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第41話 一次選考突破祝い

 結局、試験期間中はアミやヨシノリにせがまれて勉強を教えてばかりの日々だった。

 ゴワスに関しては、ナイトが引き取ってくれたから助かった。どうやら俺は想像以上にゴワスと相性が悪かったらしい。最近じゃ、目が合っただけで腹が立つくらいだ。

 俺にも相容れない人間がいたということは、一つの勉強になったのでよしとしよう。


 あいつ、マジで俺たちのグループから出て行ってくれないかな。


「試験も終わったことだしカラオケでも行く?」


 ヨシノリが晴れやかな笑顔で鞄を肩にかけて提案してくる。


「俺はカラオケ嫌いだからいいや」


 即答すると、ヨシノリは「やっぱりね」と言いたげな顔をする。


「何だよ、奏太。アニソンしか歌えなくたって気にすんな」


 不意に割り込んできたのはゴワスだった。ゴワスはニヤニヤとした表情で俺を見てくる。


「別にJPOPだって聞くから。サビで高音が出ないのが嫌なんだよ」


 ミセスやヒゲダン、AMURE(アミュレ)とか、曲の難易度が高すぎるんだよな。未来において俺はカラオケで好きな曲を好きなように歌えないことが嫌で、すっかり聞き専になっていた。


「誰も気にしないだろ。なあ、行こうぜ?」

「行かない」


 言い切ると、ゴワスの笑みが一瞬だけ引き攣った。

 最近ようやくこいつの魂胆がわかってきた。

 こいつは陰キャっぽい趣味の奴をバカにしてマウントを取りたいタイプの人間なのだ。

 カラオケに誘っているのも、俺に恥をかかせたいからだろう。


 そんな俺の苛立ちを払うかのように、そのとき教室の扉がガラッと開いた。


「カナぴ、いた」


 現れたのは、二年生のリボンを付けた先輩だった。


「あれ、トト先。どうしたんですか?」


 やってきたのはトト先だった。教室にいたクラスメイトたちは、珍しい先輩の登場に興味を持ったのか、ちらちらとこちらの様子を窺っていた。


「一次選考突破祝い」


 そう言ってトト先は、一枚のイラストを俺に手渡してきた。

 そこに描かれていたのは、ポニテ馴染のメインヒロインである〝友紀〟だった。

 細かい装飾まで描き込まれたそのイラストは、まるでライトノベル表紙のような完成度だった。


「うわっ、描き込みエグッ……ちょっと待ってください。今日まで試験でしたよね?」

「赤点は取ってないはず」


 サラッとした口調で言いながら、トト先は腕を組んで得意げに微笑んだ。


「は? あんた、小説大賞の一次選考突破してたの!?」


 横で俺たちのやり取りを見ていたヨシノリが驚きの声を上げる。その声が聞こえたのか、クラスメイトたちもざわつき始めた。


「たかが一次選考で大袈裟な」


 俺はため息をつきながら、トト先から渡されたイラストをじっと見つめた。


「最終選考通ってようやくスタートラインなんだから気にしてもしょうがないだろ」

「いやいや、でもすごいですよ!」


 アミが興奮気味に言い、目を輝かせながら俺に詰め寄ってくる。


「本当にすごいな……カナタ、やるじゃないか」

「わぁ……カナタン、本当に小説家になるんやさー」


 ナイトと喜屋武も感心したように呟く。その一方で、ゴワスだけはつまらなそうに視線を逸らし、腕を組んでいた。

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