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1話『空前絶後の爆死』

今日の神界は曇りのち…大雨…?

諍いや喧嘩なんて余計な体力を使うだけで、出来ることなら回避したいと思うのは生き物の常じゃない?

少なくとも、それを好んで行うのは賢い選択ではないはず。


だけど、どこの世界に於いても大なり小なり争いは起こるし、潜んでいるもの。

そして、それらを“回避したい”というのはあくまでも願望であることに過ぎず、望んでもいないのに災難というものは降りかかってくる。


それは、私たち神といえど同じだった。


「…………報告の通り、5つ前(・・・)に出発した勇者が、とうとう戦意を喪失したようじゃ。分かっているとは思うが、規則に従い、これより勇者召喚の儀を開始する!」


神界にいる神たちが集う審議会、じゃなくて神議会。

定期的に行われるそれは、神界や神たちの今後の方針を決めるビッグイベントだったりする。


今回の議題は、その中でも取り分け重要視されている“勇者召喚の儀”。


端的に言えば、世界を救ってくれるかもしれない勇者がこれからやって来るのだ!


とにかく、ふざけてるようだけど大真面目なこの行事が、今、行われようとしている。


そんな中、私は大きな声を上げて抗議……みたいなことをしていた。


「ねえ、私にベストマッチする勇者なんでしょーね?とんだ大ハズレがやって来たら困るんだけど!」

「うるせえなぁ!そう簡単に適性者がぽんぽん見つかってたら苦労しねえよ!人事部(こっち)のことも少しは考えろ!馬鹿エリーシャ!」

「なんて言った!?アホイーリン!」


紹介が遅れたわね、私の名前はエリーシャ。

愛の女神っていう肩書きを持つ、薄藤色の長髪と圧倒的美貌を携えたしがない美女よ。


そして、吠える私に噛みついてきた、このムカつく女神の名前はイーリン。

ショートヘアの黒髪の一部の赤いメッシュが今日も目につく。


ちなみに体型はスレンダ……ううん、筋肉質。


そんな私とイーリンの喧嘩に熱が入りかけた、その時。


「エリーシャ、イーリンの言う通りじゃ。あっちの世界から呼べる人員は限られておる。まずは『死んでいること』、そして……『死に方に何かしら問題があること』というところをクリアしていなければならん。その上で、人事部の面接を通らねば。────そして、その中でナビゲーター(・・・・・・)の神にマッチする勇者も選定せねばならん」


私たちの口論を聞いていた、議長の主神であるゼオロ様は、蓄えた白い鬚を触り、ため息混じりにそう呟く。


「人事部の報告の通りじゃと、当面の人員補充は望めぬ。エリーシャよ。その分、お主が育てた(・・・)勇者が功績をあげれば、相応にお主の願いも叶おう」


ゼオロ様にイーリンが続いて。


「へへっ、ちゃんとお前と好相性な奴が選ばれてると良いけどな。今回はウチ以外の人事部の奴が選定してるから詳しいことは知らねーんだよ」

「信用できないわねえ。人事部のセンスはあんた含めて独特過ぎるのよ。────“魔王”か……。いざお鉢が回ってくるとなると気が重いわね」


今、私らが頭を悩ませているモノ。


それは、神々に愛されし下界、通称“バル”に突如生まれてしまった、言ってしまえばバグのような特異点。

通称、“魔王”だ。

下界の民たちがそう名付けたから、私たちもそれに倣ってそう呼んでいる。


〈気負ってやがるな、エリーシャ。そんな肩肘張る必要なんかないのに〉

〈召喚される勇者ってのもホントにピンキリだよなー!当たれば神を凌ぐヤツもいるし、外れちまったら目も当てられねー雑魚だ。んでもって、担当する神との相性もあるしよ。いっそのこと、武闘派の神が一気に攻めりゃ良いのに〉

〈例の魔王の実力は既にその武闘派の神たちをも超えるとかいう。こちらも甚大な被害は避けたい。ピンキリのピンの勇者が来ることを願うしかないんだよ〉


小言を挟む神たちの表情は、どこか諦観気味だった。



◆◇◆



神議会は、私にマッチングした勇者召喚の儀へと移る。


議席はすり鉢上に段々と孤を描いて、巨大な魔法陣を囲むように配置されており、神たちは席に座りながらも、今か今かと最後の勇者を待ちわびていた。


「さあ、喚ぶぞ。……おりゃああああああっ!」


ゼオロ様が勢いよくスイッチを押すと、魔法陣が白く輝き出す。

少し前まで騒ついていた神たちも、この瞬間は固唾を呑んで見守るばかり。


勇者召喚の儀にこれまで何回も私は一定の緊張を感じてたけど、今回ばかりはその比にならない。


当事者(・・・)の私にとって、今回の勇者召喚の儀は、今までとはまるで意味合いが違ったからだ。


〈最後に当たりが来たのいつだ?〉

〈24回前でしょ?あれから外れっぱなしだったからねえ〉


不安からか、期待からか、堪らずに言葉を発する神も中にはいた。


様々なイレギュラーに備え、一度に下界に召喚できる“勇者”の数は限られている──以前、大量投入した結果、戦果のために勇者同士で争い出して大変なことになったからね──。

そのため、そんなポンポンと召喚をすることはできない。


だけど、前に召喚された勇者が死んだり、戦意を喪失して放蕩したり等、勇者としての地位や称号を棄てたりしたならば、彼らは“勇者でなくなる”ため、新たに補充することができる。

今回は、5つ前に引いた勇者が戦意を喪失したためマッチングすることになった。


一分一秒でも長く世界を守れるように、一分一秒でも早く魔王の脅威を抑え込めるように。



ここで、愛の女神エリーシャの可愛い補足コーナー!


勇者マッチングの対象の勇者候補たち、通称“勇者の卵”は全員何かしら地球で心残りがある死に方をしていて、それでいて死後行われる神界の人事部主催のマンツーマンの面接で、“勇者の適性アリ”と判断されている人たちだったりする。


だから、勇者が補充されるには時間がかかる場合がある。


その面接の内容は当事者間に留められ、門外不出。

だから、私どころか当事者以外の同じ人事部ですら知らない。


さらに、召喚後の公正さを保つため、面接が終わった後、勇者候補たちのその時の記憶は抹消されるという徹底ぶりには、流石の私も引くレベル──面接を担当した神たちは記憶を保持し続ける──。


下界を救うという共通認識こそあるけれど、人事部の面々は癖揃い。

同じく、人事部のイーリンが比較的まともに思えるぐらいに。


だから、稀に『え、どしてこんなの通過させたん?』と一同が首を思わず傾げちゃう勇者が召喚され、神議会が揉めに揉めることが起きたりするのよね。


あ、これも付け加えとくけど、なんで面接がマンツーマンになったのかというのは単純明快で、以前、一癖も二癖もある人事部の神同士が採用、不採用を揉めて収拾がつかず、喧嘩をおっ始めたことがあったから。


はい!愛の女神エリーシャの可愛い補足コーナーおしまい!


〈今回のナビゲーターは誰なのかしら?〉

〈エリーシャだよ、愛の女神がナビゲーターだなんて羨ましいなあ。ほんと、“唯一にして最大の欠点”さえなければなあ〉


あっちの席から私がどーのこーの言ってるのが聞こえる。

自分の可愛さのせいでチヤホヤされるのは慣れてるけど、それでも全然緊張は消えない。


なぜならば、私が今回召喚する勇者の“ナビゲーター”を担当するからだ。



またまたここで愛の女神エリーシャの可愛い補足コーナー!


ナビゲーター制度っていうのは、召喚された勇者が異世界に馴染めるまでの一定期間、教育係の神が勇者と共に生活する制度のことね。

さっきから『育成』だの『担当』だの言っているのはそういうことだったりする。


ナビゲーターを務める神は事前に行われる抽選で決まる。

今回は私、愛の女神エリーシャがナビゲーターになった。


ってことで、これから現れるであろう勇者をサポートするわけ。


んで、ナビゲート期間を経て一人前になり、私らの元から巣立っていった勇者たちは、その世界を救うために奔走する。

そうやって、勇者という存在を挟んで、私たち神は下界を救おうとしている。


はい!愛の女神エリーシャの、可愛い補足コーナー今度こそおしまい!



◇◆◇



「で、出てくる。いよいよね……」


私の、私の担当勇者……。


頑張ってナビゲートしないと……。バルのために、そして、私の願いのために。


勇者ガチャの通例として、担当する神のみが席を離れ、魔法陣前に立ち、召喚される勇者を待つってのがある。


今回もその例に倣って、私は緊張で震える身体を誤魔化して、歩き進んだ。



ちなみに、自分で言うのもなんだけど、美人揃いの女神の中でも私の美貌は群を抜いていて、特に包容力は“愛の女神”という称号に名前負けしていないぐらいのモノがあると思ってる。


加えて、このふんわりとした薄藤色の長い髪は、魔性の魅力を持つと言われるほどだ。

私としても、この長い髪のおかげでいろんな髪型で遊べるしなんの不自由もない。

今日は清楚感出したいし、ポニーテールね。


もし、勇者が男だったら魅了させすぎないように気をつけないと。

私に依存されて巣立ちに支障をきたさないようにしないと。





「「「来る!」」」





思わず声が漏れる神はたくさんいて、私もその中の1人だった。


そんな私の想いを知ってか知らずか。

魔法陣の輝きがピークを見せ、いよいよその時は訪れる。





「私たちの……最後の希望が!」





溢れる眩しい光が、神議の間を照らす。


その輝きが落ち着くと、魔法陣の上に跪いている1人の青年の姿が見えた。



「────ここは……何処だ……?」



今しがたの眩い光を忘れさせる、黒い夜を思わせる低い声が辺りに響き渡る。


さらに、その鋭いつり目から繰り出される眼光が、辺りの緊張感を増幅させる。

正直、怖い。


他者を寄せ付けない、突き放したような顔付きはまさに強者のそれだけど、いかんせん今までの勇者と比べると“なにか”が違う気がする。


あと、怖いは怖いんだけど、なんか顔かっこいい!

面食いってわけじゃないけど、この人をナビゲートすると思うと、ちょっとテンション上がるかも。


でも、彼を一言で言い表すなら“不穏”かしら?

やっぱり、どこか引っかかる。


だけど、彼こそが私とマッチングした勇者なんだ。



…………なんてことを思い耽ってたら、イーリンが私を現実に引き戻した。


「ふーん、誰が面接したのか知らんけど、まあまあかっこいいじゃん。エリーシャが好きそうなタイプなんじゃね?」

「うるさいイーリン!……でも、うん、確かに良いかもしれない。ふう……────お目覚めですか?勇者よ。私の名前はエリーシャ、あなたを導く者です。どうかよろしく、愛しい人の子よ」


よし、決まった!女神の威厳でピシャリと決まった!

第一印象は言うまでもなく、人と接する上で一番大事。ここ数年の勇者召喚の儀で、第一印象から崩れてしまった時の悲劇は嫌と言うほど見てきたわ。

絶対にそれだけは避けなければ、そう思った私!やっぱりできる女神は違……


「…………何なんだ、ここは。誰も彼も俺を見下ろしやがって……!普通の人間なら萎縮して言葉も出なくなるぞ。但し、俺は除いてな。おい、そこの。勇者だかなんだか知らんが、『ここは何処だ?』と俺は訊いたんだ。俺の質問に答えろ」


挿絵(By みてみん)


…………は?



これから、一定期間二人三脚で過ごす、相方と言える私の言葉に一切耳を傾けず、その男が辺り一帯を見渡した後に、腕を組んで発した言葉はあまりに尖っていた。


「────答えろ!?」


そのいきなりな発言のせいで、神議会に出席している神たちが、ちょっと騒つき始めているのは私でも分かる。


席に座る神たちに高い位置から囲まれ、そして見下ろされている格好が気に入らないのか。

その男は、いかにも不機嫌そうに舌打ちをしながら私に詰め寄った。


いや、なんだこれ。

こんなこと今まであったかしら。

私は、とにかく脳内の整理をつけることに必死だった。


人事部はこんなのを通したの?


いやいや、即切りもんでしょ。

彼視点で考えたとしても、いくら慣れない環境にいきなり放り込まれたからとはいえ、初対面の私にいきなり『そこの』はないでしょうが。


私にこんなことしてんだから、面接した人事部の神にもおんなじことしてるはずだし。


「へっ!早速ひでー扱いじゃねーか!エリーシャ、気分はどうだ?」

「うっさいイーリン!まさか、あんたが面接したんじゃないでしょうね?」


煽るイーリンにちょっと詰め寄ってみる。


イーリンは神界の人事部。

つまり、この男を私とマッチングさせる権限を持つ存在ってこと。


でも、イーリンってこういう礼儀知らんやつ好かないだろうしなあ……。


「ウチじゃねーって言ったばっかだぞ?それに、ウチが面接してたら速攻ぶん殴って拒否ってたな。安心しろ、他のイカれた連中が通したんだと思うぜ」

「あっそ……」


あんたもイカれてる側よ、って言いたくなるけど、予想通りこの人を私にマッチングさせたのは他の人事部の神みたい。


まあ、召喚されてしまった以上、犯人探しなんて今さらしてもなとこあるし、もう私は前を向くことにした。


要は、私がしっかりすれば良いだけの話。

第一印象は最悪だけど、“私の願い”を叶えるためにはこんなことでいちいち立ち止まっていられない。


ちょっとした覚悟を込めて、私は呼吸を整えて口を開いた。


「…………ここは神界。神々たちが住まう地です。私たち神々は、あなたが暮らしていた世界とは違う世界を管理しています。────単刀直入に言いますね、勇者の卵であるあなたはその世界……私たちは“バル”と呼んでいる別の世界に行ってもらいます。別の世界……異世界とでも言えば伝わりやすいですかね。そっちでは結構浸透してますよね?」


席から口を大きく横に開けて茶化すイーリンに苛立ちながらも、感情のブレを見せず早口気味に男に解説を行うことに、私はとにかく集中した。

イーリンをぶん殴るのは、この神議会が終わったらにする。


『大丈夫、まだ修復できる関係性だ。ここは男が作り出した流れを汲み取りつつ、私のペースに引き込もう』と、自分の心に言い聞かせる。


そう、大丈夫。

まだ全然大丈夫。


「異世界……そしてここが神界か……。で、今俺を見下している連中が神とやらか。大体理解した。ならば次の質問だ、何故俺はここに呼ばれ、その異世界に行かなくてはならないんだ」


すると、彼は私の話をしっかりと聞いてくれていたようで、逆に質問をし返すぐらいに意思疎通を図ることができた。


会話で信頼関係を築けるなら、それに越したことはない。


ともかく、彼の言動に少しばかり騒ついている神議会を鎮めるには、私がここでしっかり手綱を握らないと。


「それは儂が説明しよう」


男のその質問に答えようとしたのは、担当の女神の私ではなく、ゼオロ様だった。

ゼオロ様は宰神であるテューン様に並ぶ神界のトップに位置する、要するに神々の長。


こうなったら、私に発言権はない。


「お主は地球の日本という国の出じゃな。でな……お主は死んでしまったわけじゃが……ちょっと待っとれ、今死因がファックスで来るから。何かの手違いでちょっと問題があってな」


男の疑問に答えようとするゼオロ様だけど、覚束ない様子で、いつもと比べてなんかおかしい。

いつもならば、淡々と死因、そしてこれからすることを理論づけて説明してくれるんだけど……今回はそうじゃない。なにか不備でもあったのかな?


「あ、来た来た。ふむふむ……え、本当にこの経歴であってんの?儂、ボケてんのかな?違うよね?────お、おほん、も、元々のお主の職業は何かな?」


ファックス──神界でも割と使われている──で転生召喚者の素性が送られてくるんだけど、私の見立て通り書類に不備があったらしい。

そして、それに関係してか、ゼオロ様の顔は青ざめて身体は小刻みに震えている。


それは、私だけじゃなく、他の神たちも初めて見る光景だった。


〈なんかゼオロ様の様子おかしかねーか?〉

〈あんなオドオドしてるお姿みるの初めてかも〉

〈しっ!これから経歴が発表されんだから〉


ゼオロ様が発言してから静かになっていた神議会が、また騒めく。

その騒めく神議会に、再び静寂が戻ったのを確認した後、ゼオロ様は書類を持つ手と声を震わせながら、再び男に訊ねた。


「す、すまんな少々騒ついた。で、お主の元々の職業は何かな?」

「職業?ああ、それなら警備員だ」


警備員……?

なんだ、反応の割には普通じゃない。ゼオロ様はどうしてあんなに驚かれていたのかしら。


そう思っていたのはまたまた私だけではなく、他の神たちも同じだったみたいで、どんな珍しい職業なのかとドキドキしていた分肩透かしを喰らったようだった。


だけど……


「え、でも……その前に“自宅”って書いてあるけど……お家は博物館や美術館か何かで?」

「いいや、一般的なごく普通の一軒家だが?……まさか、自宅警備員を知らんのか?全くもって話にならんな、座らせてもらうぞ」


話にならないのはどっちだよ……!?


やれやれと、呆れた様子でゼオロ様にそう吐き捨てた男は、立つことに疲れたのか、その場に座り出してしまった。


図々しいにも程があるでしょ……。

会ったばかりだけど、この人をナビゲートすることに私は若干の嫌悪感を抱き始めていた。


「えっと……死因が『親にハロワに行けと言われて、交通費を渡されたもののそれを全てパチ────』……え、お主何考えてんの?てか、ハロワって何?ところどころ解らない単語が出てきたんだけど、君があまり良くないことをしてたのは解るよ!?」


ゼオロ様が死因をつらつらと述べようとしたけど、多分、これ以上読むのは苦痛で身体が受け付けなかったんだろう。

読むのを止め、書類を置いてしまったゼオロ様は、顔面蒼白状態で男に訴える。


「何?神がハロワを知らんのか。“ハ”ヤシライス、“ロ”ースカツに“ワ”ンタンスープのコンボを“ハロワ”と言う、覚えておけ」

「すまぬ。その3つは食べ合わせ悪いと思う」

「いや、悪くはないだろう。……悪く、ないよな?」


私の方を見てきて、なんか同意求めてきた……!?


こんな会話に参加したくない私は、彼に『は、はは……』と愛想笑いを返す。


「ま、まあそこは個人の嗜好じゃからな。否定してばかりの儂も悪いし、もうこの件は良いや。とにかく、儂がお主に課す試練……そしてお願いは1つ。お主のいた世界とは異なる世界に棲まう悪を討ち、そして光を(もたら)してほしい。安心しろ、そのためには儂らの貸せるだけの力を貸そう」

「よくある流れだな。それはお前たちの貸せる力次第だが、具体的には?どの程度の支援をするつもりだ」

「そ、そうじゃな。そこにいる絶世の美女エリーシャの数日間のサポートと、檜の棒とか鍋の蓋とか」

「な……!?ふざけるな!割に合わん。俺は寝る」

「ま、待て!檜の棒も鍋の蓋も神器の1つで、お主が思っているような──」


神議会の間のど真ん中で、胡座をかいている男は、私たち神々が神妙に見守る中不貞寝してしまった。


着慣れているであろう上下黒のジャージに身を包んだその男へ、その場にいる神という神からの奇異の視線が集まったのは言うまでもない。


そして、その視線には、私への同情が含まれていたのも雰囲気で判った。


まあ、なにかしら、こういうことを思うのもなんだけど……



彼と上手くやれる気はいっっっっさいしない!!!

その男、とにかくいい加減で怠惰でク○野郎につき

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