第二話 私、不死なんです!
・・・・今何つったこの子。殺して下さい?
人に殺人犯になれというのか、このお嬢様は
「叶、ソレだけでは少し説明が足りない」
「少しどころじゃなく全然足りないね・・・」
「あぁ、引かないで下さいぃぃ!!」
「流石にこの年で警察のお世話になることはしたく無いから」
「私たちのグループに掛かれば証拠一つ残しませんよ!
現場の証拠隠滅からアリバイ工作までお任せです!!」
「叶」
「もし捕まってもそんな事実のもみ消し位簡単に!」
「犯した罪は無くならないだろ!!」
「槌谷」
「どうしても貴方にお願いしたいんです!」
「人を犯罪者に仕立て上げようとして・・そもそもなんで死にたがる!!」
「・・・二人とも」
殺して!、断る!と言い争いがヒートアップしだした所、静かにしていたメイドさんが急に立ち上がり。
「・・・話を聞け」
スカートの中からデザートイーグル登場、どう考えても平和な日本で装備するものじゃ・・・
っていうか少女の装備するものですら無いよソレ?
・・・あ、ごめんなさい。僕が悪かったから、大人しく聞くから。頭にゴリゴリするのやめて
「少し説明を付け足す」
「ハイ、ドウゾ」
「じつは叶は少し特殊な体質でな」
「特殊?」
「外部からの攻撃では本当の意味では殺せない」
「はぁ・・・?」
「自動再生能力、とでもいうべき超回復があるためだ」
「何言ってるか分からないぞ」
「つまり「半分不死です!!」・・・叶、台詞をとるな」
ぐりぐりと今度は高天原さんに銃口を向けて・・・危ない危ないから!
見てて怖いからそういうのやめて。ハハハ、まさかソレ本物じゃないよね、ただのエアガンだよね?
さっき僕にも突きつけたけど銃弾入ったりしてないよなソレ!!
「み、みっちゃん流石に私でもソレは危ないってば」
「叶なら大丈夫、絶対に死なない」
「痛いのは痛いんだよ!?」
「痛いのは嫌いじゃない、そう聞いたこともある」
「いや、痛いとかそういうレベルじゃないのでは、銃弾」
「槌谷。君はコレが何に見えるかね?」
「実銃以外の何物でも無いと思います、メイド殿」
「否、ただのエアガンだ・・・ただのね」
ふと視線を逸らすと、高天原さんは顔を真っ青にして口をパクパクさせていた・・・
アレ、何かやばいこと言ったかな?
「つ、槌谷君・・・彼女は、メイドじゃなくて、その」
「え、でもメイドの格好してるよね。それも古き良き時代の」
「このメイド服はただの趣味だ」
「私の友達で、従姉妹なので・・・」
「つまり?」
「みっちゃんもお嬢様、です」
「・・・・・・」
「こんな格好だ、間違えるのも無理は無い」
「紛らわしいわっ!!」
「そんな些細な事はどうでもいい、話が逸れているだろう」
「あんまり騒ぐとSPの方が来ますから・・お静かに、お静かに・・・!」
くっ、常識的に突っ込んでるだけなのに。
でも言われて見れば・・・あ、なんか木の陰に隠れてたさっきのSPが懐に手を入れてる。
まさか凶器を出さないヨネ?
「問題無い、下がれ」
メイドさん、鶴の一声。
うわっSPの人敬礼までして・・・メイドさんの言うこと聞いてるよ・・・
見た目からしたら明らかに使われる人なのに。
完全に王者の風格を漂わせてるよ、このコスプレメイド。
「えと・・・それでですね。回復能力の所為か、私の身体、定期的に・・・」
「定期的に?」
「・・・死なないと具合が悪くなり易いようで」
「・・・いや死ぬほうが悪くない?」
「実践して見せましょうか?」
「いやいやいやいやいや、夢見が悪くなりそうだからやめて欲しい、切実に」
「だが槌谷、君には慣れてもらわねば困る」
「え、絶対慣れたくないんだけど」
「・・・慣れてもらわないと困るんです、今回の頼みと言うのが「これから彼女の定期的な痛みを与える役を君に頼むことになる」・・・と言うことなんです」
「痛みを与えるって・・・要はKill、だろ?」
「はい!貴方の剣の腕ならばきっと気分よく眠りにつけると」
「あっさりと女の子を斬れるかぁぁぁーーーーー!!」
「ですから、私は不死身ですし傷一つ残りませんよ!ちょっとしたボランティアだと思って!」
「どこの世界にこんな血生臭いボランティアがある!?」
「君の剣の腕が役立つんだ、問題無いだろう?」
「無い訳が無いだろ!!大体不死身だとか夢物語もいい所だ」
「私はホントに、んむぐっ」
「不死身であることが証明できれば君は問題無いんだな?」
治るとしても女の子に傷を付けるわけには行かない。
此処はのらりくらりとどっちとも取れる返事でかわすしか・・・!
「・・・夢物語でなければ、まぁ考えなくも無い」
「問題無いんだな?」
「考えてはみr「無いだろう?」・・・有りません」
すいません、後頭部に当たる硬い銃器に屈しました!!!
け、けれどしかし、最後の抵抗として条件をつけておくことにする。
「でも今日中に証拠を見せられなかったら絶対に断らせてもらうからな!」
「構わない、帰り道だけでも十二分過ぎるほどの時間がある」
うわ、めっちゃ余裕で返された!
「ちなみに証拠を見せても納得しなかった場合は悲しいことだが君が港に沈むことになるかもしれない」
「昔懐かしいヤクザみたいなことを!?」
「もう、みっちゃんは怖がらせすぎです!大丈夫ですよ、そんな事はさせませんから」
「冗談だよね、あぁ、冗談ですよね、高天原さん!」
「私のペットにするだけです」
「もっと笑えねぇ!誰か助けて!!」
この人のほうがじつは危ない人か、だって自分を殺してとか言ってるもんね!
「嫌ですか?」
「あったり前でしょうが!!誰がペット扱いされて喜ぶか!!」
「では私がペットになります、わん♪」
「僕に何処まで叫ばせるつもりなんだ!!そんな冗談はお断りだぁぁぁぁぁっ!」
「冗談ではありません、本気で言ってます!」
「なお性質悪い!」
ホントに首輪つけ始めたよこの子!ちょっと、ソレどこから出した。
メイドさんもこの人止めて!!
高天原さんも顔赤くしながら自棄になるの止めてください。ちょっと可愛いけどSPが怖いから!
「私は恥ずかしい秘密(不死)までさらけ出しましたよ、御主人様!」
「シャラップ!御主人様違う!!」
「では旦那様!」
「夫婦どころか恋人ですらないわ!!」
「では恋人になりましょう!」
「そういうのは友人からでお願いします!」
「いつかは恋人です!!そのステップは飛ばしましょう」
「飛ばすな!!重要、其処は結構重要だから」
「いいえ、私はもう覚悟完了しました!ハジメテを捧げても良いぐらいに!!」
「落ち着け、それは孔明の罠だ!!って言うか初対面の男に捧ぐな!」
「これから末永くよろしくするんですよ?早いか遅いかです!」
「お嬢様な見た目に反して暴走特急の妄想少女かアンタは!!」
「いいから大人しく私の物になってください!」
「ことわr「加勢するぞ。いっそキスから熱い抱擁までかわすといい」
ぬぁっ、いつの間にバックをとったんだメイドのみっちゃん!
ちょっと・・・ホントに離して、今捕まったらこの妄想少女が襲い掛かって・・・ぁーーーーー!!!
「んっ・・・♪」
「ーーッ~~!!?」
ふわりと甘い香りが感じられた瞬間には僕は高天原さんと口付けを交わしていた。
ちょっとどこからかズキュゥゥゥンって音が聞こえた気がするけど気のせいだよな。
でも、いきなり襲われた唇に当たる柔らかくて、熱くて、見開いた眼からはとろんとして見つめ返す彼女の顔が見えて。
しかもホントに力強くハグしてるから逃げるに逃げられない・・・
ハグされてなくても逃げようとしたかは別として。
絶世とは言わずとも十二分に美少女に入るお嬢様からの抱擁とキスを振りほどくなんて僕にはきっと。
あと・・・地味に二人にサンドイッチにされてて背中と胸元が凄く気持ちいいし。
・・・あぁ、流されてるなぁ。
思考が突発的な事態の熱暴走で程よく蕩けた所でようやく唇が離れた。
そのまま崩れ落ちかけた所をメイドさんに支えられている僕を見て、彼女は唇を舐めてぽつりと一言。
「ご馳走様でした・・・・v」
満足そうに微笑む姿も普段なら可愛いと思えるはずが。
流石に襲われた直後でそんな甘っちょろいことなんか考えてられない・・・滅茶苦茶な恥かしさで。
というかこの子こえぇ・・・ホントにあっさり初対面の僕とキスしやがった。
「うぅぅ・・・」
「まさに襲われた生娘のようだね、婿殿」
「あながち否定できないところがまた・・・」
「何故ショックを受けているか、私には分からん」
「初めてだったのに!!こんな初キスとか」
「私も初めてでしたよ?」
「アンタは奪う気満々だったでしょうが!?奪う側!!」
メイドさんがにこやかに肩を叩いて・・・いい加減あんたも放して下さい、もう立てますから。
「婿殿、コレも君への報酬の一部と言うことになっている。まだ頼みは受けてもらっていないが・・・要は前払いだ」
「報酬として渡していい物じゃないよ、っていうか、むしろ奪われたよ今!」
「今は叶に奪われたが・・・君に役立ってもらう時は叶は何も着れないんだ、いつか襲うと保証できるね」
「何で全裸?!」
「服が汚れたら勿体無いだろう?また作らせても良いが時間の無駄だ」
「あぁ、確かに・・・でも僕が襲うわけない!」
「このヘタレが!」
「ヘタレじゃねぇぇぇ!!!」
「全裸の美少女だぞ?何故襲わん!」
「変なキレ方するな、なおさら収集つかねぇよ!?」
滅茶苦茶、楽しそうな顔してるけどわかってやってるだろ、アンタは!
「分かりました、私でご不満であればみっちゃんもつけます!」
「どんな風に連想したらそういう方向に話が転がる!?」
「ふむ、君のようなヘタレに身を任せるのはいささか不安だがコレも友のため、私の身体も好きにするといい」
「アンタは黙ってろ、確信犯!」
「私も割と真面目に言っている」
「私は完全に本気です」
「見た目と中身が比例しないことはよくわかったから少し黙ろうか、お嬢様」
さらに力を込めて拘束してくるメイドさん。
身体を当ててるとかいう以前に間接極め始めてないか、あんた。
「・・・仮に、とはいえ君には人を殺してもらうわけだ。少しくらいいい夢を見せるべきだろう?」
「仮にじゃなく立派に殺人だ!大体どうして僕が」
「綺麗に死んだ方が痛みも少ないからに決まっている」
「だったらメイドさんの銃でもかまわないだろ」
「身体に大穴を開けたら多少回復に時間がかかるだろう?」
「いや、かかるとか言われても知らんし」
「断面を合わせればすぐに再生する刀剣が一番負担が少ない」
「色々試しましたけどやっぱり日本刀が一番回復も後の処理も簡単なんですよ~」
「・・・後の処理?」
「そう・・・つまり、こういうことだ」
急にメイドさんが銃を高天原さんに向け、引き金を引く。
あまりにあっさりとしたその光景に戦慄する僕をよそに、
バンッ、と想像よりも軽い音が響いて――その延長線上にあるのは叶の額で――銃弾を受けた高天原さんの体がその場から吹き飛ぶ。
「うぉわぁぁぁぁぁ!?ちょ、おまわりさーーーん!!」
「既に人払いも済んでいるよ。よしんば聞かれていたとしても・・・大丈夫だ、問題ない」
「人を撃っておいて落ち着き過ぎだアンタはっ!?あれ絶対死んでるだろ!」
「そろそろ叫び過ぎでのどが痛くなってこないかい?」
「叫ばせてるのはあんた達だっ!!」
「ふむ、どうやらすごく心配されているようだ。かといって私を殴るわけでもなし・・・婿殿はなかなか優しいみたいだ。よかったな、叶」
「っ!! 頭に穴あいてて返事ができるわけないだろ!!」
人を銃殺しておいてその淡白過ぎる態度についに僕がつかみかかろうとした時、
「みっちゃん・・・せめて前もって何か言ってよ、ものすごく痛いんだから!」
その頭をぶちぬかれた当人が起き上がり、返事をした。
◇
SPとはまた別の黒服の人たちがてきぱきと薬品を撒いたり飛び散った血肉を片づけている最中。
僕は叶さんが撃たれたはずの場所をひたすら触って傷がないかを確かめていた。
「・・・・・・・今、銃弾が頭を通り抜けてたよな?」
「あんまり撫でられるとくすぐったいですよ・・・旦那様♪」
「(とりあえず一旦無視して・・・)傷一つない・・・メイドさんの手品?」
「否、確かに頭を撃ちぬいたよ。このエアガンでね」
「高威力なエアガンデスネ」
「ははは、まぁ手品だと思うのなら自分の体で試すかい、婿殿?」
「謹んでご遠慮させていただきます、婿殿って呼び方もついでに」
何の迷いもなくその場で土下座しながら僕は言う。
我ながら情けないが僕の命は一つしかないからね。
プライド<<越えられない壁<<<自分の命だよ
「呼び名については却下する、反論も受け付けない」
「・・・横暴だっ」
「美月様」
「ん、終わったか?」
「はい、全て終了いたしました」
「よろしい。後の指揮はお前に任せた、屋敷に戻っていろ」
はっ!と言って清掃部隊(?)のがたいの良いお兄さんは仲間を引き連れて撤収していった。
・・・3分程度で綺麗にしていったのか・・・プロの犯行ですネ。
「さて、話を戻すぞ、婿殿。つまりはこの惨状を見てもらえば分かると思うが銃弾では後始末が大変でね」
「鉛玉ですとお肉と当たった部分の色々が弾けてしまうんですよね、今は頭でしたからちょっとのうしょ「聞きたくない、ソレ以上言わなくていいから、高天原さん!」
「その点、日本刀なら流れでた血の始末だけで済む上、回復までモノの5秒で十分という利点があってだね」
「・・・化け物じみてないか?」
「・・・・・・・・・・(に~~~っこり」
え、何でそこで笑みが深くなる、メイドさん。
ちょっと口が滑ったとは思うが微笑むところか、今の。
「叶、婿殿がもう一度接吻してほしいそうだ。思う存分愛してやr」
「僕の言い方が悪かった。超人なんですね、高天原さん!!」
ほらそこ、遮られて残念そうにしない。というかいい加減に首輪外しなさい。
「キスはまたあとでしましょう・・・」
いや、しないからね?
「私のこと、信じてもらえました?」
「あの相当ショッキングな映像を見せつけられて道路が赤く染まってれば否でも・・・」
「そうか?私の調べによると婿殿は殺人剣を習ってるとあるが・・・一人くらい斬ったりは」
「するかっ!!型を通って爺さんに鍛えられてるだけだよ」
「一匹ぐらい切ったりは・・・」
「・・・・してない!」
「動物は経験済み、か。良かったな、明日から週に一回だけ人を斬れるぞ」
「してないから!?それによくねぇっ!!」
また叫んでいると、ぎゅっとうしろから誰かに抱きすくめられる。
だれかなんて、高天原さんしかいないけど。
「・・・何、高天原さん?」
「叶とお呼びください、旦那さま・・・v」
「はぁ・・?」
「恋人なら名前で呼んでほしいです」
「いや、恋人じゃないし」
「ではペットに!」
「するかっ!また言い出したよこの人!!」
「婿殿、ここでひとつ言っておかなければならないことがある」
「何だ、この忙しい時に!むしろメイドさんも早くこの人説得してくれ」
「大事な話だ、良く聞いてほしい。ここで私が叶の父に、娘の初キスが下劣な男に奪われた。と報告すれば君を消しにうちのお抱えの特殊部隊が出てくる。確実に」
「奪われたのはこっちだぞ!?」
「いつの世もこういう事では女性が強いのだよ、ケダモノ君」
「く・・・」
「うふふ~、だ・ん・な・さ・ま♪」
「何、悪い取引でもあるまい。ただ少し血生臭い仕事があるだけと思えば」
「それ躊躇うに十分すぎる理由だよな!」
「それと叶は暴走はするが割と尽くすタイプだ。親も高天原グループのお偉いさん、つまり玉の輿でもある」
「スルーすんな!?」
「だが受け入れられないのであれば仕方ない。叶の秘密も知られてしまったことだし、部隊を呼んで君を消すしかないな」
「・・・叶さん、これから末永くよろしくお願いします(キリッ」
ほんとに携帯をかけ始めたのを見て僕はあっさりと態度を変える。
何度も言うが、僕の命は一つだ!!
それに・・・まぁ・・うん、考えてみれば叶さん可愛いし。
週に一回でいい・・・ならリターンの方が大きい、かな?
「懸命な判断だよ、婿殿。これで私も君のものになるわけだ」
「絶対からかわれるだけだよな!」
「旦那様、これから私と・・・」
「なんか脅されたようで納得いかないけど、引き受けた以上はよろしくね」
「はい!不束者ですが、死が二人を別つまで末永くよろしくお願いしますv」
「ははは、死じゃ僕ら別けられないと思うけど・・・」