第66話 東京駅での待ち合わせ
東京駅の待ち合わせ場所に着くと、すでに何人かは集まっていた。
「やあ、カナタ」
軽く手を挙げたのはナイトだ。
相変わらず爽やかさ全開の笑顔を浮かべている。彼は白の半袖シャツにベージュのスラックスというラフながら品のあるコーディネート。サングラスを軽く額に乗せ、芸能人のような雰囲気を醸し出していた。
「おはよう、ナイト。早いな」
「楽しみにしてたからね。君の方こそ、すごくいい感じの服装じゃないか」
「あたしが選んだからね」
俺は白のシャツにオーバーサイズのグレーのYシャツを羽織り、黒のスキニーパンツとシンプルな白いスニーカーを合わせている。
「カナタ、ちゃんと着てるね。うんうん、悪くない」
ヨシノリは満足げに頷き、俺の周りを一周してから手を叩いた。
「なんか服装チェックされるのって落ち着かないんだが」
周囲の目が少しずつこちらに集まっているのが分かる。まるでファッションショーでも始まるかのような視線に、俺は居心地の悪さを覚えた。
「なるほど、由紀ちゃんの好みはこういう感じなんだね」
「うぐっ、実際あたし好みのコーディネートにはしたけども……」
そういうヨシノリは水色のノースリーブトップスにオレンジ色のスカートという動きやすい格好だ。髪はポニーテールにまとめられ、ラフな雰囲気ながら健康的な色気を醸し出している。
さらに肩から下げたスポーティなミニバッグが、アクティブな印象をさらに際立たせていた。それに色合い的にもアイシャドウと合っていてよく似合っている。
「カナタ君、おはようございます!」
聞き覚えのある声、俺は周りを見渡す。すると、アミが駆け寄ってくるのが見えた。さすがに今日はギターバックは背負っていないようだ。
アミは淡いパステルカラーのワンピースにカーディガンを羽織り、ゆるく巻かれた髪がふわふわと揺れている。おっとりとした彼女の雰囲気にぴったりの柔らかい印象だ。
「カナタ君。とてもお似合いですよ」
「そうか? なんか落ち着かないんだけどな……」
苦笑いする俺に、アミはくすっと微笑む。
ワンピースの裾を軽くつまみながら、足元のサンダルを直すしぐさも優雅だった。普段のほんわかした雰囲気はそのままに、夏らしい爽やかさを感じさせる。
「わんもいるさー!」
そこにキャリーケースを片手に引きながら元気よく駆け寄ってきたのは喜屋武だ。彼女はアロハシャツにハーフパンツという、いかにも夏らしい南国スタイル。サングラスをかけ、ビーチサンダルまで履いている。気が早ぇよ。
「よし、全員集合か?」
「ゴワスは?」
「ああ、そういえば忘れてた」
「さっきトイレ行くって言ってたよ」
そんな会話をしているうちに、ゴワスも合流し、ついに全員がそろった。
「悪ぃ、ちょっと腹壊しててな」
ゴワスはTシャツにハーフパンツというラフなスタイルだ。サコッシュを肩から下げており、妙にアウトドア感が漂っていた。
「お、全員そろったな」
改めて人数を確認しながら声をかけると、愛夏がナイトのほうをチラリと見た。
「あの……ナイトさん、その服、すごく似合ってますね。カッコイイです」
「ははっ、ありがとう。愛夏ちゃんの服装も夏らしくていいね。すごく可愛いよ」
「あ、ありがとうございます!」
ナイトにさらりと褒められ、愛夏は俯いて頬を染める。
「ナイト、あんまり愛夏をからかうなよ」
「僕は本当に思ったことを言っただけさ」
ナイトは肩をすくめながら微笑む。
「さーて、そろそろ出発しよっか!」
ヨシノリが陽気に手を叩く。
こうして、俺たちの夏の旅行が始まった。