第一話 これが僕らの出会い
ついやってしまった、今でも反省は出来ない。
もうひとつのゲーム内の話と平行してこちらは空想の学園生活をお届けします。
こっそりもうひとつの作品のキャラが出てくる可能性も無きにしも非ず、ですが
こちらも少なからず皆様の暇潰しになれますように。
我輩は人である、名前はまだ無い・・・無論嘘だけど。
僕の名前は槌谷・刀弥(つちや・とうや)。
特筆すべき所は何も無い。人込みに紛れれば全く目立たず気付かれない、そんな容姿。
平凡すぎる俺の日常。いや家のことを含めるダウトされるんだけどさ・・・
一応この辺では有名な剣術の先生として稼いでるじーさんや賭博で荒稼ぎしてる親父やら・・・まぁそういうことで結構裕福だったりする変な家庭の生まれ。
金目当ての女子から告白されるぐらいには・・・分かってるよ、自分に魅力が無いことくらいは。
得意なことなんてじーさんに習った剣術ぐらいだし、護身術のはずが明らかに殺人術の域にまで達してるから逆に使えないし。
「今日もまた呼び出しかぁ・・・」
「ラブレターだろ、呼び出しって言うなよ」
「・・・いつも付き合ってもアレ買ってコレ買ってとかそういうことしか言われない」
「今回は当たりかもしれないだろ?」
「いや、そもそも名前が書かれて無いね」
「はぁ・・?」
「【お伝えしたいことが有ります、桜公園に4:00にきて下さい】・・・だけ、ハートとか手紙の雰囲気だと恋文だけど」
「ァッーじゃないよな?」
「ソレは流石に・・・まぁ、帰り道の途中だからいくだけいくけどね。期待しないで」
「はいオツカレーガンバ、じゃぁな~」
◇
桜を見上げながらベンチに座って相手を待つ。
このシチュにドキドキする男は多いはずだ。
否、ドキドキしない者などいやしない!居るとすればそれは人間不信か恋愛に興味が無いタマナシかだ。
真の漢というものはシチュだけで死ねるぞ。・・・いや、ホントに相手も女子で恋愛感情もってたらね?
こう、利益目的だけの子が多くて信用できないんだよ、最近。
「あの・・・・・・」
取り立てて何かがあるわけでも無い平凡な、ただの学校からの帰り道の待ち合わせなんてベタだなぁ。
学校の体育館裏よりは良いけどさ。まぁうちの高校体育館裏は崖の横にあるからそもそも存在しないけど。
あーぁ今日の呼び出してきた相手も、またウチの資産目当ての子じゃないだろうなぁ、正直毎日毎日飽きてきたんだけど。
「あ、あの・・・!」
「あぁ、僕を呼んでたのか。何かよ・・・う・・・?」
振り向いた先に居たのはお嬢様である。
もう一度言う、お・嬢・様である!
更に言えば清楚な白いブラウスにおとなしめなタイトスカート可愛いらしい典型的なお嬢さまであった。|(後ろにメイドつき)
うわーぉ、まさかのお嬢様?桜の木の向こうに怪しげな黒服も見えるんですけど、あれってSP?
え、待ってくれ。こんなお嬢様なら資産目当てとかありえない・・・まさかホントに当たり?
「あの・・・?」
「あ、ごめん・・・ちょっと予想外だった」
「貴方が・・・刀弥様、ですか?」
「うん・・・君が、この手紙の人かな?」
「はい・・・・・・」
「何の御用、いやソレよりお名前は」
「・・・?手紙に、書いていませんでしたか?」
「いやいや、場所と時間しかなかったから」
そして彼女はメイドと目をあわせ、しばらく見詰め合った後にこちらを向き、
メイドさんの方が一歩前に出て頭を下げてきた。
「失礼、ソレは私の手配ミス。こちらは高天原・叶(たかまがはら・かのう)。私の友人で、高天原グループの社長令嬢」
「高天原グループ、って・・・」
「流通・情報・サービス産業など、この界隈を実質的に牛耳ってる大会社」
「なんかざっくばらんな説明を」
「難しく細かいことまで知る必要は無い、資産家であると理解すればソレで十分」
「はぁ・・・」
「ほほほほ、ほ、本日は・・・お願いが・・・ああああ、有りまして!」
「叶、落ち着けないなら私が説明する」
「みっちゃん・・・じ、自分で言うから」
顔を真っ赤にして慌ててる様がとても可愛い・・けれどなんだかとっても置いてけぼりだよ。
僕、主人公で良いんだよね?え、そんなのは居ない?TVの見過ぎ?
「刀弥様・・・あの・・・私、私を」
・・・「を」?私と付き合ってとかじゃないんだ。いや、分かってたよ?こんなお嬢様が告白してくることなんてないよね。っていうか僕初対面だし。でも、となると頼みって何だろう。初対面だから逆に読めないんだけど―――
「私を、殺して下さい!」
・・・・・・・・・・・・・・・どうしてそうなった?