第34話 結局GWは何を?
「さて、話を戻しますけど……ゴールデンウィーク中に由紀ちゃんはずっとカナタ君と一緒にいたんですか?」
「えっ」
目をギラリと光らせたアミの問いに、ヨシノリの表情が凍り付く。
「執筆中も俺の部屋で寝転んで漫画読んでたよな」
それどころか、伸びてきた髪を切るために美容院に行くのに付き添ってもらったり、美容院代をもらうために愛夏と一緒になってうちの母親に口添えしてくれたり、至れり尽くせりだった。
「思い返せばほとんど結構一緒にいたような気がするな。なんか俺の予定に合わせて動いてた感あるけど、良かったのか?」
「いいのいいの。愛夏ちゃんとも久しぶりに遊びたかったし」
協力してくれるのは嬉しいけど、もうちょっと自分の青春を楽しんでもいいんだぞ。それはそれで小説の糧になるし。
「なるほど、ゴールデンウィークの話題を出してきたのは惚気の伏線だったってことだね」
「違うからね!?」
ナイトに揶揄われ、ヨシノリはテーブルをバンッと叩いた。その勢いで箸が転がる。
周囲の反応は「あー、いつものね」みたいな感じの反応で、概ねヨシノリがいじられてリアクションをするという流れが定番化しつつあった。
「三人は何してたんだ」
このままだと永遠にヨシノリがいじられそうだったので、話題をゴールデンウィークのものへと戻す。
「僕は中学のときの友達と遊んだり、クラスで声かけられてたからそっちに合流したり、って感じかな」
楽し気な声のトーンでナイトが笑う。
こいつは中学のときも大勢の友人に囲まれていたのだろう。容易に想像できる。
「わんねー、軽音部の練習してたさー」
喜屋武は軽音部の活動に勤しんでいたようだ。
「楽器は何やってるんだ?」
「ベースやさー」
沖縄出身だから三線かと思ったが、よく考えればそれは安直すぎるか。
「私は家族と一緒に軽井沢に行ってきました。これ、お土産です!」
そんな和やかな雰囲気の中、アミが旅行のお土産である林檎バームを取り出した。
確か、林檎は軽井沢の名産だったか。
「おお、ありがとう」
「アフロン、にふぇーどー!」
「わぁ、林檎バームじゃん! ありがとね!」
「さんきゅ。てか、由紀はここで食うのかよ」
みんなは受け取るだけの中、躊躇なく個包装の封を切って林檎バームを口に放り込む由紀。すごいな、流れるように食べ始めたぞ、こいつ。
「何、文句でもあるの?」
もっしゃもっしゃと林檎バームを食べながら、ジト目で由紀が俺を睨んでくる。
何だよ。そんな風に睨んだって可愛いだけだぞ。