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6話『分かりきった因果応報』

空虚な人だかりで、イツミは何を話すのか……?


私たちがバルにやって来てから2日目の、まだ日も高い穏やかな午後3時ぐらいの頃だ。


いつの間にか、群衆とともにイツミさんは村の広場に移っていた。

英雄サマと、その連れの女神が彫られた石像が見守る村の広場で、村人に扇状に囲まれたイツミさんが切り株に座って指を組んで重々しく待機している。

なんか、本当にこれから大勢の前で喋る人とは思えないんだよね。


ちなみに、私は何処で何をしているのかと言うと、群がる村人と一体化するようにイツミさんを見守っていた。


「よっしゃ!英雄サマの話とかたくさん聞けっぞ!」

「でへへ、あん時のツレの金髪姉ちゃんの話とかも聞きてえなあ……。あれ、そこにいる姉ちゃんもなかなか色っぽいじゃねーか!まさか、あのボウズのツレか?こんな可愛い子連れまわせるとか、やっぱお前らんとこの国最高だな!」

「あ、あはは〜……お気になさらず」


英雄サマことカザリ・セイをナビゲートした“宝石の女神”スタリーを思い出し、鼻の下を伸ばした男に絡まれそうになる私だったけど、引き攣った笑顔を見せて軽く(かわ)してやった!



◆◇◆



「えー、それでは予定通り集会を行う。……その前に、今日は特別に来訪者が講演をしてくださるそうじゃ。この方は、かの英雄サマの師匠であられるクズミ・イツミ殿じゃ」

「俺が、かの英雄サマの師匠のクズミ・イツミだ。お前らに崇められるように全力で務める」


運良く──なのかどうかは正直言って疑わしいけど──サーク村の収穫予定の作物の出来や量を確認する集会が行われるみたいで、その枠を借りてイツミさんの講演会が行われる。


内容は基本イツミさんに委ねられているようだけど、村人たちの多くが期待しているのが“英雄サマのお話”だった。

一部の村のおっちゃんたちは……連れのスタリーの話を主に聞きたいらしいけど……。


だけど、スタリーはおろか、カザリ・セイのことなんてあの石像ぐらいしか知らないイツミさんが、そんな話ができるとはとても思えない。



私がそんな不安を抱いている中、大衆の、弾まんばかりの期待なんてつゆ知らず、イツミさんは口を開いた。


「唐突な話になるが、俺の故郷は息苦しい場所でな、他者との戦いの連続だった。蹴落とし合い、貶し合いが華。信頼なんてモノは何処にもない。しかし、世界は回る、社会は動く、変わり映えのない血みどろの毎日は繰り返される。そんな中、ある時俺は気づいたんだ。身を焦がす労働は、競争は、そしてそれを強いる社会はゴミ以外の何物でもないと」

「…………?」「何言ってんだ?」

「どんな物事にも適性ってのがあるし、必要不可欠だろ?だが、故郷で俺は(あら)ゆる事柄にそれがなかった。だから、俺だけが悪いのかと思わされてきた。だが、ある日突然見方を変える方法に気が付いた。俺を苦しめている、悩ませている社会に態々迎合する必要なんてないのだと、な。故に、俺は無職(無敵の人)になった。その結果、今後手にするはずだった責任や栄光、未来を犠牲に、傷ついたり何かを失ったりしなくなったんだ」

「わっけわかんねー。せっかくワクワクしてんのに難しい話なんかすんなよ!」


イツミさんの、はっきりとしない故郷の話に、私はもちろん、村人一同困惑の表情を浮かべた。


恐らくだけど、以前、カザリ・セイから聞いていた魅力溢れる光の世界と、イツミさんの言う夢も希望もない世界が、村の人たちからしたら同じ世界の話だととても思えないんじゃないかしら。


「おうおう、本当にこいつは英雄サマと顔馴染みなのか?ガキども、聞き間違いでもしたんじゃねえよな?」

「ん、んなことあっか!さっきおっちゃんも聞いてただろ?確かにこのにーちゃんは『俺は英雄サマの師匠』って言ったんだ!そうだよな!?にーちゃん!」


集う村中の人間が、疑心に囚われたその時だった。

負の言葉ばかりをつらつらと述べていたイツミさんの雰囲気が、ふわりと柔らかくなる。


「故郷、か。────その点、この村は良い。ひとりひとりが他者と手を取り合い、横並びで歩んでいる。支え、助け、尊重し、大人は子どもを守り、子どもは大人に敬意を抱いている。ゆめ忘れるな、お前らの住むサーク村は決して俺の故郷に劣らん。それどころか、憧憬の念すら抱いているさ」

「イツミさん……」


そう、私たち神の前に召喚される勇者の卵たちは、漏れなくみんな死に方に問題がある。

ってことは、当然、イツミさんもそうなんだろう。


…………私は、この人の過去を全く知らない。

全く知らないから、この人のことが全く分からない。

でも、決して良い人ではないけれど、ないんだけれど、悪い人なだけではないのかもしれない。


イツミさんのどこか寂しげな表情に、私は彼の隠れた一面を見た気がした。

そして、なぜか生まれた胸のモヤモヤを紛らわそうと、気づいたら私は自分の綺麗な薄藤色の髪の毛先を弄っていた。


「故郷を知らなければ、異郷を語ることはできない。今、この話を聞いている者の中には、いつの日かサーク村を出る奴もいるんだろう。そういう奴には特に言えるが、出るまでにもっとこの村を理解することだ。良いところも、悪いところも、な」

「良いところも、悪いところも……」

「そうだ。逆に、異郷に触れなければ、故郷に気づくこともできない。俺は、今日この村に来て、故郷に気づいた。…………気づいた結果、更に憂鬱になったがな」


そよ風が木の葉を巻き込んで吹くと、イツミさんは自虐気味に笑い、天を仰いだ。


諦めたような、熱のない冷めたような、ある種悟りを開いたような、そんな表情が木洩れ日に照らされる。


しかし、意外にも、魂が抜けたみたいなイツミさんの言葉に心を揺さぶられている村人たち。

このまま、イツミさんがこの場を掌握するのは時間の問題だった。


そう、そのはずだった。

その後、あんな余計な発言さえしなければ……。


「何もかもかなぐり捨て、俺はここまで流れ着いた。望まずとも与えられたこの第2の人生は、恵まれなかった俺への褒美でもあり、恵まれる努力を怠った俺への罰だと思っている。昨日より良く生きること、それは生物の至上命題だが俺はそれから目を逸らしていた。いや、逸らしていたんだが、逸らすのをやめた。そんな最中に俺は────ふっ、俺の話をするとは言ったが、こんな個人的な話をすることになるとはな。一旦は止めておこう。ここまでの話はそんなところだ」

「イツミさん……!」


ごめん。

なに言ってんのか、全っ然分かんなくなった!


故郷のくだりは割と感心させられたけど、ちょー個人的な話するようになってから難解すぎるっつーの。

ほら、周りの人たちもみんな考えだしちゃってるし、中には鼻ほじってる子もいる!


人になにか伝えるときはそんな抽象的じゃなくて解り易い言葉じゃないと……!

いや、私もよくやらかすけど。


私も私で、表情は変えずに、心で頭を抱えるこの現状。


居た堪れない気持ちを押し殺して、周囲にいる村人たちに目を向けるのももう嫌になってくる。

授業参観で、子どもが斜め上の回答をしたのを特等席から見る親って、多分こんな心情なのかしら……?


って私がどぎまぎしてるこの状況でも、イツミさんは話を止めない。


「まあ、良い。そして、次にする話だが────」

「うーん、にーちゃん全然言ってること分かんねー。分かんねーけど、一日一日を大切に生きろってことか?」

「そんな当たり前のこと言って何がしてえんだか。まあ、当たり前をすることが大事なんだってのは分かるがよ。でも、なんか、複雑な言葉で誤魔化してるような気がするぞ」

「長ったらしいんだよなあ。長老の昔話よりも長えよ」

「というか、本当にこの人英雄サマのお師匠なの?村の子たちが騙されているだけなんじゃないの?」


うっわ、みんな声漏れ出してる……!


老若男女問わず反応は一致してて、揃って不満気なご様子。

中にはイツミさんが“英雄サマの師匠であること”すら疑い始める者が出てきた。

まあ、嘘なんだから疑われてそこは当然なんだけど。


疑念の声は、まるで葉から水溜まりに落ちる水滴の波紋のように広がり、あっという間に群衆に伝わっていった。



そうなってしまえば、もう、イツミさんの言葉に彼らを説き伏せる力はなかった。


「ん?おい、何故帰ろうとする。俺のありがたい話を聞く気はないのか、お前ら」

「じゃあ、さっさと英雄サマの話しておくれよ!師匠のあんたにしか見せない一面とかあるんでしょう?」

「英雄サマの話か……。そうだな、あいつは普段は人前でしっかり者ぶっているが、俺の前ではドジな一面があった。それを俺が度々フォローしてやってな。……よし、なら次の話は」

「ええ!?それで終わり!?もっと聞かせてくれよ!」「そうだそうだ!」「早くしてくれ!」


ああ……1人の不満を皮切りに、非難が轟々とし始めてきた。

でも、収拾がつかなくなりそうなその様子を、イツミさんは変わらない涼しげな顔で見つめながらも言葉を絞り出す。


「そうだな……。仲間想いな奴だったよ、凄く優しい奴だった。あとかっこよかった、女からはよくモテたな。男からも盲信的に慕われていた。但し、俺は除いてな。────これで満足……してなさそうだな」


さっきから英雄サマ関連のコメントが軽いんじゃ!!


村人にはそれをもう見透かされていて、村の集会が行われている広場は、微妙すぎる空気に包まれている。

その空気は、村人ひとりひとりにその場から離れさせるのに充分すぎるぐらい重かった。






「なあ、1つ良いか?」


その雰囲気と、イツミさんの上辺にすら満たない知識からなる英雄サマのお話に辟易し、誰もが撤収しかけたその時に、1人の青年がイツミさんにそう問いかけた。

緊張からか、それ以外の理由からか、固く握ったその手は小刻みに震えている。


「…………何だ?」

「英雄サマの髪と瞳の色、知ってるか?口癖、知ってるか?どんな人だったか判るか?」


あー……終わった。

勇者召喚の儀で見たことある私ですらうろ覚えなのに、会ったことすらないイツミさんがその質問答えられるわけないっつーの。


「髪は……故郷で会っていた時は黒髪。瞳は茶色。口癖は……『熱くなってきた!』。性格は……明快精悍」

「……………………名前、知ってるか?」


嘘……!?

イツミさん、突破した!


でもこっからの質問は、もっと具体的じゃないとダメね。


英雄サマの存在をサーク村で初めて知ったイツミさんは、もちろん彼の名前を知らない。

私だって、石像の土台に彫ってある名前見るまで忘れてたし!


だけど、大丈夫。


この広場には名前を知り得る、ヒントのような物がある。


それは石像の土台だ。

どこの誰が彫ったかも知らないその石像に、英雄サマの名前が彫ってあるから!


「…………お願い!気づいてイツミさん!」


心から念じるあまり、口から出てしまったその想いに、呼応するかのように、イツミさんはちょっと離れた石像を軽く凝視して……


「……【周囲を窺う(ヴィーヴ)不審な視線(・アイズ)】」


周囲を窺う(ヴィーヴ)不審な視線(・アイズ)】を発動した!



私は胸元に入れたイツミさんのステータス表を取り出して、その詳細を再確認する。


イツミさんの特恵、《怠惰なる矜持》。

これによる異能、【周囲を窺う(ヴィーヴ)不審な視線(・アイズ)】は、瞬発的に視力を上げる技。


サーク村への道中、イツミさんのステータス表を一緒に見て、彼の持つ異能を確認したけど、これはその中でも比較的汎用性が高いものだ。


うんうん。

対象は、英雄サマを象った石像ね。


「でかしたわね、イツミさん。それならバレずに彫ってある名前が読める!…………ふう、弟子の名前を答えられない師匠なんて師匠じゃないもんね。良かったわあ」


周囲を窺う(ヴィーヴ)不審な視線(・アイズ)】を使ったイツミさんを見て、私はバレないように小さくガッツポーズをした。


そして、僅か一瞬だけど、イツミさんの眼は確かにある映像を捉えたようで。

イツミさんは、凝視した英雄サマの石像の土台部分に、刻まれてあったある名前を、自信満々の表情で読み上げた。


その名前は……


「ふっ、容易い。師匠の俺にそんな初歩的なことを訊くとはな。────カザリ・セイ。あいつの名前は、カザリ・セイだ」


よし!カザリ・セイってちゃんと言えた!


だけど、場の空気は重くて。

そして、質問してきた青年は極めて冷ややかな反応を見せた。


「そうか、そうなんだな。…………実に残念だよ」


青年がそう言って、右手でひらひらと合図を送ると、石像近くにいた2人の村人が気まずそうに土台の部分を触る。


いや、触るだけじゃない。

なにか、そう、カバーみたいなのを取り外しているようだった。

そのカバーのような物が、石像の土台に巧く付けられていた石板だと気付くのに、私たちにそう時間はかからなかった。


「なっ……!?」「嘘でしょ……!?」


思わず声が漏れたのは私だけじゃなくて、イツミさんの面にも、焦燥の色が瞬く間に広がっていく。


同時に、緊張と焦りが限界を迎えた私は舌の奥が痺れ、手から汗が吹き出し、身体の芯が冷え、下半身の後ろにチクチクと刺される感覚もやって来た。

きっと、イツミさんも同じのを感じているだろう。


そう、イツミさんが凝視した文字は、外付けの石板に刻まれていた文字だった。


まさかと思ったイツミさんは、再び石像の方を凝視し、確認する。


実際に、土台に記されていた名前は……


「────か、カザハリ・セイヤ……!」


カザリ・セイではなく、カザハリ・セイヤ。

それこそが、英雄サマの本名だった。


イツミさんは、私は、まんまと青年の作戦に引っかかったのだ。



その青年が、額に筋を立て、震える拳を抑えながら捲し立てる。


「俺は、俺はこの石像を彫った石工だ!そして、英雄サマたちに命を救われた1人にして、友の1人だ。俺はずっと疑っていたんだ。でも、間違いであってほしかった……。クソぉッ!!!!お前は、英雄サマの師匠なんかじゃない!」

「チッ……!────いや、待て、俺はセイヤと同郷だぞ。お前らが否定しようがそれは揺るぎない事実だ」


セイヤ呼び……!?

ずっと“あいつ”呼びしてたのに……!?


「あァッ!?英雄サマの名前を、クソ詐欺師が口にすんじゃ……ねえよ!!」

「グぅっ!!」

「イツミさん!!!!」


これはマズい……!


激情を露わにしたのは石工の青年だけでなく、腕っ節が強い農夫がイツミさんに詰め寄り、左手で胸ぐらを掴み、右手で顔のど真ん中へ向けて突きを繰り出した。


衝撃で吹き飛ぶイツミさんは、騒めく群衆の中へと転がり込む。

もはや、この村からしたらイツミさんは詐欺師。

そんな彼に寄り添う人間は、誰一人としていなかった。


「ちょっと!通して!私この人の保護者みたいなもので!」

「行かせません。あなたはあなたで私たちが聴取します。こっちへ来なさい」

「ちょっ、離して!やめて!」

「清楚で綺麗な顔しながらこんな破廉恥な格好して。全く!男(たぶら)かしてんじゃないわよ」


いや、正確には私という寄り添う存在が1人いたんだけど、村の女性陣に取り押さえられてしまった。


そんな中でも、イツミさんへの制裁は止まらない。


「痛っ……!急に何をしやが────ッ!!」

「嘘つきやがって!俺たちを馬鹿にしやがって!」

「ひどいよ、おにいちゃん」

「ガキどもが……!」


追撃するかのように、先ほど、イツミさんと一緒に遊んだ子どもたちが、上体を起こしたイツミさんに石を投げつける。


その目には、遠目から見ても判るぐらいの溢れんばかりの涙が溜まっていた。

子どもの心は柔らかく純粋無垢。


私たち汚い大人に裏切られたことによる精神的傷害は、計り知れない。


挿絵(By みてみん)


「名前の響きからして、英雄サマと同郷なのは本当なんだろうさ。だけどな、所詮それだけの話だろ?サーク村にだって良い奴もいれば悪い奴もいる。英雄サマの故郷だってそれは同じで悪い奴はいた。その悪い奴がお前ってことなんだろ!?」

「んぐっ!」


石工の男が、腰を抜かしたままのイツミさんに蹴りを加える。

助けを求めようと周囲を見ても、蔑む視線がイツミさんを取り囲むばかりだった。


「あの大怪我から回復した英雄サマが、またサーク村にいらっしゃった時にこう言ったんだ。『石像にしてくれるのは嬉しいが、俺の名前を悪用して、お前らに危害を加える赤の他人が出るといけないから、普段は偽名でも飾っておけ』ってな。言われた時は意味が分からなかったが、まさか、本当にそんなことする奴が現れるなんて」

「用意周到すぎんだろ……。俺がイメージしていたタイプは熱血漢だったが、思いの外頭が回るのか」

「うるさい!お前がさっき言った通り明快精悍な人だ!そして、あの人の口癖は『俺に任せてくれ』だ!この村の復興を手伝ってくれた時に、幾度となくその言葉を聞かせてくれたさ!!そして、あの人の髪の色は落ち着きながらも明るめの茶色で黒じゃねえ!瞳の色は濃紺色だ!」


倒れたイツミさんの減らず口を塞がんとばかりに、お腹にもう2発蹴りを加える石工の青年。

彼の目には、子どもたちのそれとは違う無念の涙が浮かんでいた。


「涙……!?」

「そりゃ泣くだろうがッ!!人の心もお前は解らないのか!?俺が、俺がどれだけッ……!」


馬乗りになって、イツミさんの顔を殴る石工の青年は、やり場のない怒りをただ拳に込める。


その彼が泣いていたことを、自分の頬に涙が落ちるその瞬間まで、イツミさんは気付いてすらいなかったみたいだった。


「謝れば、許してくれるのか?そ、それなら今すぐにでも謝るが」

「ふ、ふざけんなァッ!お前、お前って奴は本当にどれだけ俺らを馬鹿にすれば気が済むんだ!」

「────」

「俺らのこと、どうせ利用しやすい田舎者としか思ってなかったんだろ?村の子どもたちを騙して遊んでた時、どんな卑劣な顔してたのか教えてくれよ!俺らを欺いて何をするつもりだったのか答えてくれよ!なあ!!…………なあ!!!!」

「……これでは謝るだけではダメだな。どうか、俺をサンドバッグにして憂さ晴らししてくれ」


石工の青年の涙に、イツミさんは心底驚いているのか、瞳を揺らして。


でも、もう、これ以上はダメよ。

あなたのどんな発言も、どんな行動も、こうなってしまったら火に油を注ぐ行為になる。


私がそう思っていた時だった。


「────その発言は、心から謝意のある者がするものではない。お前たちの処遇は、後日、村の皆々と決めることにする。こんな荒れきった状態で話を進めても、この村のために絶対ならん。それまでは、村の牢に収監する」


村中が荒れ狂う事態を静観していた長老が、杖を使いイツミさんの元へ歩み寄ると、ゴミを見るかのような目でそう告げた。

因果応報はすぐに。

今、無職は痛みを知った。

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