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01 へっぽこ探偵と女子中学生

少しずつ更新させていきたいです。

 茶色い探偵のような格好をした20代後半の男性。

 それが私のその人に対する第一印象だった。



   ◇◇◇


 

 私は小門未来こかどみらい

 引っ込み思案で昔から人のことをよく見てしまう性格だ。

 でもそれは客観的に見ることが出来て尚且つ他人を見透かせる能力だと自負している。

 なんて、探偵でもないのに何言ってるんだろう……。

 とか考えていると、


「ぐあっ!!」


 ……という男性の大きな声が聞こえた。

 こんなところでどうして? ここは学校のはずなのに……!

 そう思って声のした場所へと向かう。

 すると……


「おおっ! キミが僕の助手か!」

「へっ?」


 なにを言ってるんだろう? この人は。

 年齢は20代後半から30代前半、髪の色、目の色は黒。ほぼ日本人と断言していいだろう。

 服装はよくある探偵もののような格好。というかコスプレ? 帽子までかぶってるし。

 身長は170cm後半といったところだろうか。

 茶色い手袋はおそらく指紋などを残さないようにするため。

 要するに、この人は探偵に憧れているのだろう。


「いやぁ~、大変だったんだよ。僕の能力じゃあ断片的にしか視られないからね!」

「は……?」


 性格は友好的、一人称は「僕」。

 しかし考えもなしに行動するタイプだろう。不審者として扱われることを想定していないのがその証拠。

 

「ところで、どうしてそんなに見つめてるんだい?」

「えっ? ああ、癖なんです。観察してしまうの」

「へぇ……」

「それで、へっぽこのあなたがどうして中学校に?」

「それはね、キミをスカウトしにきた!」

「は?」


 ありえない。だいたい私なんて地味に生きていきたいと思っていたのに……!

 どうしてこんなおじさん……? いや、お兄さん?

 …………とにかく、こんなわけのわからない人の助手なんて……!

 って、さっき助手って言ってたよね? 聞き間違いじゃないよね?


「放課後いつもの場所で待ってる! アデュー!」

「あっ、ちょっと!」


 いつもの場所ってどこだよ……。

 そうしてその男性は先生に連れていかれた。


「…………かっこわる」


 どうやらそのあと、窓から逃げられたようだ。

 まあ身体を拘束していない上に体育教師がトイレで退席していたのならそうなるだろうけど。

 こうして、私小門未来の日常は帰ってきた……のか?



   ◇◇◇



 放課後になって家に帰ると、さっきの不審者がいた。

 私の家は喫茶店だ。いわゆる住居兼店舗というやつだ。

 

「やあ! 助手くん!」

「未来、知り合い?」

「未来くんか。これからよろしく……」


 彼がそう言い切る前に、私は扉を勢いよく閉めた。


「どうしてあの不審者が私の家に!? だいたいこのカフェの値段はそんなに安くないのに!」

「未来ー?」


 ガチャッ……という音に振り向くと、お母さんがいた。

 どうやら1時間前からずっとコーヒーだけで粘っているらしく、お母さんも多少迷惑しているようだ。

 もっとも、うちのコーヒーを3回頼んだあの男性は、お母さんにとっては金づるにしか見えていないだろうけれど。


「仕方ない。話してみるか」


 母はまだ14の私を育ててくれる大事な家族だからなぁ。

 年齢は30代後半……とだけ言っておこう。身長は164cm。

 茶髪で髪を後ろにまとめている若々しい人だ。

 お父さんは忙しいらしく、海外で働いている。真面目な人だ。


「……どうしたの? 黙りこんで」

「あ、ごめん。いつもの癖」

「へぇ……。じゃああの人の特徴ももうわかってるのね! さっすがわが家の名探偵」

「そ、そんなんじゃないってば!」


 まったく、勘弁してほしい。

 そう言いつつまんざらでもないのは母も承知だろう。

 だがいまは本気でやめてほしい。なぜならあの不審者が目を輝かせながら勧誘してくるだろうからだ。

 だがいまはさっきと状況が違う。逃れることはできないだろう。

 仕方ない。話してみるか。



   ◇◇◇



「おまたせー、ごめんなさいね。娘にちょっと用があって」

「構いません! それで未来くん、かけたまえ!」

「は、はぁ……」


 調子の狂う人だな。

 というか、ひとりなのにテーブル席座ってるじゃないよ。

 ……おっと、いかんいかん。話が逸れてしまう。


「それで、なんの用なんですか?」

「ふむ。単刀直入に言おう。僕は未来が視えてね、そこで『探偵をやろう!』と決意したのだよ」

「へ、へぇー」


 いや勝手にやればいいでしょうが。

 人んちに来る必要あった?


「一人でやればどうなんですか?」

「……それが、僕はなぜかわからんが的外れなことばかり言ってしまってね」

「はぁ……」


 分析力がないからでしょうが! なに普通に有能そうな態度とってるんだよ。

 私が心の中で悪態をつくと、彼は続けた。


「そこで、助手を取ろうと思って! ほら、一人前になったら訪れるつもりだったんだけど、僕ってまだまだひよっこだからさ!」

「そ、そうですか……」


 へっぽこさんがなにを言ってるんだか……。

 でも、未来が視えるのはたぶん本当だろう。

 根拠は場所だ。私のいる場所を常に当て続けた。

 それは私を調べ上げれば余裕だろうが、私は一般人の女子中学生だ。

 親に聞いたという点も拭えないが、あの母が簡単に私の情報を流すことはないだろう。


「……ところで、この男性が毒を撒き散らかそうとしていたからとっ捕まえておいたよ!」

「は、離したまえ!」

「はぁっ!?」


 思わず叫んでしまう。

 こんな飲食店で毒を撒かれたらたしかに大変だけど、あまりにも展開が唐突すぎやしないか?

 それにしても、このおじさんの年齢はおそらく50前後。

 毒物は持っていないと思うけど……。


「では未来くん、根拠を述べてくれ。証拠を提示すれば、警察も動いてくれる」

「で、でも……」


 いくらなんでも横暴すぎる。これなら的外れと言われてもしようがない。

 しかし、いきなり人の分析するのはどうかとも思う。

 昔それで怒られたことがトラウマになっているからだ。


「未来! うちの店にあやしい動きをしようとしたんだから、さっさとやっちゃって!」

「う、うん……」


 お母さんもこう言ってることだし、仕方がない。

 やっちゃいますか。


「まずこの店にいたのは私とへっぽこさんとお母さんだけ。理由は値段が高めに設定されている喫茶店だから単純に儲けが少ない。そして毒をばら撒こうとしたという証言だけど、これは嘘だ。理由はこの男性は、えーと……」

「医者だから! ですよね?」

「な、なぜわかった!?」

「まず所持品。彼は注射器や剪刀、メスなどの医療用器具を持っています。これは医者を志していないと入手を考えません」

「な、なるほど」


 なーんだ、普通に推理もできるんじゃん。

 このなんにでも突っ走る性格さえなんとかすれば……。


「だ、だが! 私が医者だというだけで犯人扱いはやめたまえ!」

「未来くん、つぎはキミの番だ」

「は、はぁ……」


 と言われても、へっぽこさんだけで解決できそうだったけどなぁ……。

 それにしてもこのおじさん……、隈があって疲れてるし、まともな思考回路じゃないのかな。

 それを言えってこと? でも、私は逮捕される人を出したくない。

 ここは……!


「おじさんは疲れていてまともな判断ができなかった。だから犯罪を犯そうとしていることに気がつかなかった! 医者だから薬学には詳しいでしょう。だから犯罪をする可能性(・・・・・)はあった! けど、今回は未遂で終わった! よって注意を受けるだけでいいハズ!」

「おじょうちゃん……」

「未来くん?」

「その手でもっと人を助けてください。おじさんが捕まったら、患者さんが死ぬかもしれない。だから……」

「未来……」

「わかった! 医療ミスの連続で殺しかけて嫌になってたけど、ちゃんと寝て考えを改めるよ! ありがとう、おじょうちゃん」


 そう言っておじさんは去っていった。

 このあと警察の人が来たけど、「間違いでした!」と言ってその場を収めた。


「……未来くん、どうしてあの男性を助けた?」

「だって、捕まった人が人を助けられるかもしれない。へっぽこさんの能力は、人を捕まえるためのものじゃない。 間違いを気付かせる(・・・・・・・・・)ための能力だ。だから、私手伝うよ。未遂で終わらせるために」

「ありがとう。それじゃあ、数日後にまた会おう!」

「よくわかんないけど、うん! また今度!」


 こうして私は人を助けるために、へっぽこさんのお手伝いをすることになった。

 そして数日後、喫茶店の横に私とへっぽこさんの探偵事務所が出来るけど、それはまた別のお話。

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