言ったのは婿殿だぞ、しょうがない犠牲だ」

「くっ・・・確かに言ったけど」

「私も何も楽しんで撃った訳では無いからね。迎撃ならば楽しんでいることも無くは無いけれど」

「激しくダウトしてやりたいところだけど今は流しておこう」

「いい判断だ。ダウトしていたら引き金に指を掛けていたかもしれない」

「・・・さ、叶さーんそろそろ登校時間デスヨー?」

「も、もう少しだけ待ってくださ~い!これ以外と着難いんです~~!」

「後5分だけね!」


どたばたと騒ぎまくってる二階にテキトーに声をかけて美月さんから逃げ始める。


「婿殿」

「ちゃんと連れて行くって!」

「叶は、護衛よりも体質の事がばれないように注意を払ってほしい」

「はいはい、そりゃ驚くだろうしね」


適当に美月さんの言葉に相槌を打っているとタイミングよく準備を終えた叶さんが降りてくる。

・・・よし、さっさとつれて逃げよう。ここにいたら僕が殺される。


「お待たせしました、旦那様!」

「だから旦那様やめい!」

「旦那様を下郎と呼ぶ妻はいませんよ!」

「その二択しか無いのか!?」

「オールorナッシングです!」

「こんな時に使う言葉じゃない!」


口元に手を当ててこれ以上喋れないようにしつつ叶さんを外に引きずり出して行く。

・・・今日だけだよな?家から一緒に登校するの。


「「いってきまーす!!」」

「私もすぐに向かうからソレまで頼んだぞ、婿殿!」

「くどい!」

「大丈夫ですよ~、旦那様は私が守りますから」

「叶さん間違ってる!それ逆、逆だから!」

「でも命がけで守られても嫌ですし~、旦那様は普通の人間ですから」

「命とは投げ捨てるもの、なんてそこまで危ないことしないから!!」



「……本当に頼むよ、婿殿?」



  =  =  =


(ヒソヒソ)

通学路で気づいた。

(ヒソヒソヒソ)

何ナチュラルに手を掴んで登校してんだ・・・ボク。


「旦那様、今日は強引です♪」

「そりゃーみっちゃんから逃げたい一心でね・・・」


(ひそひそひそひそ)

あぁ・・・・周りの視線が痛い。

旦那様って言われた瞬間更に周囲の温度が下がった気がする。

幸い、このルートなら知り合いがいないだけマシと思うしか無いのか。

ふふふ、なんだか白い視線がザクザクとボクを貫いている気がするゼ。


「旦那様・・何か顔色が面白いことになってますけど」

「大丈夫、もう少ししたら青で統一されるから」

「よく分かりませんが・・・辛いならお休みします?」

「ただの寝不足だから、うん。一時間目だけでも保健室で寝てれば・・・」

「・・・保健室で、授業中に二人きり・・・先生にはお父様から言ってもらって席を外してもらえば」

「おや、なんだか急に元気が出てきたゾー」

「そうですか?では学校に着いたら保健室に行きましょうね♪」

「元気になったから行かなくていいよね!」

「元気になったからむしろ行くんですよ?」

「行かないよ!なんかボクのセンサーが危険だって言ってるし!!」

「そんな危険なことなんて有りませんよ!保健室に何のためにベットがあると思ってるんですか!!」

「病人のためだ!!」

「はい、ですから寝不足で倒れそうな旦那様をゆっくりと介抱するだけです!なにを想像してたんですか?」

「昨日からの叶さんの言動から想像できることだな!」

「じゃぁ大丈夫ですね、ただの介抱ですから。いきましょう!」

「ちなみにどんな介抱するつもり?」

「ゆっくり眠れるように隣で添い寝を・・・♪」

「はいアウトォォーーー!!!」


寝不足で既にレッドゾーン入りしている残りの体力が通学路ですら叫び続けたことで、

更に赤く染まって……あ…なんだか視界が真っ暗…に


「だ、旦那様ー!?」


  =  =  =


ある一区画にて―――


「此処にいたか、生徒会長」


私、美月は用事を済ませに同校生となるある一人の人物と相対していた。


「…誰だっけ?」

「………副GMと言えば分かるだろう?」

「……? あぁ、みつきちか!珍しいな、リアルでソッチから接触してくるとは」

「すこし状況が変わったのでね、本当は私も会うつもりは無かったけれど」

「また向こうで誰か暴れてんのか?」

「いや、今回はリアルだ。ソレと普段と違って始末じゃなく保護」

「はぁ・・?」

「私の従妹の世話を頼みた「ダルイ、断る」


コンマ一秒たりとも間を開けずに即答される。

予想はしていたが返事も早いな。


「世話と言っても身の回りの世話は別の人間をつけているからは心配ないよ」

「自分ちのSPつけてろよ、学園の爺どもには俺から脅しかけてやっからよ」

「そんなに怖いのかい、恋人が?」

「あ・た・り・ま・え・だ!そもそも此処で会ってることすら見つかったら何されるか分からん」

「あぁ、ちなみに保護する対象は……GMだ」

「昨日もキャッチセールスの人間から声かけられただけで一時間耐久キス(冷たい視線付き)だっ…

 ……パードゥン?」

「護衛対象は私の従妹、GMの方だ」

「そっちなら尚更自分ちで護れ!?あっさり学校通うな、向こう維持してるのアイツだろ」

「依頼を断るなら君の出入りを制限してもいいが」

「学校が微塵切りになって良いなら制限していいぞ」

「ダメか。しょうがない、なら君の彼女に頼もう。本当は余り彼女には頼みたくないのだけれどね」

「ぶっ!!卑怯な真似を……」

「頭が切れるから、彼女に頼むと見返りが大変なことになりかねないけどね。

 引き受けてもらえないなら仕方ない」

「……わかった、分かったから!引き受けてやるからソレは止めろ!!」

「所有欲の高い方に愛されるのは大変だね、生徒会長」

「分かってて頼もうとするお前の相手ほどじゃねェ」

「面倒なら彼女だけに頼んでも問題は無いさ」

「……俺は強制参加させられるっつの。どっちにしろ護らされるなら俺主導で居たほうが楽だ…テメェ、この借りは後で必ず返すからな」

「おかしな事を言うね、私のほうこそ必ずこの借りは返すよ。必ずね」

「ほれ、用事はソレだけならとっとと帰れ帰れ!シッシッ!」

「あぁ、今後とも宜しく。戦う生徒会長」

「戦わねぇよ、戦っても生徒会長としてじゃねぇよ!」

「因縁をつけられたらそのグループまで巻き込んでいるだろう」

「売られた喧嘩は買うだろ?無論病院代で高く返すけーどー」

「程々にしてくれたまえよ、せめてヤキは<向こう>でいれる様に」


ソレは相手次第だなー、と答えて再び歩き出す相手を見る。

自分で頼んでおいて難だが多少の不安を隠せずにはおられない。

何があっても相手を殲滅できる駒とは言え、少し短絡に過ぎる故に。

願うことなら会長の【彼女】が上手く手綱を握りますように。


「私が24時間警護できればこんな悩みも無いんだけれどね」


   =  =  =



「HPがなくなった……【目の前が枕になった】…なんて」


どうやら本当に叫びすぎで倒れたらしい・・・

目が覚めたら既にベットの上。

…寝不足でも倒れるような鍛え方して無いつもりだったのに。

いや、なんて言うか…叶さんと居るとどうも疲れるのかもしれない。

ただボケにツッコミすぎなだけだとは思うんだけど……全力で叫んでるしなぁ。


「ふにゃ~…だんなさまぁ~……♪」


なにより現実逃避していたい事実が隣に圧倒的な現実感を持って眠ってるっていうのがまた…


「何故、ホントに添い寝されてるんだろう…止めろよ、保健医」


起きた時から抱き枕みたいに右半身をがっしりと捕まえてる叶さんに呆れつつ、改めて今の状態を確認してみる。

まず頭の方から、近い、顔近すぎるよ。

右腕、何でそんなに抱き寄せるかな?わざとだろ、わざとその柔らかいの押し付けてるだろ。

太腿、頼むから絡めてないで離してください、後動くな擦り付けるな。学校でこんなことしてたら状況証拠だけで僕ら停学だから。


追加情報:なんでか服が布団の外に落ちてる。


「僕を退学に追い込みたいのか、叶さんは」

「ちゅー…」

「はいはい、分かったから吸わない噛まない。って言うかいい加減起きて、服着て」


その時、不意に保健室のドアが開く音がした。

そりゃもうバーン、と。


「わったっ、ちょ…!?」

「……」

「叶さん、離れて!やばい、やばいって!!」

「ふにー…」


ヤバイ、カーテン越しでも分かる。

声を出すまでもなく鬼のようなオーラがひしひしと伝わってきてる…

校内の悪を殲滅せんばかりの殺気がビリビリきてる!

この感じは…副会長だ。

一歩一歩近づいて…カーテンに手が……かかった!

いまだ叶さんは目を覚まさない!言い訳しようの無い状態。

ダメだ、もう終わりだ。

そしてカーテンに掛けた手が閃き、一気にカーテンが開かれた!


「高天原ッ!!」

「わー、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

「何処にいるかと思えば……ソッチの貴方は落ち着きなさい。今回のみ不問とします」


覇気のある一喝と共にベットによってきた彼女は、上に立つ者の威厳に溢れていた。

そのオーラに当てられるだけで何となく萎縮してしまうような…そんな存在感を放っている。

彼女は僕らの学園の歩く天罰、神原・麻衣さん。

本人は(意志はともかく)殴り合いなんて出来ない程華奢なのに、

彼女の周りで規則を破ろうものならありとあらゆる類の不幸がしばらく付きまとうという…


「ふ、副会長…これは…」

「全く、一向に生徒会室に顔を出さないと思えばこんなところで校内の風紀を乱しているとは……迎えにきましたよ」

「んー……旦那様~…」

「槌谷、殴っても良いですからとっとと起こしなさい」

「ぃっ!?そんなこと出来るわけ…って言うか名前!?」

「ある程度の人間は覚えていますよ、副会長ですから。もう一度言いますね、殴りなさい」

「いや、女の子を…」

「聞こえませんでしたか?殴り起こせ、と言っています」


物凄い怒気を孕みながらボクを睨みつける副会長。

阿修羅もかくやと言う気迫を放ちながらも、心なしか背中から後光が差してるような気がする。

神々しいと言うべきか、恐れ多いと言うべきか…

だが、流石に従うわけにはいかない…と言うか普通に起こせばいいんじゃ…


その時、副会長の大いなる怒気(笑)に隠れるようにして更なる闖入者が保健室に現れる。

飄々とした歩き方でおもちゃを見つけた子供のような瞳を向ける悪魔。

諸々の仕草の軽さに対して視線だけは殺戮者レベルの悪意が込められて。

保健室全体を視線でなでていく、その瞳に晒された瞬間、

つららを突き刺されたようなゾクッとした悪寒が背筋に走る。


「うーっす、お迎えだぞー。とっとと生徒会室に拉致しにきたぜー?」


「あら、志堂」

「か、会長…」


僕らの学園一の暴れん坊で頼れぬ兄貴。

戦う生徒会長 志堂・晃 その人である。

(…尚、頼ると確実に騒動に参加する人数の12割に昇る負傷者が出るため、町の人の評判は良くない)


「ちょうど良いな神原、探す手間が省けた」

「遅刻ですか、志堂?」

「ん?いやいや、ちっとお呼ばれしてただけだ」

「理由があったら遅刻で無いとでも?」

「しょうがないだろう、仕事だ仕事」


呆気にとられる僕らを無視して会長コンビは勝手に二人で話し始める。

……いや、遅刻って言うなら全員まとめてだと思うけどね。


「残念ながら私は理事長から直々によろしく頼まれていますよ。娘をしっかり見張るようにと」

「俺もその辺りは我侭とおるし、生徒会長だから」

「……」


副会長はともかく、我らが兄貴の発想はおかしい。

生徒会長、そう言う役職じゃないから。


「バッカオメー使える特権は使ってこそだぜ?」

「いやいやいや、そんな権力無いよ!?」

「志堂、とにかく場所を移しましょう。一度、生徒会室に…槌谷も来るように」


会長の頭の中はどうなってるんだろうな~とか考えていたら突然の指名……

………ボクの日常が平穏になるんだったら喜んで行くんだけどなぁ

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