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第181話 いつメンでがちま屋

 大島駅近くにある沖縄料理屋〝がちま屋〟。

 喜屋武のバイト先でもあり、俺とヨシノリにとっては近所でもある。

 文化祭に向けての準備が始まったばかりのこの時期、いつものメンバーで初めて店を訪れることになった。


「うわー、本格的な感じだね!」


 店の入り口で、ヨシノリが興味深そうに看板を眺めている。沖縄らしい赤瓦の装飾と、シーサーの置物が目を引く外観だった。


「思ったより小さい店だな」

「でも、雰囲気がすごくいいですね」


 アミが穏やかな笑みを浮かべながら店内を見回す。木目調の温かい内装に、沖縄出身アーティストの楽曲がBGMとして流れている。


「あ、鳴久だ」


 奥のカウンター席から、エプロン姿の喜屋武が手を振ってくる。いつもの学校とは違う、働く姿の喜屋武は何だか新鮮だった。


「みんな、はいさーい!」

「お疲れさま。今日は忙しい?」

「そうでもないさー。ちょうど落ち着いた時間帯だから、ゆっくりできるよ!」


 店内は確かに他の客は少なく、俺たちが座ったテーブル席以外は空いている。


「へー、喜屋武はここでバイトしてるのか」


 ゴワスが物珍しそうに店内を見回している。


「沖縄料理って、正直あまり馴染みがないんだよな」

「僕も詳しくはないけど、愛夏ちゃんと何回か来たことがあるんだ」


 ナイトが笑みを浮かべながら店内を見回す。おい、何ちゃっかり近所でデートしているんだ。


「私は何度かキャンちゃんのバイト終わりに合流するために来たことありますよ」

「あたしは近所だけど、なんだかんだこれてなかったし、楽しみね!」


 口元の涎を拭いながらヨシノリが楽しそうに笑う。


「おいしいメニューがたくさんあるから楽しみにしてて!」


 喜屋武が得意げに胸を張る。バイト先での彼女は、いつもより自信に満ちて見えた。


「とりあえず、おすすめを頼んでみようか」

「そうだな。喜屋武にお任せよう」


 俺の提案に、みんな頷いた。


「じゃあ、ゴーヤチャンプルーと、ラフテーと、ソーキそばのセットがおすすめさー!」

「全部美味しそう!」


 ヨシノリが目を輝かせる。


「にしても、もう文化祭なんて時が経つのは早いさー」


 注文を取りながら、喜屋武が嬉しそうに言う。


「あっという間でしたよね。夏休みの旅行もついこの間の出来事みたいです」


 アミの言葉に、その場の全員が頷いた。それから文化祭の準備の話に花が咲く。


「そういえば、うちのクラスの出し物、まだ全然決まらないよね」

「ほんと、みんな意見がバラバラで……」

「ナイトはまとめ役だから大変だよな」


 気遣うように言うと、ナイトは大きくため息をついた。


「はあ……どうしてこんな役を引き受けちゃったんだろう」

「どうせ誰も立候補しないから話進まなそうで引き受けたんだろ」

「損な性格してるよなぁ」

「そう思うなら、君たちがやってくれてもいいんだよ?」


「「絶対に嫌だ」」


 クラスのまとめなんて面倒なこと、死んでもやりたくない。

 こういう全体の出し物に関しては便乗して楽しむのがコスパがいい。

 ただでさえポニテ馴染の制作進行やカミラのコミカライズ、漫研の出し物で忙しいのだ。クラスのために使う時間なんて残っていない。


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