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第15話 漫研への入部

 とっととカク太郎。

 その名前は未来において創作界隈の間ではかなり有名だった。

 夏と冬に行われる同人イベントコミックマーケットにおいてのシャッターサークルの中でも、禁止されている徹夜をしても買えないと言われている大人気サークル〝立津亭(たちつてい)〟のサークル主。


 柔らかく繊細なタッチが特徴的で、髪や眉毛、そして瞳の表現に定評のあるエロい女の子を描かせたら右に出る者はいないと言われている〝神絵師〟だ。

 この時代では頭角を現し始めた人気のイラストレーターといった知名度だ。

 要するに現状でも、既に神絵師である。


「お会いできて光栄です。とっととカク太郎先生」

「長いから好きに呼んでいい」

「じゃあ、トト先で」

「さすが小説家。いいネーミングセンスしてる」


 とっととカク太郎先生の略であり、伊藤都々先輩の略でもあるので、提案してみたところ気に入ってもらえたようだ。


「ちょっと、カナタ。なんか先輩とわかり合ってないで説明して」


 未来での大物イラストレーターとの邂逅に内心感激していると、隣にやってきたヨシノリがこそっと耳打ちしてくる。その表情はどこか不機嫌そうだ。

 しまった。みんなを置いてけぼりにしてしまっていた。


「トト先、今更ですけど話してもいいですか?」

「おけまる」

「この人はとっととカク太郎先生。イラストレータ―だ」

「吾輩は絵師である。仕事はまだない」


 ピースピースと抑揚のない声で適当にサムズアップしたトト先が淡々と告げる。そのポーズ、ピースじゃないだろ。

 思ったよりコミカルな人だった。


「な、何か独特の空気感の人ね」

「クリエイターって、変人多いしな」

「あんたが言うな、あんたが」


 ヨシノリに睨まれたが、気にせず続ける。


「ワンチャン未来のイラストレーターと繋がりを作っておきたかったから漫研にきた。そして、大物がいたから即入部を決意。そんな感じだ」

「端的な説明ありがとう」

「そんなすごい人がこんなところにいたなんて……!」


 感心したようにナイトが頷き、アミがわぁ……と目を輝かせて感動している。

 あの、アミさん? こんなところはないんじゃないですかね。


 それから入部届を提出した俺は、ナイトとアミの部活見学に付き添うために漫研の部室を後にした。

 あれからいくつか部活を回って、ナイトはサッカー部に入部し、アミは帰宅部続行のようだ。

 うーん、見事にインドアとアウトドアで割れたな。


 その日は、特に寄り道もせずに帰宅することになった。


「ヨシノリはバスケ部の練習いかなくて良かったのか? もう入部したんだろ」


 帰りの電車で隣の席に座るヨシノリに尋ねてみた。運動部ってイケイケなイメージがあるから、大丈夫なのか心配になったのだ。


「部活見学期間中はまだ出なくてもいいんだってさ。ま、友達付き合いもあるしね」


 俺の問いに対して小さく笑うと、ヨシノリはウィンクをした。目を瞑る度、瞼に引かれたオレンジ色のアイシャドウが煌めいてドキッとする。


 何だか、新たな癖を開拓してしまったかもしれない。


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