第165話 放課後K&K
やってみたら俺とトト先の創作ラジオは、思いのほか好評だった。
この時代のニヤ生配信の流行り、トト先のすでにある程度確立された知名度。
その二つが合わさって、視聴者の流入ハードルはかなり低かったようだ。
東海林先輩に相談したところ、すぐに学校側の許可を取り付けて放課後の活動が許可された。
一応、学内放送が入らないようにだけ音響設備を整える必要はあったが、その辺は何とかクリアできた。
配信タイトルは〝放課後K&K〟。
番組構成は、お便りコーナーとテーマトーク、時々作画の様子を映したりする。
画面上にはいただいたお便りを移しながら、画面端にトト先にデザインしてもらった俺たちの立ち絵を表示している。
未来でいうVtuberのコラボ配信のような画面構成も好評だった。
「というわけで、今日もゆるーくお便り読んでいきましょう」
「いえぇーい」
「ラジオネーム〝喫煙者はスパコラさっさ〟さんからいただきました。歩きタバコはダメですよー」
「ざっす」
[名前がひどいwww]
[高校生クリエイターの配信を見るヤニカス]
[絵面が悲しいなぁ]
【お二人はそれぞれ小説家とイラストレーターですが、使っている機材を教えてください】
「とのことですが、トト先はアナログだし、カメラで見せた方が早そうですね」
「おけまる」
画面を切り替え、雑談をしながらでも止まることのないトト先の手元を映す。
机の上にはアナログ原稿用紙とインク、スクリーントーン、カッター、そしてトト先が握っているGペンが映し出される。
[Gペンだ!]
[ペンさばき見てるだけで楽しい]
[JKの手元配信ってだけで尊い]
[手元カメラありがてぇ]
まあ、コメント欄は現役JKの手元ばっかりに注目しているのだが。
「俺はPCでワード使うか、基本ポメラで書いてます」
[高校生でポメラかよ]
[ポメラ高くない?]
[機能メモ帳なのに、クソ高い]
[まあ、あれ小さなパソコンだからな]
「ちなみに、誕プレでもらいました」
一応、現時点ではヨシノリのことは伏せておこう。
もし存在を出すにしても、それはポニテ馴染の発売が近くなってからのほうが宣伝効果があるだろう。
「カナタはデジタルに魂を売った。悲しみ」
「売るも何もデジタル育ちですよ。鉛筆で原稿用紙に書けってか」
[腱鞘炎になりそう]
[デジタルに魂を売ったカナタ先生VSアナログに命をかけるトト先]
[VSマークライ]
[またしても何も知らないマークライさん]
コメント欄ではニヤ生らしくネットミームも飛び交っている。
ちなみに、マークライとはモンスターテイルズという有名育成ゲームのモンスターで、映画で登場したモンスターの名前だ。
そのときの映画が三つ巴の戦いを表すタイトルだったことから、何かとネット上の戦いが起きると〝VSマークライ〟というコメントをするのがお約束になっていた。
「アナログこそ至高。異論は認めない」
「あんたは機械音痴なだけだろうが」
[カナタ先生だんだん口悪くなってて笑う]
[トト先って、液タブ使わないの?]
[液タブにすれば配信効率も上がるよ!]
そんな視聴者のリアクションが、コメント欄に次々と流れていく。
「設定よくわかんない」
「でしょうね」
毎度おなじみの機械音痴宣言。
視聴者もわかっているのか、コメント欄は〝ですよねー〟というコメントが流れていた。
「意外と使ってみればハマるかもしれませんよ?」
「じゃあ、カナぴ買って。印税で」
「嫌ですよ! というか、まだ入ってないし、そもそも宣伝にオールインしたので一銭も入りませんよ!」
「シンフォニア大賞の賞金がある」
「何とかして後輩にたからないでください!」
[これはひどい]
[後輩に液タブ一式をたかる先輩の図]
[不良のカツアゲよりひでぇや]
[トト先の作業配信が進化するなら大賛成]
[カツアゲに目が行って高校生で印税全部宣伝に使う異常さに誰も気づいてない]
「じゃあ、放課後に買いに行こう」
「じゃあって、なんですか。自腹でお願いしますよ」
「仕方ない。その代わり手厚いサポートをすることで許す」
「なんであんたが妥協したみたいになってるんですか! 店員に聞くの無理だから俺を連れて行きたいだけでしょうが!」
[これは保護者同行案件]
[カナタ先生、頼りにされすぎ問題]
[どっちが先輩かわからなくなるときあるよね]
[何だかんだでお似合いな二人]
[つ胃薬]
こうしてドタバタしながらも、今日の配信も盛り上がっていくのであった。