予約
ピピピピッ。
携帯電話が鳴った。10時35分。頭が痛い二日酔いだ。着信は会社からだ、思わず出てしまたった。無視すればよかった。
上司からだ。「退職するなら、私物をもって帰れ。」開口一番にその言葉。
頭にきた。お前にくれてやる。そう伝えて、電話をきった。
タバコに火を付けた。
また怒りがふつふつと、こみあげてきた。
復讐してやる。
伸二から、もらった。ポケットティッシュに目が行く、住所はワリと近い。
話だけでも聞きに行ってみるか?そもそも、こんな怪しい物が存在するのか?嘘くさい。
それよりも仕事探したほうが今後の生活のために…。
いや!ダメだ!こんな気分では、次の仕事に身が入らない。あのクソ野郎が苦しむ姿が見たい…。
このまま引き下がれるか!
若干、半信半疑では、あるが携帯を手に取りポケットティッシュに載っている電話番号に電話してみた…。プルプルプル、プルプルプル。繋がった。ガチャ。「おはようございまーす。嫌がらせ屋です。」軽い感じの女の声だ。「新規のお客様ですかぁ?」サラ金の電話受付みたいだ。
……。「それでは、13時に予約受け付けました。ご来店お待ちしていまーす。」
予約してしまった。今から出発すれば十分に間に合う。家を出てバス停に向かった。20分くらい進んだ所で降りた。腹が減ってきた、まだ時間がある。嫌がらせ屋の近くでラーメン屋による。そこでラーメン屋のオヤジに聞嫌がらせ屋の事を聞いてみる。「聞いた事がない。」予想通りの解答だった。若干不安になってきた、受付の女の喋り方は頭が足りなそうだったし、場所はアパートだし、何よりこんなに近くのラーメン屋が知らないって。
半分諦めながら、指定されたアパートの部屋の前に到着した。
ドアには、従業員募集中のビラが貼っている。
〜やる気のある方募集中、経験者歓迎、未経験者も一から丁寧に指導します。〜
…。経験者なんているのかよ。
ノックをしてみた。「は~い、入ってきてください。」
ゆっくりドアを開けると、若いキャバ嬢みたいな。女が立っていた。
「予約された方ですかぁ?」受付の時の女みたいだ、喋り方通り、見た目も軽そうな女だ。
「社長、予約された石川様が来店されましたぁ。」奥の部屋に向かって呼びかけている。
「ど~ぞ~。」
奥に通された。部屋の真ん中には応接テーブル。奥には、デスクがあり、パソコンに向かっている。男が一人、色黒、マッチョ、ハデなスーツ。テレビで見る、ヤクザか見方を変えればAV男優にも見える。
「いらっしゃいませ。社長の佐々木です。」凄い営業スマイルだ。白い歯が眩しい。
「早速ですが、依頼内容をうかがいたいのですが?」
俺は、ここに来るまでの経緯を説明した……。話しを始めると涙目になっていた。