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伯爵様の新妻  作者: 小宵
Ⅰ:伯爵様と意中の令嬢
2/23

求婚

「お嬢様、伯爵様よりお手紙が届きました」

「また?」


 アイリスはため息をついて執事のマルキーが差し出した手紙を受け取る。

 マルキーの後ろを見ると、大きな箱がいくつも運びこまれている。

 いつもの光景にアイリスはまたため息をこぼした。


「……さすがにあれは売れないものね」

「……お嬢様」


 最近毎日のようにゼノから愛を綴った手紙とプレゼントが山のように届く。

 流行のドレスや靴。

 部屋を埋め尽くすほどの花束。

 どれも今のアイリスには不要な物だった。

 送り返せば本人がやってくるので一応もらっている。 

 しかし、人から貰った物を売ることは出来ないので、今ではベッドしかない自室に箱のまま積んでいる状態だ。


「来られるよりはましかしら」

「……そうですね」


 ゼノは手紙やプレゼントを贈るだけでなく、たまに子爵邸までやってくる。

 そしていつも庭に案内するのだ。

 伯爵にたいして失礼なのは分かっているのだが、絶対に部屋に入れることはできない。

 まず、椅子がないのだ。

 机も家具も、お金になりそうな物はすべて売ってしまった。

 家人も今では好意で残ってくれているマルキーただ一人。

 家事はアイリスとマルキーが二人で力を合わせてしている。

 こんなところに伯爵を迎えるなど言語道断だ。


「何故、私なのかしら」

 

 からかわれているとしか思えないのだが、どうやら本気らしく、困惑するしかない。 

 容姿は十人並みだし、体系も痩せすぎていて、色気の欠片も無い。

 ゼノに手を握られた時は心臓が止まるかと思ったのを今でも覚えている。

 家事に追われてがさがさになってしまった手を、あの美貌の人に知られてしまったと思っただけで、初めて自分が惨めだと思ってしまった。

 

 母は他界し、父とマルキーと三人で民を守るため働いてきた。

 後悔などしていないし、寧ろ誰かの役に立てることが嬉しかった。

 でも、ゼノに手を握られて、初めて恥ずかしいと感じてしまった。

 そんな自分に激しく嫌悪する。

 この手は自分の誇りのはずなのに、ゼノに会うと恥ずべきのように思えるのだ。

 

 初めての社交界デビューの日、アイリスは会場の端っこで周りの煌びやかな人たちを眺めていた。

 あの頃はまだ、お金にも余裕があり、ドレスも流行のレースやフリルをふんだんに使った可愛らしい淡い黄色のドレスを身にまとっていた。

 童顔なアイリスとその可愛らしいドレスの組み合わせは、彼女をより幼く見せていたのだろう。

 誰もアイリスを気にも留めず、男女が微笑み合い、くるくると回るその光景をひたすらぼんやりと眺めた。

 すると、二人の男性が現れ、女性達の視線を釘付けにしてしまう。

 一人は王子。この国では珍しい黒い髪に黒い瞳が神秘的な雄雄しく美しい豹を連想させる方。

 もう一人はこの国一番の美男子と噂される、伯爵のゼノ。

 二人とも結婚しているのだが、王子には愛妾の立場を狙う女性が、ゼノには後妻を狙う女性が群がっている。


 大変だなぁ、と人事のように思っていると、アイリスが興味なさそうに立っているのが逆に珍しかったのか、王子にダンスに誘われた。

 女性達の視線が痛かったが、断る方が不敬罪にあたる。

 喜んで、と微笑み一曲踊った。

 近くで見た王子は、見た目の鋭さからは思いも寄らない優しい目をしていて、安心して身を任せることが出来た。

 一曲終わると、そのまま王子とゼノが入れ替わって2曲連続に踊る羽目になった。

 足が痛かったが、我慢してこちらに笑顔をむけるゼノに微笑み返した。


(噂通りの方だなぁ……)


 眩しすぎて目を開けていられない、と思ってしまうほどかっこよかった。

 女性がほおっておかないはずだ。

 何でも、女性には優しいとても紳士な方らしい。

 アイリスにも笑顔で接し、とても優しかった。


 曲が終わり、ゼノの美しさと周りの視線に疲れきったアイリスは帰ろうと、会場をそのまま後にする、が。


「調子に乗らないでね」

「あなたが余りにも可哀想だったからあの二人方もお情けで踊ってくださったの」

「そうね……あら、あなたそのドレス、とても可愛らしいわ」

「まぁ本当! 良く似合っているわ!! ぉ嬢ちゃん」

「ええ、とっても子供らしくて、乳臭いあなたにぴったりよ」


 そう言って赤いワインを掛けられ、笑いながら会場へ戻っていく妖艶な美女達を眺めた。

 

(……お母様のドレス)


 母の社交界デビューのときのドレスをリメイクして流行に合わせたドレスが汚れてしまったことが悲しくて、泣きそうになったが、疲れていたので取り合えず馬車を捕まえ、その日はそのまま子爵邸に帰ったのだった。


 それから何故か舞踏会に行くたびにゼノが声を掛けて来るようになり、何度か踊ったが、それに合わせて嫌がらせがエスカレートしていった。

 そして、それは子爵家に大きく関っていった。

 娘の居る貴族からの嫌がらせが父にまで及んでいたなんて知りもしなかった。

 結果、子爵家は貧乏になり、家を維持することすら必死になっているのだ。


 ゼノの申し出は嬉しいが、お金欲しさにゼノを利用するのは嫌だった。

 それに、ゼノと一緒に居ることで嫌がらせを受けると思うと気が滅入る。

 これ以上父に迷惑をかけるわけにはいかない。

 しかし、


「アイリス、伯爵の話、受けたらどうだ?」

「お父様」


 いつの間に帰ってきたのか父が手紙を開いたままぼーっとしていたアイリスを気遣わしげに見つめていた。


「お前も、伯爵が好きなんじゃないのかい?」

「まぁ、嫌いではありませんが」

「それに、こんなことは言いたくないが、資金援助は魅力的だ。実は私の方にも伯爵から手紙が来ていてな、明日お前を屋敷に招きたいそうだ。今日贈られたドレスを着ていきなさい」

「……はい」


 しぶしぶながら、父の言葉に頷いた。

 



 そして、次の日。


「ああ! アイリス。良く来てくださいました!!」

「え、ええ」


 着いた途端、ゼノ本人に迎えられ、驚いて後ずさりしてしまう。

 その姿をゼノが上から下まで眺め、満足気に頷いている。


「やはり私の見立てに間違いはありませんでした。よく似合っていますよ、アイリス」

「ありがとうございます」


 微笑み返すとゼノは嬉しそうにアイリスを部屋に招く。

 ふかふかの絨毯にふかふかの椅子。

 どれも最高級品ばかりだ。

 

(売ったらいくらになるのかしら)


 そんなことを思っていると三人の侍女がてきぱきとお茶の用意をしていく。

 お茶菓子も、王都で人気の菓子屋のものだ。


「どうぞ、遠慮なさらず召し上がってください」

「ありがとうございます」


 そう言ってマカロンを一つ食べる。

 久々に食べた甘いお菓子の味に、思わず頬が緩むのが自分でもわかった。

 紅茶も香りの高い、とても美味しいものだった。


 思えば紅茶を飲むのも久しぶりだ。

 コルセットをつけるのも久しぶりで、自然と背筋が伸びる。

 紅茶の香りを楽しんでいると、ゼノがクスリ、と笑みをこぼした。


「喜んでいただけたようで何よりです」

「ええ、とても美味しいです。ありがとうございます」

 

 微笑み返すとゼノはさっと顔を反らしてしまった。

 何か気に障ることでもしてしまったのだろうか?

 そう思うと、不安になってしまう。


(早く、帰りたい)


 本当なら今日は庭の手入れをして、孤児院で子供達の世話をしているはずだったのだ。

 今頃老体のマルキーが一人で庭の手入れをしていると思うと胸が痛んだ。


 なにやら暗くなってしまったアイリスにゼノは慌てて話し掛けようとしたが、大きな子供の泣き声にさえぎられた。

 それと同時に、部屋の扉が開き、子供を抱いた年嵩の侍女が入ってきて、ゼノの元まで子供をつれて来る。


「今日は大事な客が来るから寝かしておけと言ったはずだが?」

「それが……」

「ちちうえ~!!」


 えぐえぐと泣きながら、子供がゼノの首にかじりついた。

 アイリスはその天使のような子供に釘付けになった。

 父親譲りの金糸のような髪に大きな青い瞳をくりくりとさせている。

 子供らしく頬が林檎のように赤く染まっていて思わず頬擦りしたくなってしまう。

 この子が前妻とゼノの間にできた三歳になる息子だ。

 ゼノは自分の首に齧りついて泣く息子を剥がし、侍女に渡してしまう。


「寝かしてきてくれるか?」

「しかし、旦那様と遊びたいとごねられまして……」

 

 侍女が抱いているがゼノのほうに思いっきり手を伸ばし、「ちちうえ、あそんで!」と暴れている。

 そんな姿も愛らしくて、アイリスは思わずその侍女に向かって声をかけていた。


「あの、抱かせていただけませんか?」

「え?でも……」


 もちろん侍女は難色を示したが、ゼノが頷いたのを見て、子供をアイリスのところまで連れて来てくれた。

 しかし、始めて見る人を怖がってか、侍女に抱きついて離れない。


「私はアイリスと言います。あなたのお名前をお伺いしても?」

「……リュカ」

「リュカ様?」

「……うん」

「私とお友達になってくださいませんか?」

「……おともだち?」

「ええ」


 安心させるようににっこり笑うと、ゼノにしたように、いきなり首に抱きついてきた。

 びっくりしたが、嬉しくてぎゅっと抱きしめた。


「いいよ! おともだち!!」

「ありがとうございます」

「じゃあ、遊ぼう!! ほんとは父上と遊びたかったんだけど、父上忙しいんだって!!」

「遊んでくださるんですか?」

「アイリスは特別! きてー!!」


 ぴょん、と床に下り、アイリスの手を引き始めたリュカに焦ったのはゼノだ。


「ちょっと待て! リュカ、確かに私は忙しいがアイリスを連れて行ったら意味がないだろう!」

「えー? でも、アイリスは僕と遊びたいって……ねー?」

 

 首をかしげてアイリスを見上げるリュカにアイリスはもうメロメロだった。

 リュカを抱き上げ、ぎゅーっと抱きしめる。

 リュカもアイリスにぎゅーと抱きつき、きゃっきゃとはしゃいでいる。


「あの、伯爵様、リュカ様と遊んで来てはいけませんか?」

「う」


 図らずとも、ゼノとアイリスの身長差ではアイリスは上目遣いにゼノを見ることになる。

 アイリスの上目遣いと不安に揺れる瞳の二コンポでゼノはノックアウト。


 そして何故かリュカの部屋に移り、大きなソファーにアイリスとゼノが並んで座り、アイリスの膝の上にリュカが座って絵本を読んで貰っている。


「えー? だめー! 行ったら食べられちゃうよ!!」

「大丈夫です、だってお姫様には王子様がついていますもの」

「あ! そっか!」


 楽しそうに遊ぶ二人にゼノはなにやら複雑そうである。

 大体、リュカは人見知りなはずで、初めての相手に懐くことなどありえないのだが二人は姉弟のように親しげだ。

 そしてなによりアイリスの膝を占領していることが許せない。

 そんな表情を隠しもせず二人を見ているのだが、アイリスはリュカしか見ておらず、気づかなかった。


 膝に乗り、笑顔で振り返って来るリュカが可愛くて可愛くて仕方なかった。

 リュカがずっとご機嫌なので、アイリスもずっと笑顔だ。


「そしてお姫様と王子様は結婚していつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし」

「けっこんー? けっこんてなぁに?」

「好きあった者同士が一緒に暮らすこと、でしょうか」

「ほんと!? じゃあ僕、アイリスとけっこんするー!!」

「まぁ、本当ですか?」

「ちょっと待て!!」


 そのまま流れで結婚の約束をしてしまいそうな二人を止めたのはもちろんゼノだ。

 突然の大きな声に二人は驚いてゼノを見た。


「ちちうえ、いたの?」

「……最初からずっといただろう」


 息子に嫉妬するなど思いもしなかった。

 ゼノはがくっと肩を落とし、本気で父の存在を忘れていたらしいリュカをアイリスの膝から掬い上げた。


「やー!! ちちうえ、おろしてー!! アイリスぅ!!」

「こら、困らせるんじゃない。もう日がこんなにも傾いてしまったのだ。いつまでも彼女を拘束しておく訳にもいくまい」

「やーだー!! アイリスは僕といるのー!! いっしょに暮らすのー!! けっこんするのー!!」

「いい加減にしないか!」

「!」


 ゼノの怒声に、リュカが驚いて泣き出してしまった。

 そんなゼノとリュカを見て、アイリスがゼノの腕からリュカを奪った。

 ゼノはいきなりアイリスが至近距離に来たためびっくりして、あっさりとリュカを渡してしまった。


「リュカ様、泣かないで」

「うえ……ひっく、アイリス、一緒にくらそ? かえっちゃやだよぉ」

「まぁ……」

「けっこん、したら一緒にいられるんでしょ?」

「確かにそうですが、リュカ様のお年では結婚はできませんよ?」

「どぉして?」

「男の方は十八にならなくては結婚は出来ないのが決まりです」

「じゃ、じゃあ……いっしょ、無理なの?」

 

 目が零れ落ちてしまいそうなリュカの瞳にそっとアイリスは口付けた。

「あ!」とゼノが叫んだので、伯爵家の跡取りに失礼だろうか、と思ったがリュカがびっくりして涙が止まったのでよしとする。

 びっくりした顔でアイリスを見つめるリュカに心からの笑顔を向ける。


「結婚は無理ですが、一緒には暮らせます」

「ほんと!!?」

「ええ」


 アイリスは微笑んで、何故か固まってこちらを凝視しているゼノを見た。


「伯爵様、あの言葉はまだ有効でしょうか?」

「え?」

「私を貰ってくださいますか?」

「……は?」


 ゼノは何を言っているか分からないといったふうにアイリスをぽかん、と見つめている。

 やはり、もう遅いのだろうか。それともやはりからかわれていたのだろうか、とアイリスは不安になった。


「私ではリュカ様の母にはなれませんか?」

「……本当に?」


 ゼノの美しい顔が間近まで迫ってきて、やっぱり無理かも、とアイリスは思ったが、腕の中にいるリュカの不安そうな顔を見ると、傍にいてあげたいと思う。

 三歳で母に死に別れ、寂しい思いをして来たに違いない。

 そこまで考えて、アイリスははっとした。


(そうだわ、それなら私でもいいはず)


 きっとゼノはリュカの母親を探していたに違いない。

 それならば平凡なアイリスをわざわざ選んだわけがわかる。

 下手に権力のある娘だったらリュカの今後に影響を及ぼすかもしれないし、美しい女ならリュカをほおって浮気したり、他の男に取られてしまうかもしれない。

 アイリスなら、そんな心配は皆無だ。

 アイリスは俄然、やる気が出た。


 俯いて考えていたためか、リュカが心配そうにアイリスを覗き込んだ。


「アイリス? どこかいたいの?」

「え? い、いいえ。そんなことはありません。心配してくださってありがとうござ……きゃあ!」

「むぐ!」


 抱き上げていたリュカごとゼノに抱きしめられ、目を白黒させてしまう。

 ゼノからはとてもいい匂いがして、頭がくらくらとしてしまった。


「ああ、アイリス!! 必ず幸せにして見せます!!」

「え、ええ」

「ちちうえー!! くるしいー!! はなれてー!!」


 リュカの抗議に離すどころかリュカごとアイリスを抱き上げくるくると回りだした。

 家人達は今までに無い主人のはしゃぎように驚いて固まっている。


「あ、あの伯爵様、下ろしてください!」

「きゃはははは!! ちちうえ、もっとー!!」

 

 しばらく回り続け、そのままソファーにどさっと座り、膝の上にアイリスを乗せ、抱きしめた。

「ちちうえ、苦しいー!!」ともがもが二人の間でもがいているリュカが居てくれて本当によかったとアイリスは真っ赤になりながら思った。

 夢のような王子様に抱きしめられているのだ。

 緊張しないはずがなかった。

 リュカが居らず、全身が密着していたらきっと気を失っていただろう。

 色っぽい顔をさせたゼノが迫ってきて、アイリスは焦った。


「え、え? あ、あの伯爵様?」

「ゼノと、お呼びください」

「あ、あのあのあのゼ、ゼノ様」

「はい」


 名前を呼んだ瞬間蕩けるように微笑まれ、余計に心拍数が上がってしまった。

 なお近づいてくる美し過ぎる顔にアイリスは耐えられなくなってゼノの口を両手で押さえた。

 しかしその柔らかな感触にまたしても心拍数が上がる。


 真っ赤になっておろおろしだしたアイリスを更に抱き込み、口を押さえる指に噛み付く。

 びっくりしたアイリスが後ろに倒れこんだのをいいことにそのままソファーに押し倒す。

 いつの間にか使用人は一人もいなくなっていた。


「あ、あの……」

「……そんな泣きそうにならないでください。別にとって食いやしませんから」


 すでに話す度、お互いの吐息が口にあたり、アイリスは緊張のしすぎで震えが止まらない。

 ちゅ、っと頬に口付けられ、ぎゅっと目を瞑ると、唇に息がかかった。

 もう、何も考えられない。




「ぷは!! もーーーーー!!!!」

「「!!!!!」」


 二人の間に挟まれたままだったリュカが這い出てきて、アイリスの眼前の顔がゼノからリュカに変わる。

 びっくりしたアイリスを不思議そうに見つめてにこっと笑うと、可愛らしくちゅっとキスされた。

 唇に。


「アイリス、かわいい!!」

「まぁ……ありがとうございます」

 

 そのままリュカがじゃれてアイリスにちゅっちゅとキスを繰り返し、アイリスも笑ってくすぐったそうにしている。

 二人の上に乗っているゼノが震えていることには気づかない。

 

「リュカーーーー!!!」

「「!」」


 ゼノの怒号が鳴り響く。

 リュカの首の根っこを掴みアイリスから引き剥がし、説教をし始める。

 

 上の重みがなくなりアイリスはドレスの乱れを直し立ち上がる。

 胸に手を置き、先ほどまでの心臓の高鳴りに首をかしげた。

 あんな寿命が縮みそうな、心臓を鷲掴みにされたような感覚は初めてだった。

 ゼノは着痩せするのか、思ったよりも胸が広くて大きかった。

 香水でもつけているのか、とてもいい匂いがした。

 

 そんなことを思い出して、一人で赤くなっていると、ゼノから逃げ出したリュカがアイリスのスカートの後ろに隠れた。


「アイリスー! ちちうえがいじめるー!!」

「な! 卑怯だぞ!!」


 アイリスの後ろから顔をだしてべーっとしているリュカと、それを見て悔しそうに顔を顰めるゼノにアイリスはくすくすと笑う。

 そんなアイリスを見て、ゼノとリュカも顔を見合わせて笑った。



 こうしてアイリスは伯爵家に嫁ぎ、子爵家の資金援助が約束された。

 しかし資金援助するまでもなく、伯爵家の後見がついたため、今までの嫌がらせも無くなり、伯爵家と繋がりを求める貴族達での訪問が後を絶たないらしい。



 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 


 

 

ゆっくりペースの更新になると思います。

気長に付き合ってくださいませ。

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